太陽の力
その先には。
一人の半人半獣が倒れていた。正確に言えば死体だ。
戦場では珍しくもない。
しかし、その半人半獣には見覚えがあった。
「あ、あぁ…。」
それは、ブローチを売ってくれた商人の姿だった。
『メリクリウス』の本拠地でしか生きていけない少年商人は、『メリクリウス』に入ることに決めたのだろう。
そして今回の初陣で、命を落とした。
それだけではない。
敵も味方も、数多くの人が、魔物が、半人半獣が死んだ。
これは戦争だ。
一人も死ぬことなく、勝利を得ようというのが無理な話だ。
それは分かっている。
分かってはいるが。
……。
少年商人の姿が思い出される。
彼は、ふがいない自分を魔法騎士を尊敬しているといってくれた。
彼は、『メリクリウス』NO・2のアーニャのファンだと言っていた。
その尊敬のまなざしが。
その照れたようなはにかみ顔が。
エグゼの脳裏には浮かんでは消えていった。
自分はまた護れなかったのか……っ!
(力をっ)
エグゼが願う。
(もっと力をっ!!)
傍らに、ビスタが吹き飛ばされてきた。
「ぐっ、まさか剣聖がここまで強いとは……!」
満身創痍で、立ち上がることすら出来ない。
ソウマだけが『神剣聖』と互角に割りあっている。
(誰にも負けないくらいの力を!)
(エグゼ…)
それはサニーだった。
サニーは、エグゼの魂の負担を軽減しようと、ブレーキをかけていたのだ。
「サニーっ!! 力をよこせっ! 僕はこれ以上大切なものを失いたくないんだっ!」
エグゼの魂の叫びがサニーを呼び起こす。
一瞬の思考の後、サニーは決断する。
リミッターをは外すように、サニーが力をエグゼに注ぎ込む。
そのとたん、太陽の『日』の力が、エグゼに流れ込んだ。
『な、何ですかっ?この凄まじい力はっ!』
ミハエルが力の源へと目を向ける。
ソウマはかろうじて致命傷を避けている。
お互いに回復するすべがなければ、どちらが倒れてもおかしくない展開だった。
その二人が、戦いを止め、エグゼに見入っていた。
「そうだ、力だっ! 太陽の力を、もっと僕によこせ!」
太陽は表面だけでも6000℃。中心部は1500万℃にも達する、超超高熱だ。
その際限のない熱量が、エグゼの剣に集まっていく。
「ミハエルっ!!」
『ひぃっ?』
ソウマはすばやく飛び退くと戦線を離脱した。
太陽の一撃が、ラファエラを包み込む。
それは、剣技などなんの意味もなさない、大自然の猛威。
『か、身体がっ!?』
『神魔』の強靭な肉体が、蒸発する。
「はぁ、はぁ」
後に残ったのは、鎧のみ。
耳が痛いほどの静寂の中、エグゼだけが立ち尽くして
その左腕は無く『大いなる精霊王の剣』が地に落ちている。
『ま、まさか『神剣聖』の力をもってしても、勝てない、とは…』
最後、ミハエルの声が空にこだまして、消えていった。




