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人外娘さんと真面目にファンタジーしちゃう本  作者: 葛葉龍玄
剣聖の魂

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贈り物

〜幕間〜

 ミハエルは考えていた。

 配下の造魔が、今は朽ちた森の中を探索する。

 しかし、どうしたことであろうか?

 ただの火事なら、こんな長い時間森が再生しないなんてことが、あり得るわけがない。

 長い。長い時の中でそれでも焼け野原同然の森。

 その中の監視で、エグゼたちが『月の大精霊』に会うためのアイテムを手に入れたのは見ていた。

 が、それ以上に惹かれるものがこの森にあった。

 なぜか、まだなにかを隠している気がして。

  ……。

 魔力探知オブジェクトリーディングを行う。

 これほど不可思議な森だ。『黒のカーテン』を展開したとして、何かしら引っかかるかもしれない。

 それで見えたものは、エルフの少女の残骸。

 残留思念のようなものである。

 そして、少女が立っているのは、かつて家だったであろう場所

 そして、地下への階段。

「これは……」

 ミハエルが思わず呟く。

 この先に何かがある。

 造魔一体を操り、地下への階段を降りていく。

 その先に。

 白銀に輝く荘厳な鎧があった。

「まさか、伝説? こんなものをこんな所にかくすとは。

エグゼ君に知らせるまもなく、あの剣聖が死んだというのですか……?」

伝え聞いた話しで、ミハエルがこの大陸に来るかなりに最後の剣聖は行方不明になったという。

しかもその剣技を誰にも教えずにどこかえ消えたとか。

「この鎧には魔法がかけられている。これが私の推測通りなら……」

 あまりの美しさに息がもれる。

 造魔はその鎧を手に入れると、早速主人であるミハエルの元へと持ち帰る。

 それが、何であるのか。

今回の戦いの最終局面に必ずミハエルが有利になるアイテムだ。



〜ツクヨミ〜

『聖浄なる湖』とも呼ばれる、清らかな湖のほとりに発展した街、ツクヨミ。

 その湖の真ん中にある神殿に『月の大精霊』がいる。

「さて、どうやってあの神殿に行けばいいのかな」

 とエグゼがつぶやく。

「え? 行き方知らないのか? なら、前回は一体どうやって?」

 とビスタが当然の反応。一度『月の大精霊・ツクヨミ』と契約しているの、なぜその場所への行き方をしらないのか?

