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異人  作者: 蒼蕣
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人間らしさ

女とはどういうものなのか。

安らぎを与えてくれる存在?

仕事から離隔させてくれる存在?

自分の本心を出させてくれる存在?

未だに明確な答えは出ていない。

しかし、彼女は私にこう言った。

あなたのことが好き、と。

これはおそらく友情とは違うもの。これが世に言う恋なのだろう。しかし浮ついてはダメだ。しっかりと見極めねば。

ある本で読んだ。

”自分は嘘という鎧で身を固め、相手を騙す。相手もまた嘘を振りまき、その鎧を切り崩しにかかってくる。真偽を見抜く力というのがこの社会を生き抜くこつだ。しかしそれを磨きすぎると全てのことに疑心暗鬼し、この社会で息をするのも辛くなる。この塩梅を見極めるのが非常に難しい。

私は変人を褒め言葉と取る。なぜなら変人とはコミュニティから孤立した存在ではなく、嘘と本音を都合のいいように入れ替えるたちの悪い人間とは各別できる存在であるのだから。

偽りの自分で相手を欺くことに対し優越感に浸るもよし、懺悔に陥るのもまた人間である。

しかし何より許せないのが、その災いが自分に降りかかった時。相手の意図を見抜けなかった自分、相手の巧妙な手口にまんまと引っかかってしまう自分の非力さに憤りを感じる。

世の中を本音が屯する時代はもうない。苦しみから解き放たれようと社会から孤立するのもよし、逆に社会そのものをリセットするのもまた一興。だがしかし後者はどれだけの人間がこの社会に不満を持っているかによる。自分一人ではこの社会は変えられない。自分が死ぬことで周りが共感して、少しでも社会転覆の礎になればいい”

最後の方はどうでもいい。社会を変えようなどと思うほどこの社会を恨んじゃいないし、苦しみを感じていない。要はこの社会は嘘が蔓延っているということ。それは紛れも無い事実。彼女の言葉を鵜呑みにしてはならない。

小学六年まで普通の生活をしていたが、恋をしたことは一度もなかった。

それは人と話すのを嫌っていたため。

人に好意を持つ以前に興味持つことさえなかった私にとってそれは未知の世界。

もちろん恋ということは知っている。

日々自分を磨くため、自分の犯罪計画を完成させるために読み続けてきた本の中に出てきたことがある。

異性の者同士が何か目には見えないものに惹かれ合うということ。

恋をすると、その相手のことしか考えられなくなるという。

ほかの物事を犠牲にしてでも相手を守りたいと思ってしまうのだそうだ。

中には犯罪に手を染めようとしたものが、恋した相手によって止められたという事例もあったという。

そして逆に恋をした相手を殺されたら最後、理性を失い、犯罪に走ると。

私も理性を失ってしまうのだろうか。

理性を失ってしまえば、私は人間ではなくなるのだろうか。

いやそれ以前にこの練りに練った計画が彼女によって止められてしまうのだろうか。

いやそれはない。だって彼女には自分の過去も、自分が何をしようとしているのかも話してないのだから。

しかし、彼女は腹を割って私に過去を自分から私に告げた。

それを聞いた私は彼女に惹かれたし、彼女もまた自分の過去を聞いてもなお、以前と同じように接してくれる私を気に入ったのだろう。

私も腹を決めるべきだろうか。

それじゃないと不公平だろうか。

しかし本心を言ってしまうと、憚られるのではないか。

そんな思いが頭をよぎってしまう。

いやそれとも自分が思うほど、私の過去は残酷ではないのだろうか。

自意識過剰なのだろうか。

私の本心を話したところで彼女の私に対する思いは変わらないのだろうか。

過去を話せばこの関係がより親密になるのだろうか。

考えがまとまらない。

しかし自分に秘密があったまま彼女と接していくのは、私にとっても彼女にとっても辛いことだろう。

ならば一層のこと彼女との縁を切るべきだろうか。そうすれば仕事に、任務に手中できる。誰にも邪魔されない。

しかし彼女に出会うことで、彼女と接することで私は何か、以前の自分にはなかった何かを見つけることができそうな気がした。

それはきっと私の願いだった、過去の自分と完全に離別できる何かだと思う。

その貴重な機会を手放していいのだろうか。

きっとまた別の機会で得られることができるだろうか。人は無限にいる。機会はいくらでもあるだろう。

しかし彼女ほどの、いやそれ以上の人間を私のこの狭い人間関係から見つけ出すことができるのだろうか。

彼女にあったことは奇跡に近いことではなかろうか。奇跡は二度起きるだろうか。

なんなのだろう、この気持ちは。彼女の笑顔を、明るさを汚したくないと思ってしまう。

私がここで別れを切り出せば、彼女の明るさはきっと闇に埋もれてしまうだろう。

今まで他人のことなんか気にも留めなかったはずなのに、彼女のこととなると気にしてしまう。

彼女にこれ以上悲しい思いをさせたくない。そのために打てる最善の策は。

別れを持ちかけるか。覚悟を決めて過去を話すか。それとも私の過去はこのまま自分の心の中にしまっておくか。

どれも彼女を悲しませる可能性はある。

もし彼女の気持ちが本当なら、信じるべきだろう。

そして私自身も自分の気持ちに素直になるべきだろう。

彼女の言葉を聞いて最初に頭をよぎったこと。

それは…

みなさん、ご無沙汰しております。急展開で申し訳ありません、もう少し馴れ初めを話したかったのですが、経験なく、思いつきませんでした。本で読んだのくだりはつい最近思ったことで、私はなんで人と話すのが嫌なんだろうと考えた時に、出た答えが、偽りの人間関係に嫌気が刺すからでした。見栄を張ろうとする自分も往生際が悪いと思いますし、相手の社交辞令も気味が悪いと感じます。褒め言葉も素直に喜べません。本心はなんだと探りを入れたくなります。こんなことを思ってしまうのは私だけでしょうか。

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