第35話 お願いが生み出した結果
「さすがアーク君だよね」
領主の間。僕はラティに突然に褒められた。
「えっと……なにが?」
3ヶ月前のこと。バフォメットという悪魔を倒した僕達に王様に一つお願いを叶えてもらった。
お願いの内容はレアリティを変更した水晶を使って、ジャポリの街を宣伝する動画を流した。結果的には大成功だった。
「言い方は悪いけれど、ここまで王都から離れている街にここまでの人を短期間で集められるのは偉業だよ? 並の領主じゃ絶対に無理」
たしかに通常であれば不便な道を馬車で一週間以上揺られて来なければいけない。ラティが褒めてくれるのは嬉しいのだけれど、
「運が良かったんだよ」
「そうやって謙遜しちゃって」
「そうかなぁ? 僕は本当に運が良かったと思ってるよ? 周りのみんなに恵まれたおかげで今のジャポリがあるんだし」
映像を映す水晶が物珍しいというのもあるだろうけれど、それを抜きにしても明らかに多くの人が集まった。
「それにラティも協力してくれたから。おかげですごく良かったよ」
「それはほら、私だし?? 仮にも王女だし?? それに大好きなアーク君のためだからね?? 一肌くらい脱ぐよ?? なんなら服だって脱いじゃうよ?」
「ラティ……仮にも王女がそんなこと言っちゃダメだよ??」
ジャポリを紹介した動画はラティだけではなく王様も協力してくれた。
その結果、ジャポリの人達だけでなく、移住希望の人達もジャポリで働き口を見つけたい人達の働く場所もなんとか用意できている。ジャポリはかつてないほどの繁栄をみせている。
「でもここ3か月の間、アーク君ずっと頑張りっぱなしじゃん」
「今が一番の頑張り時だからね」
みんなが頑張ってくれているおかげで、ジャポリは極東の僻地とは思えないほどに成長した。だけど、僕は逆だと思っている。極東の僻地だからこそ土地は余っているのだ。
なにもしてもいなければモンスターの生息範囲は当たり前の話だけど変わる事はない。でもレアリティ変更士の力を使いながら城壁の範囲を広げた。農作物のレアリティを変えて、僕達の生活の範囲を広げることができた。
僕が頑張る事でジャポリの街が幸せになるなら、頑張らない訳にはいかない。
「よし。アーク君デートしよう」
「え? 急にどうしたの?」
僕はラティの突然の提案に困惑した。
「アーク君はジャポリの街のために仕事したいんでしょ? でも正直に言えば私はアーク君には休んでほしい」
「う、うん」
「だから今の街の状況を視察……という名目でデートしよ??」
「でも……いいのかな……?」
未だジャポリの街は発展途中だ。今はみんなが幸せになっているだろうけど、まだまだ安定しているとは言い難い。それだといつか街の人達は不安に思ってしまうかもしれない。
「あーあ、もしもデートに行ってくれたら、私も幸せだし、アーク君も幸せになれると思うよ? 今のジャポリの街はアーク君が思っているよりもすごいんだよ?」
「たしかにすごいけど」
「それに周りを幸せにしたいと思うなら、まずは自分が幸せにならないとね。ほら、幸せの種類はいくらでもある」
「…………」
たしかにラティの言う通り、幸せの種類はいくらでもある。幸せは人によって違う。だとしたら、自分の中にある幸せの種類を増やすのもいいかもしれない。今は限りなく平和だ。
「ダメ……かな……?」
ラティは上目づかいで言う。その言い方はずるい。
「そこまで言うなら、今日だけなら……帰ってから頑張れば大丈夫だよね。うん……行こうか。ラティ」
「本当にいいの!? アーク君! 大好き!」
「ちょ、ちょっとラティ!?」
ラティは僕の腕に抱きついた。ラティはすごく幸せそうな顔をしている。これも一つの幸せの種類なんだろう。




