集いし者たち2
作者のKO-TAです。
勝手ですいませんが前話が短すぎて物足りないかなってことで、大幅に加筆しました。
今回の更新を読む前に前話をすでに読まれた方は、再確認お願いします。
それでは、本編をどうぞお楽しみください。
冒険者。
彼らは冒険者ギルドの管理のもとチームを組み、依頼者の任務を遂行する。
困難なモンスター退治から、国家の依頼で古代遺跡の捜索等、その役割は多岐に渡るが、共通することが一つだけある。
すなわち、どの任務も、常に命懸けということだ。
そしてその任務の難度と達成率は厳格に審査され、ランクというものに振り分けられる。
当然冒険者として成功を納め、ランクが上位の者は名声と富を築いて行く。
ちなみに冒険者のランクは冒険者ギルドが管理し、そのランクはSランクを筆頭にA〜Eと六段階に分かれるとされるが、その枠外にある者はいわゆる見習い冒険者とされる。
それでは、《王国連合》はどうか。
比類なき冒険者チームとして王国中にその名を轟かせているが、その活躍は眉唾ものといい切るものが多い。
例えばソマニュー諸島の大噴火を祈祷により鎮めたとか、あるいは神話の時代より生きる神竜を馬車がわりに大都市に凱旋したとか、はたまたオルグ公国に押し寄せた悪魔の大群をねじ伏せてその首魁になりおおせた等々、にわかには信じ難い活躍ばかりである。
噂によると《王国連合》のランクは存在しないはずのトリプルSだという者もいるが、真相は不明である。
ルフからアルと呼ばれた赤髪の青年に、
「あなたが神官のアルシオン様ですね。ルフィーンロゥ様共々、大怪我のわたしを助けてくださりありがとうございます。わたしはドラン村のソールと申します。」
赤髪の青年は異性でなくともとろけそうなほどの微笑みを浮かべると、
「感謝には及ばない。《光の神エルガネード》の導きがあればこそだ。見たところ骨折と打撲が酷かったから、神の御助力を乞うたというわけさ」
ソールは村の神官の言葉を思い出す。
《光の神エルガネード》——光と正義の神にして、原初より存在する《神々の導き手》
神々の中にあって、最も尊き者とされる最高神の名前。
周辺国家において、最も信仰者が多いといわれる。
「では《神々の導き手》に感謝を」
ソールの言葉に満足したアルに割り込むように、三人目の女が口挟む。
「まわりくどい挨拶はいい。要件をさっさと話すがいい」
美しい女性だった。
ルフが夜の闇をを照らす月だとすれば、彼女は夜の漆黒そのものだろうか。肩まである黒髪は同性ならため息をつくほどに滑らかで美しい。
しかし美しさより顕著なのはその全身から発する威圧感だろうか。
美人は近寄り難いといわれるが、彼女のそれは相手が逃げ出すレベルだろう。
睨みつけるように話す彼女に対し、ソールは思わず助けを求めるようにアルを見やる。
青年神官はやれやれとばかりに肩をすくめると、
「オルテ、彼は病人なんだ。もっと優しく話してくれないか?」
オルテと呼ばれた女は鼻を鳴らすと、
「わたしはオルテミラ。小僧、要件をさっさと話せ。わたしたちを探していたのだろう?」
全く態度がかわっていない。
ソールは、オルテミラだったら結婚したら、王様だって尻に敷きそうだなと失礼なことを考えながら、
「どうして探しているのがわかったんですか?」
オルテはやれやれとばかりに、
「たまたま冒険者ギルドからが門前払いした小僧がいると聞いてな。そこのエルフが迎えに行ったというわけだ」
彼は王都に到着すると、真っ先に冒険者ギルドに顔を出して《王国連合》の所在と仲介を依頼しようとした。
だが、ギルドの受付に一瞥されるなり問答無用で追い出されてしまった。
まあ、こんなみすぼらしい格好では金がないのはあからさまだし、関わろうとしないのも無理はないだろう。
実際、金をすられた彼は無一文なので反論のしようがない。
それでもここまできてやれるだけのことはしないと、村のみんなに申し訳が立たない。
