夜のバトルに最強のバトル
「エグゼ様、まだ起きてるっすか?」
部屋に入ってきたのは、ハーピーのハピナとエルフのココロだった。
「どうしたんだい、二人とも。早く休んだほうがいいじゃないのか?」
「ちょっとお願いがありまして……」
「ビスタ様に聞いたっす。簡単にレベルアップする方法…」
女性と男性で、簡単に出来るレベルアップ方法。
「い、いったい何のことかな?」
あくまでとぼけようとするエグゼ。
おそらく、というか絶対『房中術』のことだ。
「エグゼ様、はぐらかさないで欲しいっす!」
「私たち、強くなりたいんです!この村を、他にも苦しんでる村を救える位に!」
彼女たちの目は本気だった。
一本多々良であるたたらとともに学んだ『房中術』は男女の交わりの中で、お互いの気を高めあうのを目的としているが、エグゼが大精霊と契約していることで、それ以上の効果を発揮することが出来る。
エグゼほどではないが、大精霊の恩恵を受けることが出来るのだ。そして、今は2柱としか契約できてないが、これから他の7大精霊と契約することで、エグゼと契ったものは、どんどんその恩恵を受けて、強くなれるのだ。
「お願いします、エグゼ様!」
「私もっす。本気っす!」
二人は恥ずかしげに頬を染めながらも、目を逸らさない。
「ちなみに、何するかはしってるんだよね?」
「「もちろん!」」
二人が真っ赤になる。
「分かった。そこまで二人の決意が硬いなら…」
「ありがとうございます!」
「でも、どうせするなら、気持ちいいほうがいいっすよね」
そうして、決戦前夜は熱く過ぎて行くのだった。
「ねぇ、ソウマ! 本当にあんな化け物に勝てるの?」
ティアラが心配して声を掛ける。
「大丈夫だ、問題ない」
「その台詞は心配しか出来ないよ、ソウマお兄ちゃん…」
ソウマは深く深呼吸して、『気』をためる。
実際のところ気と魔法力の違いについて、ソウマはよく分かっていない。
なんとなく。
気は外から集めて、体内に溜めるもの。
魔法力は自分の内から湧き出てくるもの。
という認識だ。
ソウマは魔法力が皆無なので、なんともいえない。
しかし、『黒いカーテン』がかかっていても『気は使えている』という事実がある以上、別物として考えたほうがいいだろう。
「こぉぉぉぉぉっ」
特殊な呼吸法で、丹田に気を溜め、圧縮していく。
控え室のがびりびりと震える。
「すごい力…」
ティアラがつぶやく。
自然の近しい存在であるティアラの目から見ても、とんでもない量の力が流れ込んでいるのがみとれる。
「ソウマ様。お時間でございます」
係りの者が呼びに来た。
ソウマの出陣。
相手は死霊レイス。
相手の取って不足なしだ!
『本日は実に無謀な挑戦者が現れました!その名も、ソウマ・ブラッドレイ!』
紹介され、ソウマが片手を挙げながら、入場する。
緊張も不安も、焦りもない。
普段どおりのソウマだった。
『なんとこの挑戦者、一人で、たった一人でこの闘技会最強の死霊レイスと戦うというのです!』
「ソウマ選手、何か意気込みはありますか?」
リングアナウンサーがソウマにたずねる。
「そうだな、みんな俺に掛けろ! 金持ちにしてやるぜ!」
『おお~勝利宣言がなされました。相手を見て言ってるのでしょうか!?』
「ちなみに、現在のオッズは100:1となっております。もちろんレイスが100でソウマ選手が1です」
『それはそうでしょう。腕利きの冒険者が束になってもかなわないのですから』
この闘技場には、『クロス・クルセイド』のお偉方も実に来ているという。
自分の実力を『メリクリウス』の戦闘力を見せ付ける絶好のチャンスでもある。
そして、アナウンサーの紹介で、レイスがでてくる。
「おろかなる人間よ…。我が力の前に、恐れ慄くがいいっ!」
「何訳の分からないこと言ってんだよ、いいからかかって来い」
こうして、二人のバトルは大声援の中で始まった。




