絶体絶命
『ふむ、まだ『黒いカーテン』なぞは解いていないみたいですね。まだ、秘密といたしましょうか』
その口調はいかにも楽しそうだ。
戦いは振り出しに戻る。
いや、こちらはソウマが腕を使えなくなった。
ラファエラは剣がなくなった。
しかし、剣は数打ちのものなら、そこここにたくさん転がっている。
つまりはこちらが傷を負っただけだ。
そして、エグゼたちの攻撃はいくらかすっても、すぐに回復されてしまう。
「くそ、ジリ貧だ……っ!」
エグゼたちは少しずつ消耗していく。
(どうするっ!?)
エグゼは考える。しかし答えは出ない。
その時。上空から声が聞こえた。
ハーピーのハピナだ。
「エグゼさん、アーニャ様から伝言っす! あの鎧は、魂でダークエルフとつながってるっす!
そして、その繋がりを断ち切れれば、ただの雑魚に過ぎません!」
『ち、余計なことを!』
「きゃあっ!?」
ハピナが打ち落とされる。
しかし、墜落寸前で。ふわりと中に浮き、そのまま飛び去っていくく。
致命傷ではなかったみたいだ。
「魂の結合!?」
魂の結合を解く方法なんて。
(エグゼ、私たちも魂の結合を果たしているわよぉ)
精霊玉から、サニーが話しかけてくる。
(私たちが結合をはずすときははどんなときぃ?)
エグゼとサニーが魂の結合をはずす時。
それは、剣を通じて結合をしているため、剣を手放すか、あるいはお互いの合意の下で、結合を解除するか、だ。
(なら、あの鎧をなんとかはずせば!? しかし、どうやって!)
両肩には、鎧と鎧をつなぐ留め具がある。
そこを狙えば鎧を強制的に脱がすことも出来るだろうが。
(三人でも無理。あと一手あれば……)
「エグゼさん!」
戦場に一人の少女が駆けてくる。
あれは、ソウマと一緒に来ていた。
「ユーノ!?」
ソウマが叫ぶ。
確かに彼女はそれなりに強力な人外娘だ。
しかし、この場においては足手まといでしかない。
「ソウマさん、助太刀します!」
そういうと、ユーノはエグゼを包み込む。
それは、スライムの鎧とでも言えばいいのだろうか。
柔軟かつ強靭。
「ティアラさんから、妖精の粉ももらいました。怪我もある程度なら回復できます!」
ティアラ身体から分泌される粉には、怪我を癒す効果がある。シスカの町でソウマが大怪我をしたときは、命を助けられたこともあった。
そして、今現在も。
両の拳の怪我も、見事快癒した。
「すごいな、ユーノ!」
ソウマの攻撃力に耐えることの出来た武器はない。
手甲や、爪系の装備も試してみたが、全て壊れてしまったが、スライムの柔軟性と、圧縮された粘液の硬度は、オリハルコンにも劣らない。
三人のコンビーネーションは鋭さをましていく。
超超近距離ではソウマが。
近から中距離でエグゼが。
遠間からビスタが。
それぞれが武器の特性を生かし、攻撃し、避け、防ぎ、はじく。
しかし、足りない。
『神剣聖』は強かった。
『遅い!』
ミハエルが吼える。
『万魔の太刀』と呼ばれる『剣聖』に伝わるその剣術は、本来なら魔法有っての魔法剣だ。
魔法が使えない今となっては、その本領の半分も発揮できていないが、それでも強い。
三人がかりでもかすり傷を負わせるのが精一杯だ。
しかし、その中にあって唯一、ソウマだけが対等に渡り合っていた。
『これで分かりましたよ! この戦い、ソウマ君さえ抑えれば、私の勝ちだと!』
万にも勝る剣の五月雨。
エグゼの横腹をその一撃が掠める。
「ぐっ!」
それは致命的だった。
かろうじて臓物が出ていないことだけが救いなくらい。
酷使していた鎧は、今まさに限界を迎えたのだ。
しかし、ソウマもビスタも助けには入れない。
そんなことをしていたら、自分たちもやられてしまう。
圧倒的な戦力差。それが分かっているから、自分たちの出来ることするので手一杯になっていた。
「エグゼ、下がれ!」
ソウマがかろうじて叫ぶ。
敵の圧力が増し、ソウマも先程の『激震』のような大技が使えないでいる。
コンビネーションが一つ欠け、さらにビスタも負担も限界に達していた。
エグゼは傷口を押さえながら、何とか立ち上がる。
そして、あまりの激痛に、もんどりうって再び倒れこむ。




