ライバル
「いよいよですね」
いつも以上にきちんと身なりを整えている今回の主役の円城寺くん、いつもはワイシャツにネクタイ姿なのにスーツをきちんと羽織っている江里口くん、そしていつもと変わらない身なりの私の三人は会場に入った。
百武さんと木下くんはお留守番だ。いくら大仕事だからと言って会社を留守にするわけには行かない。発表会以外にも仕事はある。いつもなら五人で分担してやる仕事を今日は二人でやらせているんだ。本当なら手伝ってあげたいが、課長であり、商品の提案者である自分が出席しないわけにはいかない。
「遅かったですね」
「まあ、仕方ないさ。三班は演説の練習を。私たちは式典の準備をするって決めたんですから」
すでに会場入りを済ませているのは一班から大友課長、佐伯さんに蒲池さん。三班からは島津課長、頴娃さんと新納さんだ。
「いや〜参った」
どうせなら力仕事ができる若者を連れて来るべきだと後悔している大友さん率いる一班と熟練度では大友さんたちには劣るものの島津さん指揮の元黙々と準備を進めている連携が取れた島津さん率いる二班。
「私たちも手伝いますよ」
「ぜひそうしてくれ」
いつもは敵意を見せている大友さんも今回ばかりは若手を連れている我ら三班に期待している。
「徐々に人が集まってきてますね」
スーツを脱ぎワイシャツの腕をまくり上げながら、江里口くんが言った。
「まあ、もう直ぐ始まるからな」
円城寺くんはそう言って床に置いてあった段ボールを持ち上げた。
「やあ、みんな着々と進んでいるようだね」
いつもの黄土色と違い、この会場の雰囲気にあった紺のスーツで決めている甲斐部長。
「円城寺くん、期待しているぞ」
そう言って円城寺くんに近寄ると、肩をポンポンと叩いた。
「はい。必ずご期待に答えて見せます」
張り切る姿を見て私は少し感動し、そして安堵した。
円城寺くんならやってくれる。私だったらきっとあんな言葉出なかっただろう。いつものように暗い表情で曖昧に答えるんだろうな、と心の中で思った。
「あ、あれは…」
少し休憩を取っていた蒲池さんが指差した。
その方向には玩具メーカー最大手の一角のブースがあった。
他にも最近玩具にまで手を広げ始めた子供服会社やアニメ会社とのコラボ商品を多く排出している会社、VRやAIといった最新技術を応用したおもちゃを販売する会社、つい最近海外から日本に進出してきた会社など名だたる玩具メーカーが軒を連ねていた。そしてそんな大きな玩具メーカーとの合併や傘下に入ることで倒産を免れ、存続した子会社も多数出席していた。ブースは実に三十近くにもなるのだろう。
その中には最大手の老舗玩具メーカー、そう私の雇い主が経営する会社もあった。




