第34話 姉妹水入らず(SIDEユリナ)
これはキーチクという闇商人がジャポリの街を責めてきた翌日の夜の話。私、ユリナは小さい頃に生き別れたハルカお姉ちゃんと温泉に入っていた。
みんなの計らいで、温泉には私とハルカお姉ちゃんの2人だけ。
まさかもう一度ハルカお姉ちゃんと一緒に過ごせるとは思わなかった。生きていれば良い事もあるもんだ。私とハルカお姉ちゃんをここに置いてくれたアーク様には感謝してもしきれない。私の一生分の感謝では賄える気がしない。
「う、うわぁ〜! なにこれ! 生き返るわぁ〜!」
ハルカお姉ちゃんは年寄りみたいな事を言う。私とハルカお姉ちゃんの年齢は3つしか変わらないのに。それだけアーク様の温泉がすごいということだ。
なんでも聖水に匹敵するらしい。そのせいか私の頰の傷跡も日に日に薄くなっている。
「す、すごいでしょ? なんでも聖水と同じくらいすごいらしいよ」
昨日、ジャポリの街を襲った悪魔はこの温泉を浴びて弱体化したらしい。悪魔は聖なるモノに弱いというのは御伽話ではよくあることだ。
つまりこの温泉は聖水と言っても嘘ではないと思う。
「うん。これは明日から頑張れるわ」
「え!? お、お姉ちゃんまだ休まなくて大丈夫なの……?」
「休んでなんかいられないよ」
「え……?」
「私だけ迷惑かける訳にはいかないから。折角、人間としての尊厳を取り戻せたんだもん。ここで悲劇のヒロインぶってたら、私は一生不幸なままだと思うから。それだけは嫌」
ハルカお姉ちゃんの意志表示のようにも思えた。本音をいえばもう少し休んでほしい。奴隷として酷い扱いを受けていたのだから。少しくらい休んだって誰も文句なんて言わないはずだ。でもハルカお姉ちゃんはそれを是としない。
「わ、分かるかも……私もそうだったし……」
「そりゃあ姉妹だもの」
ハルカお姉ちゃんは真っ直ぐに私を見る。その瞳に宿る意志は力強いと感じた。やっぱりハルカお姉ちゃんだ。昔と変わらない。大好きなハルカお姉ちゃんそのものだ。
「お姉ちゃんは変わらないね」
「ん? なんか言った?」
「え!? あ、いや。な、なんでもないよ……?」
心の声が漏れていたみたいだ。別に聞かれていたところで悪い事はしていないのだけど、何故か気恥ずかしさを感じる。だったら別に取り繕わなくて良かったかもしれないな。
「そ・れ・よ・り〜! どうしてアーク様とはキスすらしてないの?? 雰囲気的にはキスくらいしててもおかしくないでしょ??」
「あ、アーク様と!? 主君とメイドはそんな関係にならないんだよ!?」
そんなことになったら、私はずっとテンパったまんまだし……いや、本音を言えばこ、ここここ恋人とかなったら嬉しいけれど……!
「わ、私はアーク様のことは尊敬しているだけで、恋愛をしたいとは……」
前にラティちゃんと温泉に入った時にも同じことを言った気がする。私はアーク様に尊敬の念を抱いている。私ごときじゃ釣り合わない。この恋愛感情は隠さないといけない。
「いやいや、嘘吐いちゃって。お姉ちゃんにはバレバレだよ?? ユリナがアーク様のこと好きだって。そんなの見れば分かるって」
「ふ、ふぇっ!?」
「それで?? どうして好きになったの??」
ハルカお姉ちゃんは私の動揺など気にすることもなく、グイグイと私に質問を食い込んでいく。ど、どうしてバレたんだろう?? お、お姉ちゃんだからかな? それともハルカお姉ちゃんは心読める能力でもあるのだろうか??
「それに主人とメイドの禁断の恋……いけないからこそ燃えるものもあるんじゃない?? お姉ちゃん協力するよ??」
「い、いけないものはいけないの! もう終わり! この話は終わり!!」
「あらら、怒らせちゃった」
そう言いつつもハルカお姉ちゃんはニヤニヤと笑みを浮かべている。こう言うところも変わらない。
「それにしても」
ハルカお姉ちゃんは私の手に指を絡ませる。
「こんな手が硬くなるまで頑張ったんだね……ユリナはえらいね」
「あ、あれ……?」
私の頰に熱い涙が流れる。温泉よりも熱い涙が。
「ご、ごめん。ハルカお姉ちゃん……わ、わたし……」
「いいよ。おいで。何も言わなくていいから」
「う、うん……」
ハルカお姉ちゃんは私を抱きしめる。私はハルカお姉ちゃんの腕の中で泣いた。
私が頑張って特訓したことは、結果として幸せな未来を掴み取ることができた。
私はアーク様の気持ちが少しだけ分かった気がする。
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