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王国連合  作者: ko-ta
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集いし者たち3

 王都オルデオン。

 ヘキゾミルド山脈に天然の防壁としての価値を見出し、それに併設して発展してきた街はおよそ人口30万人の大都市である。

 ヘキゾミルド山はその期待に応えて南方からの侵略を大いに妨げてきたが、同時に別の問題をはらんでいた。

 すなわち、モンスターの襲来である。

 王都の中心は騎士団の精鋭や選りすぐりの冒険者たちで防衛されているし、人の多い地域はそもそもモンスターも忌避して近寄らない。

 では郊外はどうかというと、どうしても防衛力は数段落ちる。

 結果、定期的に何らかの被害がもたらされていた。


 まもなく秋も終わりかけの山中は下界とは違う。ところどころ凍りついており、油断すると足元を文字通りすくわれそうだ。

 そんな中をソールは、ルフから与えられた防寒着に身を包みながら、どうしてこうなったか思い出していた。

 

 「オ、オルテさん、急に何をいいだすんですか!!」

 恐ろしい雰囲気を纏った彼女だが、見栄えは他者を圧倒している。

 嬉しい反面、恐ろし——いや、嬉しい気持ちの方が勝るか?

 口をパクパクさせながら赤面するソールを見下すように鼻を鳴らすと、オルテは小馬鹿にしたように言い放つ。

 「いきなりあだ名で呼ぶとは馴れ馴れしいやつだな」

 すいませんと小声で詫びるソールに追い討ちをかける。

 「無一文のお前に出来ることは他にないではないか」

 その様子を、どこか面白そうに眺めていたルフは、

 「まあ、妥当なところじゃないかな。アルはどう思う?」

 品行更正な光の神に仕える神官ならば当然猛反対するはずだ。

 だが、ソールの予測に反して、アルは、

 「まあ、このまま彼を放置するわけにもいかないし俺は依存ない」

 で、でも、俺には心に誓った恋人が——。

 「悪いようにはしないよ。君は首を縦に振ってくれるだけでいいんだ」

 エルフは潤んだ瞳で、じっとソールを覗き込む。

 「わたしも君がずっとそばにいてくれると嬉しい」

 「はい、お願いします」

 ソールは考えるより先に頷いていた。

 そして今気付いた。

 もしかしてルフは小悪魔といわれる類の存在だろうか?

 「ところでソールの村に行くにしても遠方だし、足は必要だよな?」

 提案するアルに一同は頷く。

 「ちょうどいい討伐依頼があるんだ」

 そして今に至る。


 間もなく山頂というあたりで眼下に視線を向ける。

 《王国連合》の面々は視力の良い彼でも、手のひらほどに小さく見える。

 何度も何度も救いを求めるように彼らに視線を飛ばすが、一度だけオルテが早くしろとばかりに顎を上げただけだった。

 ソールは何度目にもなるため息をつくと、決して寒さだけで震え出したわけではない両足を叱咤激励する。

 他に選択肢はない。行くぞ!!


  そろそろかと思われた時、突然彼の目の前に一軒家はあろうかという巨大な物体が飛び上がる。

 翼竜——竜の下位種とされる彼らはトカゲにコウモリのような翼を生やしたモンスターで、寒い時期になると人里に飛来しては人や家畜をさらいにくる。

 頑強な鱗は大抵の刀剣や飛び道具による攻撃をものともせず、剣のように鋭い爪は恐ろしいほどの切れ味を誇る。

 その翼竜が、いや、翼竜たちが、手頃な獲物を見つけたとばかりにソールに殺到した!!


