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異人  作者: 蒼蕣
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合同会議

「ではこれより企画部合同での定例会議を行います。今回の議題は合同新製品発表会で出す商品についてです。各班から一つずつ新商品を紹介してもらい、発表会に出す一つを決めたいと思います。ではまず、第一班から」

いつもの定例会議なら進行役は班ごとに交代でやるのだが、今回ばかりは公平を喫すために企画部以外の人を呼んだ。興味がないのか、進行がやけに速い感じがした。

「では我が班から始めさせていただく」

そうやって立ち上がったのは企画部第一班の課長、大友(おおとも)さんだ。

大友さんはこの会社に入って三十年近く経っている大ベテランだ。普通なら私のような新参者が対抗できるわけないのだが、自分も同じ課長である以上そう言うわけにはいかない。

「今回、我が班が企画した商品は…」

そう言って大友さんの斜め後ろで立っている戸次(べっき)さんが、商品を取り出した。どうやらおままごとセットのようだ。

と言ってもまだ企画段階なので見た目は真っ白い何かとしか言えない。

商品化するかもわからないものにいちいちお金をかけていられないので、企画段階の商品はすべて3Dプリンターで作成されているため、色はついていない。

材質もプラスチックではなく粘土だ。ただ機械で精密に作られているので、それが何かは誰にでもわかった。

まあそれに配布された資料を読んでいるので、何が出てくるかはあらかじめ知っていたのだが。

シンクやコンロはもちろん、換気扇やキャビネット、冷蔵庫、オーブン、電子レンジ、トースター、食洗機までついている。さらに調理器具も本格的に揃っている。小さい女の子には魅力的だろう。しかしおままごとで調理方法や後片付けのことまで考えるのだろうか。

コンロはなぜかIH。今時らしいが、ガスの方がコンロらしさ、料理の作りがいがあるのではないかと思った。

企画部第一班は企画部の中で最大規模の計六人。大友さんと戸次さん、そのほかには臼杵(うすき)さん、佐伯(さえき)さん、志賀(しが)さんと蒲池(かまち)さんだ。この班は長い間この会社に勤めているものが多く、経験豊富な人材が揃っている。佐伯さんは元々営業部のサポートセンターにいて、顧客の不満とかもある程度わかるらしい。臼杵さんは元々開発部にいたこともあり、どうやったら値段を削減できるか熟知している。ちなみにこの班で一番年下の志賀さんでさえ、うちの古参の百武さんの二、三個後輩だ。

「以上です」

大友さんと戸次さんは一礼をして席に着いた。

「ありがとうございました」

「では続いて、第二班お願いします」

「はい」

そう言って立ち上がったのは第二班の課長、島津(しまづ)さん。

歳は円城寺さんぐらいで、昔からあるおもちゃを企画する保守派の一班とは違い、今まで存在しなかった新しいおもちゃを多く企画する革新班だ。新しい画期的なおもちゃであって売れる時には売れるが売れないときには売れないというアップダウンが激しい一発芸のようだといつも思う。しかしここ最近は好調なようで躍進的に成長を遂げた班と呼べるだろう。

「私たちの班が企画した商品は手元にある資料をご覧ください」

そう言って私たちは資料を開いた。

「ズバリ、警察官になりきれるグッズです」

これまた斬新なアイデアだ。これまである職業になりきれるタイプのおもちゃは何回か販売したことがあった。

どれも子供が将来なりたいと憧れる職業ばかりだ。パン屋、ケーキ屋、医者、デザイナー、アイスクリーム屋などあったが、警察官は販売したことはなかった。

「では順を追って説明しますので…」

島津さんの班は私たちと同じ五人体制。陽気な性格の課長の他には伊集院(いじゅういん)さん、新納(にいろ)さん、種子島(たねがしま)さん、と頴娃(えい)さんだ。課長もそれなりに若いのだが、頴娃さんは私より若い。この二人が先陣を切って今の子供たちにあった商品をいくつも企画する。中には突拍子もない新商品を企画するのを、この会社で経験をいくらか踏んだ伊集院さんと新納さんが制止し、ある程度受けが良さそうな商品を選ぶのだそうだ。種子島さんは子供の心理、発達心理学というらしいが、それについて勉強したことがあるらしく、子供が欲しがるものが何か理解していると思われる。

そして最後に私たちの班が呼ばれた。

「今回私たちの班はスリーウェイかるたを企画しました」

そうして私も3Dプリンターで手早く作ったかるたを見せながら説明した。

「ありがとうございました。では部長どの商品がいいかお選びください」

議論でどの商品を選ぶか決まるのだが、甲斐(かい)部長の鶴の一声は強力でそこから彼が選んだ商品じゃ無いものが選ばれることはほぼなかった。

それすなわち部長に目をつけられた商品が発表会に売り出されることがほぼ確定するわけだ。

皆息を飲んで部長の答えに聞き耳を立てていた。おそらく心の中では両手を顔の前で重ねて祈っているのだろうと思ったが、私は全く緊張しなかった。

みなさん、ご無沙汰しております。では前回投げかけた質問の答え合わせといきましょう。第三班の五人は龍造寺四天王と呼ばれる、戦国時代の九州で活躍した戦国武将たちです。そして、今回登場した他の社員たちも全員、九州の戦国武将たちです。戦国時代の九州は三つ巴でして第三班の龍造寺家、第二班が九州の覇者である島津家、そして第一班が秀吉の時代では低迷してしまいましたが、信長時代では猛威を振るっていた大友家です。その中で主人公の班を龍造寺家にしたのは、一番知名度が低いと思ったからです。三つ巴と言いつつも、やはり他の二つに比べて(個人的に)劣ると思われる龍造寺家に、主人公が手を貸すことで日の目を浴びる、そんな思いがあって選びました。そしてその三班をまとめる企画部部長が、九州の戦国武将で、三つの家柄に属さず、個人的に好きな阿蘇家の軍師、甲斐宗運です。

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