表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人外娘さんと真面目にファンタジーしちゃう本  作者: 葛葉龍玄
亡国の魔法騎士

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/38

エグゼの覚醒

「アーニャ!?」

 戦場に近づくアーニャにいち早く気付いたのは、たたらだった。やはり、その視力は計り知れない。

「え? だって、今までそこに……」

 ティアラも驚きの声を上げる。しかし、戦況を見守り、集中の余り周囲への警戒心がなかったのも事実だ。

「まずい、追いかけるぞ!」

「う、うん!」

 なぜ、戦場に向かったのか?

 疑問を抱えながら、二人はアーニャを止めるべく森を抜け出すのだった。


 知りたかった。

 あの歪な魂の真実を。

 此処だと遠い。

 もっと近くで観れば、わかるのに……。

 その一心で、アーニャは歩いていた。

 瞳は真紅から碧へと変わっている。『真実を映す瞳』が発動してるのだ。

 向かう場所が戦場だということも忘れ。

 その先には、命を賭して闘う仲間と、その敵がいることも忘れ。

 そして一瞬の隙をつき、サイクロプスはソウマに背を向け駆け出す。

 一瞬、逃げたか? と思ったソウマだがその先にある気配に気がついた。

「馬鹿な! なんで来たっ!?」

 明らかに、この怪物はアーニャを狙っている。

 間に合うか!?

(あぁ、やっとよく見える)

 目の前に立つ山の様な巨人を前に、アーニャは笑みを浮かべる。

(やっとわかった! この歪な魂の理由が……!)

 アーニャの中にあるのは、恐怖でもなんでもなくて、ただ純粋な好奇心。そして彼女は知り得たのだ。

 その造魔の真実を。

 眼前に迫る巨人の鋭い貫手。

 それは逃れられない死。

 ミハエルはほくそ笑む。

 ソウマがどういう対応をするから、知っていたからだ。

 そして、その通りの未来が訪れる。

「え? あぁ……」

 目を見開き、声をもらすアーニャ。

 眼前で繰り広げられている光景が信じられない。

「い、いやああああぁぁぁぁっっ!!」

 悲痛な叫び声だけが、戦場に響き渡った。


「久しぶり。サニー」

 心の奥底。魂のさらに奥深く。

 生命の一部に、確かに感じる、太陽の息吹。

 まるで、細胞の一つひとつが覚醒したような開放感に浸る。

 魔法力を失う前と同じ。いや、それ以上の力が、全身に漲る。

 五感が研ぎ澄まされ、それ以外の意識が目覚める。

 まるで自分とその周囲を俯瞰で見ているかのように、状況が把握できる。

 確信。

 これならいける。

 7大精霊の内、1人を取り戻しただけで、このチカラだ。

 全員と契約し直し、その力を扱いきれれば、負けることはない。

 すぐにソウマの待つ戦場へと戻らなければ…。

 しかし、そこに異形の魔物が5匹立ちふさがる。

「造魔か」

 前回相対した時は、エグゼはすでに魔法が使えない状況だったため、手も足も出なかった。

 しかし、今は違う。

 5匹は互いに高い知能を持ち、卓越した連携でエグゼを取り囲む。

 虎の造魔2匹は機動力を生かした動きで敵をかく乱し、植物型の造魔は遠くからその蔓を使い、エグゼを捕まえようとしている。

 さらに残りの2匹はリザードマンだ。

 その口腔には、灼熱の炎が渦巻いていた。

「行こうか、サニー」

 エグゼの眼には、造魔は移っていない。

 あるのは、大精霊と魂ごと契約した高揚感だけだ。

 今までの比ではない力が、エグゼの体に満ち満ちている。

 虎の2匹がエグゼに飛び掛る。 

 しかし、エグゼはまだ動かずにいる。

 その牙がエグゼののど笛を噛み千切らんとした瞬間。

 エグゼの姿は消えていた。

 虎たちは何が起きたのか分からないまま、地面に着地した。

 エグゼはすでにリザードマンを捕らえて行動を開始していた。

 エグゼを食い殺さんとしていた虎たちは、再び攻撃を仕掛けようと、エグゼに襲い掛かる。

 が、飛び上がった瞬間、その胴体が二つに別れる。

 その一瞬でエグゼは剣を煌かせていたのだ。 

 仲間の死にも全く動じることなく、リザードマンたちは態勢を整え、エグゼの迎撃準備に入る。

 しかし準備が終わる前。1匹のリザードマンは砂となった。

 もう一人のリザードマンが高温炎を口ら吐き出した。 

 魔法の使えない人間など、簡単に炭にするほどの威力だ。 

「斬れるかな?」

 稀代の神剣『大いなる精霊王の剣』はまるで羽のように軽くエグゼの手のなかで華麗に踊る。

 その煌きをなんと表現すればいいのだろうか。

 自然現象でもある炎を、『大いなる精霊王の剣』はたやすく切り裂いて見せた。

 そして、その先にいるリザードマンも抵抗むなしく砂と消えた。

 残る植物型は、遠距離でなければ何の脅威でもない。

 鋼ほどの強度をほこり迫り来る蔓を、いとも簡単に切り落とす。

 ただでさえ、切れ味のいい神剣は、精霊の力を借りて、この世ならざる威力を発揮していた。

 こうして5匹の『造魔』を屠ったエグゼは、戦場へとその意識を向けた。

「……。アーニャとソウマが危ない!サニー、急ぐよ!」

 エグゼは、魔法でもないその超常的な力で、遠く離れた戦場の様子さえも覚知していた。

 ふわり、とジャンプをするとゆうに数十メートルは跳ね上がる。

「戦場は……。あっちか」

 呟くと、エグゼの姿はもうそこにはなかった。

 風よりも疾く駆け抜けたエグゼは山をおり、森を抜け、町の人々の目にも写らぬ速さで戦場へとたどり着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