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人外娘さんと真面目にファンタジーしちゃう本  作者: 葛葉龍玄
剣聖の魂

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村のお伽噺

昔の話。

 この村にいた大いなる魔女。

 村人を病から救い、外敵から助けていた英雄が如き魔女。

 しかし、時代と共にそれは人々から忌み嫌われる者となる。

 神の御名に置いて駆逐されていく邪教として民間信仰は消えていっ たのだ。

 魔女は英雄から、おとぎ話のような、人々に仇なす『魔女』になってしまったのだ。

 かつて怪我をすれば。病になれば。魔物が出れば。人々は魔女に頼った。

 しかし、村が栄え街道が通り衛生面が改善されると病は激減。

 さらに王都からの兵隊が近場に常駐することになってからは、魔物に襲われる心配もなくなった。

 魔女はただ、自分の出番はなくなった、と深い山に暮らしていた。

 無闇に姿をさらし、神を信じる人々に不快な思いをさせるでもないと。

 自分は嫌われ用無しになったとしても、村が平和で自分の力がなくても発展していくならそれに越したことはない。

 万が一にも自分の力が必要ならば、その時にこの魔力を使えばいい。

 そう、暗き洞窟の中で椅子に揺られながら悠久の時を過ごそうと決めていた 。

 しかし。

 人間とはかくも卑しいもので、真にチカラのある者を恐れるのだ。

 正教が広まるにつれ異端のチカラは悪しきチカラへと変わっていく

 実際に魔女が何かをしたわけではない。

 しかし、この聖なる魔女は、異教の神を信じる不審徳者として、噂されるようになっていた。

 そして、この領地を治める正教者は敬虔だった。

 異端は排除せよ。

 それは、恐ろしくも正教を信ずる者にとっては当たり前で、兵士や近隣の村人たちは、我も我もと集い魔女の元へと進軍して行った。

 ……。過去の感謝も忘れ。

 自分たちの知らない術を行使するというだけで。

 今まで自分たちを助けてくれていた存在を排除しようというのだ。

 温厚だった魔女も、さすがに抵抗をした。

 ーー自分が何をしたのだ。

 ーーただ森の奥で静かに暮らしたいだけなのに!

 しかし、魔女の嘆願は聞き入れられない。

 敬虔な信者には、異端を排除する事こそが、神にその信仰心を示す見せ場なのだ

 多勢に無勢。魔女の抵抗も虚しく、魔女は死の刑台へと立たされていた。

 魔女は呪う。この世の全てを。

 死の際に立たされて、残りのチカラの全てを持って、自分を迫害した者全てに呪詛をかける。

 しばらく。魔女は火刑に処された。

 その魔女の灰からは、一本の杖が発見された。

 魔女が所持していた物だろうか?

 その杖は、異端の者を始末した戦利品として、領地を治める統治者の家に厳重に保管される事となった。

 それから、怪異が始まることも知らずに。

 満月になると、 人が消えるという事件が領内で発生するようになった。

 最初は1人そして2人と。

 その事態が統治者の耳に入る頃には、犠牲者は20を超えていた。

 それと比例するように、魔物の被害が増えるようになっていた。

 魔物の討伐と、行方不明者の捜索。

 この2つをこなしているうちに、大事件がおきた。

 とある町の住人が、一晩のうちに1人残らず消えてしまったのだ。

 草木も眠る満月の深夜のこと。

 だと、推測される。

 と同時に、その町には魔物が住み着くようになっていた。

 粘液生物。スライムだ。

 町に到着した兵士たちは、スライムを駆除しようと町に入り、そこで見てしまったのだ。

 文字を書くスライムがいることを。

 それを見た兵士長は、そのスライムとコンタクトを取ることにした。

 そして。

 このスライム達こそが、この町の住人だったことをしる。

 今回、この町に読み書きのできる識者がいたから発覚した衝撃の事実は、すぐに統治者の耳にも入った。

 なにせスライムが人の言葉を解し、あまつさえ文字を書きコンタクトを取ろうとするとは。

 前代未聞の事件である。

 そして、意思疎通の図れるスライムから、事態を聞き出すことにした。

 城の方から、なにやら光が見えた、その光は強烈で、真昼よりも明るく村を包み込んだのだという。

 そして気がつけば、村人は全員スライムと成り果てた、と。

 しかし、城に住む者にはまったくそんな光など見えていなかった。

 戦争がないとはいえ、領主の住む城である。

 夜間も交代で、警邏をしている。

 真昼の如き光などがあれば、気付かないはずがない。

 そこまで話したスライムは、なぜかいきなり襲いかかってきたのだ!

 外の今までおとなしかった元住人のスライムも、騎士団に突如攻撃を始めた。

 それは時間が経つと、人間としての自我や理性を失い完全にモンスターとなる、との見解だった。

 騎士達は、守れなかったのだ。

 愛すべき領民を。

 それ以上手がかりがないのも事実。

 城の中に怪し者怪しい物がないか、調べることとなった。

 そんな折、女中の中でも一番の古株は、呪いだ、といった。

 年老いた彼女は正教が広まる前に、 魔女にその命を助けられたことがあったのだ。

 今回の魔女狩りにも深く反対をしていたが、一老婆の言うことなど、誰が聞くと言うのだろうか。

 その死した魔女の怒りだと、老婆のは言う。

 確かに、あの杖を持ち帰ってから、この事件は起こり始めた。

 宝物庫にしまい込んでいた杖を持ってきて、監視をすることになった。

 すると、どうであろう。

 杖が鈍く光ると、領内でも比較的城に近い村が、目も眩むようなまばゆい光につつまれたのだ。

 すぐさま騎士団の精鋭が村に駆けつけたところ、やはり、村人はスライムと化していた。

 この事件を恐れた領主は、正教でも名の知れた大司教に連絡を取り、この杖のことを話した。

 魔導具の扱いや呪いの治療などを専門的に行い、大司教まで上り詰めたこの男の腕は確かだった。

 この領地の外れ。

 小さいながらも聖域とされる山の中にある小さな洞窟。

 そこにこの杖を祀り、封印を施すことによって、2度と同じような事件は起こらないだろう、 ということであった。

 領主は直ちに言われた通りの洞窟に杖を封印した。

 それ以降、同じような事件が起こることはなかったという。

 

 そういう御伽話。

 しかし。

「それが実際に起こっちまってる、と」

 ソーマ誰にともなく呟いた。

 だとしたら時間がない。

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