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異人  作者: 蒼蕣
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返事

人々との交流を私は閉ざしている。

特に、メールなど相手の顔の見えない状況での交流だ。

それはなぜか一言で片付けるなら、本性が出てしまうからだ。

人々は皆表と裏の顔を持っている。多くの場合、裏の顔には危険な思想が投影されている。

そんな裏の顔を人々は激しく非難する。

背徳的だ。非人道的だ。悪魔だ。人間の血が流れているのか。

そんな非難を浴びないため人々は表の顔をかぶる。

愛想よくする。笑顔を絶やさない。社交辞令を用いて相手の機嫌を損なわないよう、気を使う。

人とは相手の評価を気にするものだ。

相手に悪く思われたくない。悪く思われたら、それがほかの人にも伝えられ、私は孤立し、いじめを受けるかもしれない。

特に今の世の中見ず知らずの人間が自由に発言できる時代だ。軽率な発言一つで非難轟々なんてことが多々ある。

そんな恐怖が彼らの裏の顔を表に出すことを抑制する。公共の場では常に気を張っていなければならない。

しかしいつまでも表の顔を被っているわけにはいかない。

たまには裏の顔に空気を吸わせなければならない。

多くの場合それは家だろう。自分のことを一番知っている家族になら、自分の本性をさらけ出しても嫌がられるだけと思っている人も多いのではないのか。絶縁にまではそうそう発展しない。

公共の場で同僚や友達と話すときはまるで別人のようように接し、家に帰るとのその皮を剥ぐ。

私の場合もそうである。家族はいないが、家に帰れば素に戻る。

しかし、そんな本来の自分を開放できる唯一の時間を蝕むのが、メールなどのソーシャルメディアだ。

気が緩んでいる中で突然表の顔しか見せたことのない人から連絡が来たときあなたはどうする。

すぐに表の顔に切り替える人もいるだろうが、私は部屋から出るという行為がない限り、切り替えることができない。結果として自分の裏の顔で相手と話してしまうかもしれない。

もしそこで私の危険な思想が出てしまったらどうなってしまう。

ただでさえ孤独な私はより一層深い闇に追いやられてしまう。

私はそれを恐れているのだ。孤独は意外にも寂しい。

その闇に誘われないために、私は相手と直接会話する以外は極力交流を控えるのである。


それなのに、彼女は飽きずに私に連絡してくる。

昨日読んだ本で女性とはなんなのか、異性とはなんなのか学んだはずなのに。

小学生の頃にそんなに仲良くなった印象もないのになぜだろう。

石川棗、私はただ彼女の言葉に対し、相槌を打つだけなのにも関わらず、彼女は私に話しかけてくる。

日頃溜め込んでいる愚痴をただ一方的に話すことでストレスを発散しているのかと考えたが、彼女の話はいつも明るい話ばかりだった。

一層のこと私の本性を文章にすれば、自然と彼女は離れていくだろうと思いつつも、手が動かなかった。

怖いのだろうか。彼女が去っていくが。

寂しいのだろうか。また一人になるのが。

嬉しいのだろうか。誰かが私のことを気に留めてくれることが。

一週間に一回のペースで連絡してくる彼女、何気ない出来事をただ私に語りかけてくる彼女に私はただ聞き耳をたてるだけだった。

もしや彼女は私に何かを求めているのではないのか。

それは彼女の話に対する私の感想か。

はたまた私に起こった出来事なのか。

それとも他に私にしかできないようなことを求めているのか。

色々考えてみたが、わからなかった。

文面から人の心情を読み解くのは私の特技だと思っていたが、どうも彼女の思考は読み取れない。

なら一層聞いてみるか。

返答次第によっては連絡が途絶えてしまうかもしれないが、そんな恐怖を私の好奇心が上回った。

—すみません、なぜ毎週のように私に連絡してくれるのですか?ー

私の初めての会話を繋げた瞬間だった。

皆さんは表と裏の顔、きちんと使い分けていますか。

人によって表と裏のギャップは違えど、場所や相手で使い分けていると思います。

自伝の方で少し触れましたが、裏の顔をさらけ出しすぎて拒絶されて以降、私は裏の顔を人前で見せることはなくなりました。そして人と必要以上に仲良くなってしまうと、思わず裏の顔がこぼれてしまう恐れがあるので、人とは距離を置くようになりました。

世の中には私の本心を受け入れてくれる人が存在しているとは思いますが、外見や世間話からではそれが見抜けません。そのため大学生になってからはずっと一人です。学校のこと以外を話すことはありません。昔から一人でいることは好きなので寂しいと思ったことはありませんが、大学生活を楽しんでいるかと聞かれたら、特に楽しいことはないと答える他ありません。ひとつ悩みとしては人と話す機会が少なくなったせいか課題とかでプレゼンなどを行うとき異様に緊張するようになってしまいました。あとはまあ、独り言多いことでしょうか。

私の物語を読んでくださっている皆様は本来の私の理解者であると認識しています。これからもよろしくお願いします。

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