「助けていただいた上にこんなことを申し上げるのは、厚かましいとはわかっています。どうか俺の故郷を救ってください」
「いいよ」
快活にアルが応える。
内容も聞かずにあっさり承諾する彼にソールは唖然とする。
「ですが俺は王都に着いてすぐに荷物を盗まれてしまい、報酬を支払うことができないんです。村に帰れば、みんなと相談していくばくかのお礼はできると思うのですが」
「かまわないさ。困った者を助けるのは光の神の信徒の務め。ここで見放したら神に申し開きができない」
宣言する神官に対してソールは感激の渦に心を飲み込まれそうになる。
都会にも、こんな素晴らしい人はいるのだと。
「ちょっと待て。お前はそうやっていつも勝手に先走るな」
冷たい声で言い放ったのは予想通りオルテだった。
「君はそうやっていつも横槍を入れる。困っている人がいるなら助けるのは当たり前だろう。神に祈りいい加減改心したまえ」
オルテはせせら笑うように、
「生憎、信仰バカのお前と違い、わたしは祈る神を持たない。大体お前は——」
「ストップ! そこまで!!」
それまで傍観していたルフが呆れ果てた声で割って入る。
「とりあえずソールの話を聞いてからでもいいだろう」
「だがボランテアをする気はないぞ」
「そうはならないと思うけどね」
預言者のように意味深にエルフは語る。
「とりあえず、話を聞かせてくれるかな?」
悪魔と呼ばれる彼らは、神官たちによると人とは違う異界より定期的に現れ、人に害をなすとされる。
彼らは人の形に似ているが顔がなく異臭を放つ粘液に塗れていたり、オオカミのように四足歩行をするが眼球は六つもあり炎で攻撃する等、その姿形は多岐に渡る。
その忌むべき存在がソールの生まれ故郷であるドラン村の打ち捨てられた神殿に、住み着いたことから端を発する。
ことの起こりは農夫の一人が森に木材を採取に行ったきり、帰還しなかったことから始まる。
不安げな家族に懇願された村長は村の同志を募ると、行方不明者の捜索にかかるが結末はある意味最も悲惨ともいえた。
通常森で行方不明になる原因としては、モンスターか獣に襲われるのが一般的である。
実際、農夫もその例に違いなかったのだが、遺体が発見されると同時にその捕食者と捜索者が遭遇したのが事態をより深刻にさせた。
結論をいうと捜索者は悪魔と呼ばれる忌むべき存在にほとんどが生を奪われた。
ソールと、後、数人を除いて。
「お願いします。村にも神官様はいますが、田勢に無勢、どうか皆様のお力をお貸しください」
必死に懇願するソールを同情的に見守る赤髪の神官とは対照的に、黒髪の女はひどく冷めた声で、
「馬鹿馬鹿しい。そんな遠方へタダ働きに行けるか」
村に戻れば謝礼は出来るとはいったものの、実際はそれすらも怪しい。
ほとんどの村の余った資産はソールが持ち出し、託され、そして失ってしまったのだから。
それ以前に、資金を準備できたとしても、それでは次の冬は越せないだろう。
ルフは申し訳なさそうに、その澄んだグリーンの瞳を曇らせる。
「ソール、すまない。わたしたちのチームは全員が賛同しないと依頼を受けないルールなんだ」
「待て、わたしは依頼を受けないとはいっていない」
辻褄が合わないオルテにアルとソールが疑問符を投げかける。
「それはどういうことだ、オルテ」
問いただすアルを無視して、
「その前に、小僧わたしの前に来い」
傲慢に言い放つ黒髪の女の機嫌を損ねるわけにもいかず、ソールはいわれた通りにその前に立つ。
オルテはそっと手を差し出すと、ソールの頬に指を添える。
添えられた指は冷んやりとしていて、どこか心地よい。これほどの美女に触れられたら、動揺しない男はいないだろう。
思わず赤面したソールは心の中で故郷の恋人に詫びる。
「なるほどな」
しばらく考え込んでいたオルテは、とんでもないことを言い放つ。
「小僧、謝礼はお前の身体で払え。みんな構わぬな?」
ソールは絶句した。