「ほら、魔法力があったから、宝玉がいらなかったのと同じで、前回は飛行の魔法で、直接あの神殿にいちゃったんだ」

 飛行の魔法。その名のとおり空を飛ぶ魔法だが、言うほど簡単ではない。

 文献などでは見かけるが、『黒いカーテン』が展開される以前でも、扱える者など見たことも聞いたことも無い。

「そんな魔法まで覚えていたのか!?」

 ビスタもこれには驚いたみたいだ。

「僕は7大精霊と契約する前に『精霊王』と契約したからね。『精霊王』と契約すると、もれなくついてくる能力なんだ」

 街を歩きながら情報を集める。

「今日は年に一度のバザーの日なのよ!だから、人がとても多いね」

 アーニャの言うとおり、街の広場では様々な出店が乱立している。この街だけではなく、いろいろな街からも行商が来ているようだ。

「ここら辺で、装備を整えておくのも良かろう。私もそろそろ蹄鉄を新調せねば」

 心持楽しそうにビスタが足元を気にする。平然を装おうとしいるが、耳と尻尾がうれしそうに揺れていた。

「そうだね。もしダンジョンとか、試練とかあるなら、回復薬とか食料とか手に入れておきたいね」

 そろそろマントや皮鎧も新しいものにしたいが、いかんせん所持金も心もとない。

「少しなら、『メリクリウス』からも出るよ!ね~?ビスタ?」

「ま、まあ。貴様も一応『メリクリウス』の一員だからな。1000モワールくらいまでならだせるぞ」

 まるで遠足みたいだ。しかし、1000モワールでは、たいした防具は買えない。

「鎧は、ソウマと一緒にくる、鍛冶師のたたらの方が安くていいもの作ってくれるから、たたらにお願いするとして、マントは新しくしようかな」

 今まではお尋ね者として、この2年間は逃げ隠れる様に生き延びていたため、お金をためることも、こんな大きな町でゆっくり買い物する機会も無かったのだ。

「じゃあ、少し街を見ていこうよ!」 

 全員一致で、バザーを見て回ることが決まった。

 こういうバザーではたまに掘り出し物がある。

 特に高価で希少価値の高いものは魔法付与エンチャントされたアイテムだ。

 魔法が使えなくなった今、アイテムに魔法付与することは不可能だが、『黒のカーテン』が展開される前に魔法付与されたアイテムの効果はそのままだ。

 大陸各地から商人が集まるバザーでは、そういった珍しいアイテムが出回ることも多々あるのだ。

(ちょっといぃ?エグゼ)

 精霊玉の中から『日の大精霊・サニー』が声をかけてくる。

(あのお店、気になるのぉ。寄ってもらってもいいかしらぁ?)

 間延びした声に促されて一つのお店を見に行く。

 そこはアクセサリーを扱うお店だ。

(あの髪飾りねぇ、すごい魔力を秘めてるわぁ)

 一見ただの髪飾りにしか見えない。が、その装飾は見事で、一見しただけでかなりの値打ち物のように見える。

「お、兄ちゃん、その髪飾りに目を着けたか! いい目利きしてるね」

 商人が話しかけてくる。

「この髪飾りはね、昔の大魔法使いが魔法付与したという、伝説があってね。何でも、一度だけだが、命にかかわるような大怪我をしても代わりになって砕け散る、ていう身代わりアイテムだ」

 振り替え魔法、と呼ばれる、今は途絶えた魔法の1つだ。

 その名のとおり、対象者に起こった出来事を他者や、アイテムに振り替える魔法。

 解呪できない呪いや、不治の病、手遅れと思われる傷まで、振り返ることができたと言われている。

 しかし、用いかたによっては要人の暗殺も簡単に出来てしまうため、少しずつ廃れていった魔法形態であった。

「アラクネの可愛い彼女さんに、どうだい?一つ」

 後ろにいたアーニャを指しながら、商人が話す。

「高価なものだが、兄ちゃん、俺の憧れてた魔法騎士に似てるから、おまけしとくよ!」

 憧れの魔法騎士。その言葉にエグゼが反応する。

 ミハエルに敗北してから、2年。まだ自分のことを覚えていて、期待してくれてる人がいるのだ。

 その事実を重く受け止める。

「ちなみに、いくら位までまけてくれるんだ?」

 値札は20000モワール。

 所持金は1500モワール。

 まったく足りていない。

「じゃあ、1500でいいよ!」

「え、そんな…!」

「兄ちゃん『メリクリウス』に兵隊さんだろ? 俺も結構世話になってるし、あの子『メリクリウス』のアーニャちゃんだよね? あの子のファンでもあるんだ!」

 と少し恥ずかしそうに笑う。

「俺は人間と魔物のハーフだから、この街に来るしかなくてね。出来れば昔みたいに人間も魔物も一緒に暮らせる世界になって欲しいんだ」

 人間と魔物のハーフ。この大陸では珍しく無かったが、『クロス・クルセイド』が『トール・ド・ルート』が、彼らを駆逐していった。

 両者共存を目指す『メリクリウス』のお膝元である、このツクヨミの街に逃げてくるしかなかったそうだ。

「……。じゃあ、言い値でもらおうかな」

 1500モワール払って、髪飾りを手に入れる。

「毎度! その代わり、これからご贔屓にしてくれるとありがたいな!」

 そういって、髪飾りを手渡される。

「ありがとう、また立ち寄らせてもらうよ」

 エグゼも笑顔で御礼をして立ち去る。

 思わぬところでこの大陸の暗部も知ってしまった。

 昔のエグゼの部下にも、半人半魔のハーフはたくさんいた。

 彼らはどうなっているのだろうか?

 生き延びているのか、それとも…。

 たった2年前のことが、遠い昔のように思われる。

 感傷を振り払うように、エグゼは他の店を見ていたアーニャとビスタの元に駆け寄った。

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