 「ヒィッ」

 ソールは恋人に聞かれたら幻滅されるような悲鳴をあげると、ルフにあらかじめ指示されたように少しでも樹々が生い茂る場所へ疾走する。

 間一髪、先ほどまで彼が立ち止まっていた辺りに急降下した翼竜は捉え損ねた獲物に、不満げな唸り声を上げる。

 彼はその様子を木を盾にして唖然と眺めていたが、幸運は一時的なものだと悟る。

 頭上の大木がミシミシと嫌な音を立て始めたのだ。

 どうやら捉え損ねた獲物を探して怒り狂った竜たちは、何度も何度も森にダイブしているようだ。

 追い詰められた小動物は、信じられない力を発揮するという。

 ソールはその小動物さながらにいままでの人生で一番の最高速度を更新する。

 なんとか逃げ回る彼だが、幸運と不幸は表裏一体。

 無情にも樹々は途切れ、見晴らしの良いところに彼は飛び出してしまう。

 前方は崖となっており、選択肢は限定される。

 来た道を戻りかけた彼だったが、大木を踏み砕きながら、二頭の翼竜が前方を遮る。

 呆然と立ち尽くすソールだったが、追い立てられるように崖の手前で立ち尽くす。

 ルディア、ごめん。やれるだけのことはやったよ。

 心の中で愛しい人に詫びる彼だが、同時にこんな時にも関わらず、ルフともっと親しくなりたかったと考えてしまう。

 その思いが通じたのか、もっとも聞きたい冒険者の声が聞こえた。

 「なにしてるんだ、早く崖に飛び込め!!」

 言いたいことはわかるが、それは死ねということではないか。

 今まさに、竜はその強靭な鉤爪をソールに振り下ろそうとしていた。

 逡巡する彼に痺れを切らした声が言い放つ。

 「小僧、全く手間のかかる」

 前方を遮る翼竜と並行するように竜の背に乗ったルフとアルテが現れた。

 ソールはオルテは何か呟いているようだと認識した瞬間、彼女の杖から淡い光が放たれた。

 光の行き先はソールの足元だった。

 何かの衝撃を食らったかのようにソールの足元は砕け散り、彼は悲鳴を上げながらそのまま崖へまさかさまに落下していった。


 「う⋯う・・ん」

 ソールはあまりの 寝心地の悪さに目を覚ましてしまう。どうやら、しばらく意識を失っていたようだと思い当たる。

 彼は寝返りを打とうとして、地面の安定を失いかける。

 「う、うわぁぁ——!!」

 悲鳴を上げるソールにすかさず誰かが腕を差し伸べてきた。

 「翼竜は平坦な場所は少ないからあんまり動くと落ちて死ぬよ?」

 ルフだった。

 必死に腕にしがみつくソールを安心させるようにしっかりその手を握りしめてくれた。

 これでは男女逆転だなと情けないことを考えながら、小さくなった眼下の王都を見下ろす。

 竜の背に乗って冒険をする—— 男なら一度は憧れた夢が現実になっていると感じた彼は一瞬興奮するが、ふと不安に駆られる。

 「この翼竜はさっきの奴らですよね?」

 肯定するルフに問いただす。

 「一体どうやって手懐けたんですか? 急に暴れ出したりしませんか?」

 エルフはクスリと笑うと、

 「オルテが魅了の魔法を使ったんだ。彼女がその気にならなければ簡単には解けないから安心して」 

 右側に視線を走らせるルフに釣られて見やると、別の竜で飛翔するアルとオルテを確認できた。

 アルは右手を上げて応えてくれた。

 ソールは思ったことをなんとなく口にしてしまう。

 「魅了の魔法は人間にもかけれるんですか?」

 「知能の高い生き物の方がよく効く魔術らしいよ」

 その答えにソールは震え上がると、なんとなくオルテを視線で追ってしまう。

 そういえば、翼竜との逃走劇で崖に追い詰められたとき、オルテの魔法で崖に落とされたような・・・

 いや、たまたま竜を攻撃したつもりがソールの足元に命中したのかもしれない。

 そうだ、きっとそうに違いない。

 ソールの視線に気付いたオルテからなんだとばかりに睨みつけられ、彼は慌てて視線を外す。

 「それにしても」

 ルフは呆れた口ぶりで、

 「いくらなんでも、崖に追い詰められたソールの足元を魔法で攻撃するとか、普通しないよね? なんかごめんね。オルテの代わりに謝っとくよ」

 ソールの願望は一瞬にして砕け散った。

 

 


 

 

 

 

 

  



 

 

 

 

 

 


 

 

 




 









 

 

 

 



 

 


 

 


 


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