一石三鳥
「どう思いますか」
私は自分のアイデアをみんなの前で再度発表した。
「リバーシブルかるたですか」
「自分は新鮮でいいと思います」
「おもちゃを長く使ってくれるのはこちらとしてもありがたいですからね」
賛成意見が多数入るなか、円城寺敦だけが即答せずにいた。彼は右手で口元を隠し、手元を凝視していた。
「何か悪い点がありましたか」
「いえ、商品自体はいいと思います。ただ考えていたコンセプトは親と子供がどちらも楽しめるおもちゃ。これでは大人が楽しめる要素が…」
「確かに幅広い世代の子供には受けますが、大人までとはいかないかもしれませんね」
円城寺くんの意見を聞いて木下くんも異論を唱えた。
「私もそれが気になったんです。正直この商品で強行するのも悪くないと思ったんですが、やはり考え直したほうがいいでしょうか」
「ううん。やはり大人と子供では知識の幅が違いすぎます。小学校高学年ぐらいなら、文字も読めるので、大人と同等の遊びでも問題なさそうですが。例えばすごろく系のゲームは大体文字がいっぱいだし、小学校に上がったばかりの子供にはつまらないと感じてしまいそうですね」
江里口くんが自分の顎をさすりながらそう呟いた。
「でもそれって人生ゲームのこと言ってますよね。でもすごろくを使うゲームでも文字使わないやつって結構ありますよ」
木下くんは一番年下にも関わらず、知識は豊富だ。
「いや、でもやはり小学生ぐらいの子供にはもっと躍動感のある遊びをしたいと思うのではないか」
百武さんも大人ならではの視点で数々のヒット商品を世に送り出してきた。
「そうなってくるとやはりかるたとかがいいと私は思いますけどね」
「円城寺くん、どう思いますか」
考えがまとまらない時はやはり、期待のホープである円城寺くんに相談するのが一番だ。
「かるたってやっぱり子供の遊びですから大人は必然的に読む側になりますよね。それだとやっぱり大人たちはつまらない」
「大人たちも遊ぶ側になってくれたらってことですか」
「もっと詳しく言うならば、読む側というポジションがなくなればみんな遊ぶ側になれます」
「読む役割を機械にでもやらせるってことですか」
江里口くんと円城寺くんが交互に会話している。それを残りの四人は静かに聞いている。
「あ! いいこと思いつきました!」
突然木下くんが声を荒げた。
「僕知ってます。ちっちゃい頃よく親と一緒にやってました!」
「トランプとかじゃないだろうね。それだったら私も思いついているが…」
百武さんが、会話に入った。
「そうじゃなくて百人一首の坊主めくりですよ」
「なるほど、坊主めくりは誰でも楽しめる」
「坊主めくりの要素は坊主、姫、男の三種類のカードがあること。山札から坊主をめくれば自分の今までの手札を捨てなくてはならず、次に姫を引いた人がその捨て札を総取りできる。最終的に一番手札が多いものが勝ち。別に三種類のカードがあれば坊主めくりはできると思います。例えば、動物かるたで肉食は男、草食は姫、雑食は坊主みたいな感じで」
「しかし、小学生が雑食とか知ってるかな〜」
「そう言う時こそ親に聞くんです。勉強になると思いますよ」
成松くんの疑問に木下くんは即答した。
「もう一つ問題がある。かるたは通常ひらがなで遊ぶから五十枚ある。しかし坊主めくりを五十枚でやるのは…」
円城寺くんも質問した。
「カタカナを足したり、ぱ行やば行など濁点や半濁点のつく行を入れれば量は十分です」
「確かに…」
どうやらあの円城寺くんも木下くんの勢いに押され、納得させられたようだ。
「坊主めくりにルールはいらないんじゃないですか。三種類の特徴があればなんでも。何を食べるか、どこに住んでいるか、何類か。そうやって動物の知識を深めてもらえばいいじゃないですね」
木下くんの案に賛同するように江里口くんが発言する。
「幼稚園ではオノマトペを使ったかるた。小学生ではひらがなやカタカナを勉強する傍ら動物も覚えられる動物かるた。この二つの時は大人たちは読み手として参加し、子供達の成長を見守っててもらう。そしてそれらもすべて習い終わった頃今度は坊主めくりとして動物の特徴なども覚える。この時は大人も子供も全員遊び手として楽しんでもらう」
最年長の百武さんが器用にまとめた。
「最初のコンセプトにもあっていますし…」
「一石三鳥ですね」
「これでもっと長く使ってもらうことができそうですね」
みんなの顔が輝いて見えた。
「みんな異論はなさそうですね。んじゃあこの案で進めていきましょう!」
周りの空気に当てられ、思わず自分も気合が入った。




