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異人  作者: 蒼蕣
34/59

不満

「私が中学校や高校のことを話したくなかったのはいい思い出がないから」

私も似たようなものだ。

いい思い出どころか、日本の義務教育制度に含まれているはずの中学校や高校に通ったこともない社会の異端者だ。

そんなことを思ったが、私はそれを紅茶と一緒に飲みこんだ。

「日本は資本主義でアメリカほどではないけれど貧困の差がある国でしょ」

資本主義、つまり国民が自由に自分の生き方を選べる政治方針。政府がもたらす人々の生活保障を必要最低限にとどめ、国民一人一人が社会の中で好き勝手に生きること。しかし結果がどうであれ、全ては自己責任となる。それはつまり、努力して知恵や技術を得た者は富を得る。そしてそれがない者は貧しくなる。

「それによる差別って意外といろんなところで存在しているの。私の地域は特に過激で、みんな都会に住んでいる者イコール裕福であるって思い込んでいて、都会に住んでいるってだけでその人たちを毛嫌いしていた」

貧困による差別は日本のみならず世界中で問題になっている。

貧しい者は裕福な者に支配され、差別され、不当な扱いを受ける。

そんな時に資本主義の対極として生まれたのが社会主義。彼らの自由の定義は平等。これは政府が国民全てを管理し、人々に平等な生活を与えるという政治方針。国民全員が働いた分だけ給料がもらえるという資本主義に対し、社会主義では国民全員に一律の給料が与えられる。その結果誰かが他の人より多くの富を得るという社会は生まれなくなった。しかしそれはつまりいくら他の人より多く働いてももらえる給料は他の人と一緒。そのため、働く意欲というものが湧きにくく、国として発展しづらいという欠点がある。

”不自由”のない暮らしが努力することによって保証されるが、その代わりに他の人を蹴落とさなければいけない生活を自由というのか。はたまた国民全員が同じ立場で生き、競争心が全くない生活を自由というのか。それはわからない。

ただ言えることはどちらの政治方針も社会という檻の中で成り立っている。その檻から出れば正真正銘”自由”なれるが、生活は”不自由”だろう。だから我々は社会の中で理想的な”自由”を見つけるのだ。

「私も都会にいたからね、新しい学校でいじめを受けてた。小さいところだったから中学一、二、三年生が一つにまとめられてた。みんな私に寄り付かなかった。どれだけの時間を費やしても距離を詰めることはできなかった。都会育ちを羨ましがる人もいた。なぜなら都会の人はみんな頭がいいと思っていたから。でも私が勉強があまりできないと知ると余計に離れていった」

彼女が何をされたかは話さなかったが、だいたい想像がついた。

彼女は私とはまた違った苦しみを味わっていた。

彼女自身は何も悪くないのにその地域に伝わる言い伝えと言うべきか偽の知識に惑わされていた人々に彼女は苦しめられ続けた。

「親戚の人も頼れなかった。あの人たちは私に衣食住を与えるだけだった。多分あの人たちも私のことを嫌ってたんだと思う」

「なんで…」

私はついに思ったことが口に出てしまった。

「なんで、その人たちはそんなに都会を嫌ってるの?」

「都会を嫌ってるもそうなんだけど、嫌っているのはこの国の政府かな。私がいた地域はね、つい二、三十年前にできたの。でもそこに住んでいる人はお年寄りばっかり。これ、どう言うことだかわかる?」

「地域全体で新しい場所に移り住んだ」

「そう、そして元々の場所には今ダムが建ってる」

なるほど、ダム建設か。ダムは水力発電を可能にする施設だが、その配給は主に都市部が優先され、田舎にはあまり来ないと聞く。そしてダムを建設するにはその地域の人々は他の地へ移り住まなければならない。

「ダム建設は住民の反対を押し切って行われた」

ダム建設、その真の目的は他の国に対するアピールだと言われている。自分たちの国はダムが作れるほど裕福であると他国に宣伝しているのだ。そんな私利私欲のために自分たちの土地が奪われるのは彼らにとって許せないことだろう。特に田舎の者たちはその土地や自然に誇りを感じているらしく、無理やり移転されるのは彼らの誇りを踏みにじられたのと同じだろう。

「前の場所ではよくお祭りが開かれてて、都市部から遠く離れてたんだけど意外と多くの人で賑わいを見せてたんだって。でも移転してからは前の場所よりもさらに山奥で誰も来なくなったみたい」

「高校も…」

「うん、高校もその地域内にあった。もちろん、隣町とかにも高校はあったんだけど学費が高くて、行くにしても毎日山を越えるとなるとね」

私は思った。彼女は強いと。彼女の過去は私のとは比べ物にならない。私のは確かに最初の数年は人以下の扱いを受けたが、BやAランク以降はただひたすら本を読んでいたに過ぎない。もし私が彼女の立場だったら、多分その地域の人々のみならず、その元凶である国に対する嫌悪感に心を奪われていただろう。殺人とまではいかないが、グレるだろうと思った。

それなのに彼女は高校で猛勉強し、大学に入り、一流の企業に就職した。

そんな彼女を見ていると私は自分がいかにちっぽけな存在であるか痛感した。

私は中学校も高校も大学も行っていない。そして今の就職先も私の努力で得たものではない。そんな自分に対し私は怒りを覚えた。

みなさん、ご無沙汰しております。

今回はたくさん学術的な話があったと思います。資本主義や社会主義、自由とは何かなど。ちょっとつまらなかったでしょうか。歴史を学んでいる以上なんとか主義というのは度々よく出てくるのですが、私はイマイチ理解していないと思います。この説明であっていたでしょうか。

それと少し偏見が入っていましたね。金銭面での差別はまだまだ世界中で見れますが、都会や田舎での差別はだいぶ見れなくなりました。何かしらの辛い過去を描きたかったのですが、私自身、自分の無力さや劣等感が前面に出て、自分の力だけでは解決が難しい辛い経験をしてこなかったので、想像で描くしかありませんでした。しかしそれにしてもこの時代設定(現代)には合っていませんでしたね。申し訳ありません。

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