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MagiaLostFantsia  作者: 葛葉龍玄
竜の住処

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伝説の死合

レイスは鎌を手に取る。

 死神の鎌。

 これで切り裂かれたものは、魂まで刈り取られレイスの餌食になるという。

 柄の部分だけでも、人の背丈はあるだろう。

 また、刃の部分はその2倍はある。

 『出ました、レイスの必殺の死神の鎌! パーティならまだしも、個人でレイスに挑んで、この攻撃を避けきった選手は今まで一人もいません!!』

 巨大な鎌を、さして重さも感じないように、軽々と振り回すレイス。

 大地すら切り裂く切れ味を誇るこの縦横無尽に暴れまわる鎌に、死角はない。

「これで終わりだっ!」

 上下左右、全方向から多角攻撃。

 今までの冒険者はこれで皆死んでいった。

 この獲物も……。

「ノロすぎてあくびが出るぜ」

 ソウマは、その瞬撃を軽々と避けて見せると、レイスの懐に飛び込む。

「なっ!?」

 レイスが驚いた顔をしていた。

 今まで、この攻撃を交わされ、さらには徒手格闘の間合いまで敵の侵入を許したことがなったからだ。

「『深淵流・震霊脚』!」

 極限まで高められたソウマの気が、レイスの幽体アストラルボディにまで届く。

「ぐはっ! ばかな!? なぜ人間如きの攻撃が我に届く!?」

 理解が出来ないというように、レイスが自分の蹴られた腹を押さえている。

「極限まで鍛え、圧縮された気は、肉体も魂もすべて打ち砕く最強の拳となる」

 さらにソウマは、2手3手と、攻撃を繰り出す。

 最初の一撃は食らったものの、レイスも歴戦の兵だ。

 そこからはソウマの怒涛の連撃を、見事に防いで見せた。

 しかし、防戦一方。

 懐まで進撃を許したため、長物の鎌返って足手まといになる。

「ぐぅ……。体術では勝てないようだな……」

「いかにも小物が言いそうな台詞だな」

『なんと驚きです! レイスの必勝パターンから逃れられ、しかもダメージを与えるなんて、初めての経験です』

 会場も一瞬静まり返り、その後大歓声に包まれた。

「我の奥の手を見るがよい!」

 レイスの手に持っていた水晶から、禍禍しい気が満ち溢れる。

「これは今までに私に敗れた人間たちの魂がはいっている。」

 恐怖、怒り、絶望、穢れ、敗北感。

 様々な感情がその水晶には詰まっていた。

「一体何人の人間を殺したら、そんなのができるんだ!?」

「さぁ、1000か2000か…。忘れたなぁ」

 卑下た笑いを浮かべるレイス。

 そして、レイスがその水晶を飲み込む。

「これ飲むことにより、私は最強の力を手に入れるのだぁ! もうこんな闘技場などおさらばして、私がこの国を支配してやる!!」

 レイスの体から、噴出するのは『魔法力』!

「ばかなっ!?魔法は使えないはず!?」

『な、なんとレイスは魔法を使えるのか!?』

 その凶悪なまでの魔法力は、観客席にいる心弱き者を死に至らしめるほど強大だった。

 観客も、アナウンサーも驚愕している。

 レイスがこんなものを使うのは初めてだ。

 人々の頭に浮かんだ言葉。

 魔王。

 そう、これはただの闘技場最強などという生易しいものではない。

 この世界に終焉をもたらす魔王だ!

「行くぞ」

 レイスの姿が消える。超スピードなどではなく、まさに消えたのだ。

「『神滅のマジックアロー』!!」

 姿を現したのは、ソウマの遥か後方。

 そこから、詠唱もなく魔法の弓を生成した。

 その数は、100近い。

 人間の熟達の魔法使いが生成できるマジックアローは、5が限界だ。

 もしこの規模の魔法を使おうとなれば、王宮魔術師が、10人がかりで三日三晩詠唱を続けやっと行使できるか、というほどの魔法。

 一撃必殺の矢が、雨のように降り注ぐ。

 しかし、ソウマはそこから動かない。

「はははっ!どうした、手も足もでないか!?」

「『深淵流・風錬拳』」

 深淵流の初歩の初歩。真っ先に習う基本技だ。

 その腕から放たれた衝撃は、一陣の風を伴い、宙を駆ける。

 一撃。

 たった一撃で、100はあったマジックアローがすべて打ち落とされた。

「へ?」

 レイスが驚く。

「どうした、その程度か?」

 ソウマは挑発する。

 それはそうだ。

 このマジックアローの1本が、先日戦った『クロスクルセイド』の魔砲数発以上の威力を秘めているのだ。

 対人用の魔法ではない。

 城を落とすことも造作も無いほどの大魔法だ。

「ならば…!!」

 巨大な魔力の渦がレイスに集まり、一転に集約される。

「『呪いの禍つカーズボルテックス』!!」

 呪いの力。下級の死霊たちが集まってくるが、それをすべてレイスが吸収しその力とする。

 禍根の渦は巨大な竜巻となってソウマを襲う。

 超圧縮された真空の刃は、触れたものを灰燼と化す。

「我の必殺の一撃だ! これなら!」

 それはもはや魔法を越えた、天変地異。

 かくもすれば、神にすら届きえる禁術である。

 呪いの付与で相手をその場から動けなくし、其の禍々しい魔法力によって相手を恐慌状態に落とし、完璧に命を奪う技。

「つまらんな『深淵流・風錬爪刃』!」

 風錬拳の上位版。

 10指それぞれから風錬拳が放たれる。

 その威力は単純にレイスのカーズボルテックスを上回っていた。

「……」

 レイスはポカンと口を開けている。

 光の力と闇の力。

 二つが混じり合うと、『混沌』と言う原初のエネルギーとなる。

 その原初のエネルギーは、レイスの魔法力によって、再び光と闇に分かれる。

 『混沌』は光と闇に分裂するときに、途方もないエネルギーを放出する。

 一説には、この宇宙は最初は『混沌』のみであったが、それが光と闇に分かれ、大爆発し、その膨大なエネルギーが様々な元素を生み出したと言われている。

 いわば、宇宙開闢にも匹敵する力。

 もし、完全にこの魔法が決まっていたならば、この大陸が消し飛んでもおかしくないほどの威力があったはずである。

 しかし、この男は。

 それを力でねじ伏せたのだ!!

「これだったら、まだ『神魔』のほうが強いな」

 ちょっとがっかりした様子で、ソウマが構える。

「さぁ、茶番は終わった!今までたくさんの人を殺してきた罪を償え!!」

 ソウマの足が、神速の蹴りとなって、レイスに迫る。

「に、人間の攻撃が我に効くか!!」

 レイスは防御の体制にはいる。

「『深淵流霊殺技・魔滅神雷』!!」

 それは、優にマテリアルプレーンとアストラルプレーンの境を破壊し、幽体であるレイスにもダメージをあたえる。

「ば、馬鹿な!?」

 それが、レイスの残した、最後の言葉だった。

 シンと静まり返る会場。

 誰一人言葉を発しようとしない。

 ソウマがゆっくりと拳を挙げ、勝利を示す。

 途端。

「「「「わぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ」」」

 割れんばかりの歓声が、会場を包んだ。

『し、信じられません。あのレイスが、いとも簡単に…』

 アナウンサーも何とか言葉を発する。

 ここにラマダの街の闘技場に伝説が誕生したのである。

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