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異人  作者: 蒼蕣
42/59

食事

「かるた…?」

「うん、字は読めなくても絵とか色を見て判別することはできると思うんだ」

私は今、棗と夕食を共にしている。

二人きりの夕食だが、特別高級なレストランなどではなく、手頃な価格で日本食を味わえるチェーン店だ。

私はチキン南蛮定食を、彼女は鯖の塩焼き定食を頼んだ。

出てきたチキン南蛮は思いの外大きく、これにご飯と味噌汁、あとおかず一品におしんこがついて八百円で食べられることにいささか驚いた。

ここのチキン南蛮の特徴はタレにあるようで、確かにタルタルソースであることには違いないが、柑橘系の酸味と風味があった。唐揚げにレモンをかけるように鳥と柑橘系の相性は良く合うようだ。

彼女の食べている鯖定食は見た目こそシンプルだが、彼女いわく塩加減が絶妙で、しかも炭火焼なようで炭の香りが鯖に意味混んでいておいしそうだった。

メールでのやり取りもさることながら、彼女とは最近よく面と向かって会うようになった。

それこそ彼女が自分の過去を告白して以来、不定期だが頻繁に会っていた。

自分の素性は隠しているものの自分の仕事のことについても話すようになっていた。

ちなみに彼女は薬剤師で、都内の薬局で働いているそうだ。

よく同僚との何気ない会話や、よく来るお客さんとの世間話を私にしてくれる。

こうやって徐々に自分の身の内をさらけ出しあって仲を深めていくんだろうなと思った。

しかし私は未だ一線画している。自分の懐にそう易々と他人を入れてはならない。人をそう簡単に信用してはいけない。

それは情報の漏洩を防ぐため。彼女が私を裏切るともわからない。私の本音を聞いて、警察に駆け込むかもしれない。そんなことはない…と言い切れない以上、用心するに越したことはない。

彼女にはもちろん自分がここの会社で偽名を使ってスパイしていることや、大元である依頼主の完全犯罪を計画していることは伏せている。公開したのは自分の名前(偽名)、それに会社(偽りの職業)のことだろうだが。

素性は隠しているにせよ、人と食事をしている。そう考えると案外普通の暮らしにうまく溶け込んでいるのではないかと感じている。

「じゃあそれでいくんだ」

「うん、次の会議ではもっと具体的なかるたの案、どんなかるたにするのかとかを決めて行こうと思う」

「動物とかは?」

「そう、私もそれはいいと思ったんだけど幼稚園生にはまだ難しいと思ったんだ」

「ん〜じゃあ」

「私が考えてる対象年齢は三〜八歳。考えてみると小学校に通っている子と通う以前の子って歳的にはそんな離れてないけど実は経験と知能に大きな差がある。だからおもちゃも小学生用と幼児用って分かれてることが多い。だったらこのかるたで二種類の遊びができればいいじゃんと思って」

「どういうこと?」

「リバーシブルかるただよ。片方は小学生向けのかるた、動物かるたでもいいと思う。読み札もちょっと簡単な言葉を使った普通の読み札。もう片方は小学校に上がる前の子向けのかるただ。こっちは例えば小学校に上がる前の子でも見慣れたもの全般、読み札は擬音語、オノマトペを多く使ったもの。これなら幼稚園の子供に買ったかるたを小学生ぐらいまで使ってもらえる」

「擬音語ってパチパチとかブーンとか?」

「そう、例えばピポーピポーって言って、怪我しちゃった人を乗せる車ってな〜んだ? みたいな。赤ちゃんの頃ってさ物を擬音語で覚えること多くなかった?」

「確かに、ていうかその読み方だとかるたじゃなくてクイズとかなぞなぞなんじゃ…」

彼女の指摘に私は少し笑った。

「あ、そうだよね。まあこれは例えばの話だからさ」

この話題はその後長い間盛り上がった。

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