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異人  作者: 蒼蕣
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差別

社会に出てから毎週本屋に寄って、本棚に溜まった私の知識。

もちろん全ての内容が必要かと言われるとそうではないので、全てが私の新たな知識として上書きされたわけではないが、犯罪計画を立てる上では十分兼ね備えていると思っている。

それらの本を毎日最低でも一冊読むことで、一度目で読みこぼした知識を掠め取る。これがさらに私の犯罪計画に信憑性を高め、磨きをかけてくれる。


”機体がひどく揺れている。これからこの旅客機はある星に不時着するのだ。

しかし、その星は我々にとってまだ未知の世界であり、その星の住民が我々を助けてくれるかどうかはわからない。

それ以前に無事にあの星にたどり着けるかどうかが心配である。もし、地盤が固くなかったら、この旅客機を溶かすような化学物質が大気中に存在していたら、我々の体を蝕む害虫があの星に存在していたら。

私の不安は募るばかりだ。今はただ、妻と息子の怯える姿だけが目に映る。

機内アナウンスが私の耳に響いた。どうやら、無事に星の大気圏に入れたみたいだ。

見たところ、どこも溶かされている様子はない。その事実だけで一安心だ。

窓の外を見ると、グレーと黄土色の台地が見えた。どちらも地盤がしっかりしているようだ。

やや、大地の色が変わった。一面真っ青になった。しかもグニャグニャと地盤の形が瞬きをするたびに変わっている。こんな不安定な所に無事に着地できるのだろうか。ひっくり返ったりしないだろうか。

また機内アナウンスが流れた。どうやら本当にあの青の大地に不時着するようだ。もう機長の操縦技術の高さを望む他ない。

私はふと隣を見た。妻に抱きつく息子は泣きべそをかき、息子を強く抱きしめる妻は震えながら目を瞑っていた。私も、目を瞑り神に祈った。

大きな振動がした。青の大地に降り立ったのだとわかった。

と、同時に何かが私の足元をかすめた。見ると、窓の外で見たグニャグニャと形を変える物体が、私の足に引っ付いていた。青の大地はこんな小さな隙間にまで入ってこられるのか。

まずい、機体がどんどんと侵食されていく。

死を感じるほど冷たかった。私の体温が徐々に奪われていった。それは私だけではないようだった。

息子がついに泣き出した。それと同時に他の乗客もパニックに陥った。私はただひたすらこの青い物体から逃れる術を探していた。

窓の外をみると、青い物体があたり一面を埋めていた。どうやら、この物体に飲み込まれているようだった。

青い物体がどんどん私に迫ってくる。量も増えている。私は生きる希望を失いかけた。

しかし、隣にいる妻と息子のことを考えると、自然と体が動いた。ここはもう陸地である。ならば、外に出ることができる。私は、そばにある窓を叩いた。しかし私の力ではビクともしない。

青い物体が息子の首あたりまで浸食している。彼のみならず、私の死が近づいているのは明らかだった。

突然大きな音がした。見ると、動く物体が私の同志の腕を引っ張っている。さらっているのかと思ったが、連れられた同志のどれもが安堵の表情を浮かべていた。

この星の先住民であることは察しがついた。それに彼らが異邦人である我らに手を差し伸べるほど優しいこともわかった。私は思わず、笑みがこぼれた。これで助かる。

同志が次々と助け出され、ついに我々の番となった。息子を抱きかかえた妻の腕を先住民がひっぱり、飛行機から出した。妻と子供は無事のようだ。私も手を伸ばした。しかし、彼らは私の手を取ろうとはしなかった。見えないのだろうか。いや、明らかに拒絶している。

よくよく見ると、彼らは女、子供にしか手を差し伸べていなかった。男は自分で這い上がってこいという意味であろうか。しかし、外に出ようとすると、中に押し込まれた。

なんだ、こいつらは。この地球という星はこんなにも性別を偏見しているのか。彼らは我々に一度助かると希望を持たせ、すぐに絶望へと叩き落とす。こんな奴らを私たちと同じ生物だと言っていいのだろうか。こいつらは化けの皮をかぶった悪魔だ。同じ生物なら皆平等に扱うべきではないのか!

我々も生きているのだ。生きる権利は皆平等にあるはずだ! 貴様らだけは絶対に許さないぞ、天使の顔を見せるふりをしながら我々男を捨て、妻や子供を平然とさらう人間どもめ!

私はそう叫びながら、顔の色一つ変えない人間どもを睨んだ。

私の恐怖と怒りに満ち溢れた形相を見たはずの妻と子供は、自分の身が助かっただけで安堵したのか、私の方を振り返り、笑い、そして去っていった。彼らも私を捨てたのだ。長年連れ添ってきたはずの家族にさえ私は見放されたのだ。やはり生物は生きることが全て、自分の身を犠牲にしてまで他人を救おうなどと言う輩はいないということなのか。何より彼らは一度助かった身、いくら家族を助けるためでももう一度死の瀬戸際まで赴くことはしないのだ。

そして、我々男たちは絶望と厭悪の中、この得体の知れない青い物体に引き込まれていった…”


そう、所詮我々は残酷な生き物だ。性別や能力、価値観の違いから人を差別する。それが互いの憎しみを生む。そんな彼らの憎しみを晴らすために私は犯罪計画を彼らに提示するのだ。自分のことしか見えていない醜い彼らに…

今回投稿した内容は随分と前に暇だった時に書いたものです。以前にも同じような内容を投稿した気がします。

私の敬愛する星新一の作風を真似て書いてみたのですが、メッセージ性を考えず作ったので、今読んでみても何を伝えたいのかわかりません。そしてなぜそれを一年ほど前の私はここで紹介しようと思ったのかもわかりかねます。おそらく怠けたかったんだと思います。当時の私は毎日欠かさず書いていましたから億劫になっていたのかもしれません。

来週のものはしっかりと考えられていましたのでご安心ください。それではまた来週。

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