表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王国連合  作者: ko-ta
5/5

集いし者たち4

「間も無くドラン村だな」

 翼竜を並行して飛ばすアルの声が、不思議と風の音に消されることなく一同の耳に届く。

 神官が行使する魔法は祝福と呼ばれるが、これもその一つなのかもしれない。

 普段のソールなら、その辺りもあるいは気にしたかもしれないが、今はそれどころではなかった。

 なぜなら、高所に慣れない彼を心配したルフが、背中に捕まることを承諾してくれたのだ。

 エルフの髪は朝日に一際輝いて、さながらに太陽を顕現したかのようだった。

 異性どころが、同性でもうっとりしてしまうのが普通だろう。

 この一瞬だけは故郷の恋人のことも忘れていた。


 翼竜に騎乗したままドラン村に近寄ると、パニックになりかねない。

 一同は地上の人となり、村の入り口に立っていた。

 彼らの目の前にはどこにでもあるような田舎の風景が広がっている。

 但し、いつもなら、農作業に勤しむ村民たちをチラホラと見かけるはずだが、今は人影が皆無のようだ。

 辺境の村とはいえ、これは流石に異常だろう。

 ソールは、恋人のルディアを始め、顔馴染みの村人たちの顔を思い浮かべながら、不安で胸を締め付けられる。

 一刻も早く恋人の元へ走り出そうとする少年を宥めるように、ルフに押し留められる。

 「とりあえず、ソールは落ち着くんだ。一人で飛び出したら、君なんか悪魔の格好の獲物だろうね」

 「まあ、この辺りにはほぼ悪魔はいないようだがな」

 赤毛の神官は何かに確信したかのように言い放つ。

 ルフはしばらく聞き耳をたてるように押し黙っていたが、やがて何かに語りかけるように呟く。

 「‥‥ああ、わかった。ありがとう」

 それから一同を見渡すと、

 「悪魔の大半は森の遺跡にいるようだが、一部は村を徘徊しているね。ここは二手に割れないかい?」

 ソールは驚愕する。ルフはこの辺りの地理には疎いと言っていたはずなのだが、遺跡のことをなぜ知っているのか。

 そもそも、悪魔たちの位置情報把握しているようだがそれいかなる手段によるものか?

 だが、そんなことを気にしている暇はない。早く恋人や知人の安否を確認しなくてはならないだろう。

 「私は遺跡へ行かせてもらう」

 少年の思考を妨げるようにオルテは宣言する。

 「着いてくる者は狂信者以外ならば誰でもよい」

 意味ありげにアルを睨みつける。

 「また善なる神々に反した行為を行うつもりなら、容赦しないぞ?」

 ソールの知らない何かが原因でオルテとアルの間で不穏な空気が漂い始める。

 エルフはやれやれと肩をすくめる、

 「二人とも、今はそんなことを話している場合じゃないだろう?」

 神官に諭すように、

 「大体、最初にこの依頼を受けたのはアルなんだから依頼主を守るのは当たり前だろ? 君はソールについていてあげるといい」

 「仕方あるまい」

 赤毛の神官は渋々同意する。

 とりあえず、問題は片付いたようだ。


 ソールはアルを伴って、恋人であるルディアの住居へと急いでいた。

 家族を早くに亡くした彼にとって、婚姻の約束を交わした彼女とその家族は、身内ともいうべき存在であり、元気であることを確認するまでは他のことは考えられなかった。

 村は大して大きくはないので、10分もかからずルディアの家に到着するが、彼は言葉を失ってしまう。

 建物は骨組みだけをかろうじて保っているだけで、見るも無惨な状態だったからだ。

 恐ろしい結末を想像して、硬直したソールに、赤毛の青年は冷静に語りかける。

 「どこかに避難所みたいなものはないのか?」

 アルのいうとおりだった。

 何か、非常事態が起こった時は、村民の避難所として、教会に集合するようあらかじめ定められていたのだ。


 二人は教会へ急いでいた。

 道中、村の建造物が焼けこげていたり、押しつぶされるように倒壊しているのをみて、ソールの不安は増すばかりだった。

 視界の先に、教会が見えた辺りで少年は驚愕する。

 教会を禍々しい存在が、囲んでいたためだ。

 複数体の漆黒の粘体状の悪魔は、教会への侵入を試みている。

 しかし、あらかじめ神官によって施された結界によるものだろうか。ある一定の距離まで近寄ると、光輝く壁に妨げられて目的を達せずにいる。

 教会への侵入をを妨げられて、毒霧を全身より噴出している様は、粘体の悪魔の不満を現しているようだ。

 粘体の悪魔の群れの中に二足歩行の悪魔がいるが、こちらは全身を数えきれないほどの目玉で覆われた緑色である。

 それぞれの眼球は悪意に満ちた眼差しを四方八方に飛ばしており、こんな時でなければ決して近寄りたくはない。

 複数の視界を持つ眼球の悪魔は、トンボでいう複眼的な能力を有しているようだ。

 人間たちの接近に真っ先に気付いのだろう。さながら断末魔のような奇妙な声をあげながら、ソールたちに接近してきたではないか。

 ただの凡人であるソールは攻撃と呼べる手段はなく、ただただどうしようか逡巡してしまう。

 それどころか、〈王国連合〉の面々を探すきっかけにもなった森での悪魔たちとの遭遇を思い出すと、恐怖がフラッシュバックして身体が硬直してしまうのだった。

 その時だった。

 後方から眼球の悪魔の耳障りな奇声もかくやという絶叫ともいうべき大声をあげた者がいた。

 事態を飲み込まず、戸惑うソールを置き去りにして、白刃を振り回したアルだった。

 普段の理知的で穏やかな人柄をかなぐり捨てた神官は、叫び声というよりは眼球の悪魔をも凌ぐ唸り声をあげながら、言い放つ。

 「くそったれの穢らわしい悪魔め! すぐに滅してやる!!」

 ソールはアルの大声に悪魔以上の恐怖を感じで震え上がる。

 言葉使いや態度ではなく、その人格の豹変ぶりに、ただならぬものを感じ取ったためだ。

 特に、その目付きは、何かに取り憑かれたような狂気を感じさせる。その美しい外見との対比がより一層違和感を感じさせ、気の弱い者なら、卒倒するくらいの豹変ぶりだった。

 まさに狂戦士と化したアルは、叫び声を、そして時折笑い声ともいうべき奇声をあげながら、悪魔たちを一瞬にして葬り去った。

 ソールは、とりあえずは危険は去ったのかと混乱と安堵の入り混じった複雑な感情の中で、自分が動揺していつのまにか尻餅をついていることに気付く。

 アルはというと、悪魔たちを屠ったのは良いのだが、なぜかそのまま血の滴る剣を抜き放ったまま、ソールに近寄ってくるではないか!

 ソールは、嫌な予感を覚える。

 血走った両目とまさに狂気ともいうべき感情をむき出しにした神官を前に、なんとか声を絞り出すと、

 「アルさん、敵はもういません! 落ち着いて!!」

 しかし、少年は神官の次の言葉に凍りつく。

 「ソール、そこを動くな!」

 そのまま、剣で切りつけてくるではないか!

 「うわあぁぁー!!」

 ソールは、身に迫る危険を前に絶叫をあげるが、次の瞬間、自分でも信じられない行動を起こす。

 人間、死ぬ気になれば、意外な実力を発揮するものだが、ソールはアルの剣から放たれた一閃をかろうじてかわすことに成功したのだ。

 「チッ!」

 神官は、普段ではありえぬ舌打ちをすると、

 「忌々しい悪魔め、動くな!!」

 そのあとは意味不明なことを叫びながら、更なる攻撃を加えてきた。

 ソールはただの農民であるので、一流の戦士の腕前というものを推し量ることはできないが、流石にこれはかわしきれないと悟ると、覚悟を決めて、目を閉ざすしかなかった。


走馬灯というのだろうか?

 ソールは加速する思考の中で、色々な昔のことを思い出しながらも、人生なんてものは、ちょっとしたきっかけで失うものだなと、最後に考える。

 いや、最後のはずだった。

 だが、いつまで経っても剣による激痛は起こらず、訝しがりながらも両目を開いてみるのだぅた。

 目の前には、いつもの神官がいて、穏やかに少年に話しかける。

「悪魔だけ、剣で切り伏せた。君は危うく悪魔に身体を奪われかけたんだ」

 まじか‥‥

 ソールはその言葉を聞いて、よくわからないままに安堵からか涙を流していた。

 その時、黒髪の傲慢な魔法使いが神官に言い放っていた言葉を思い出す。

 「着いてくる者は狂信者以外ならば誰でもよい」

 ああ、このことなのかとソールは納得するのだった。



 作者です。

 随分、更新が空いてしまい申し訳ありません。

 あんまり空きすぎて、存在を忘れられてそうですね。

 不定期かもですが、更新頑張れたらなと思っています。

 よろしくお願いします。












 








 



 

 



 

 

 

 






 


 


 

 


 


 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