↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魔大戦 近所の悪魔殺し(デビルスレイヤー)【七章連載中】  作者: 村本 凪
胡蝶が舞うは夢か現か

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

470/509

知っているゆえ如何様にでも

 通い慣れたダンタリアの生み出した大図書館。その中では翔が麗子との訓練を再現するかの様に、ダンタリアを囲って擬井制圧(ぎせいせいあつ) 曼殊沙華(まんじゅしゃげ)を発動していた。


 ダンタリアの容姿は、紫色の魔女服に身を包んだ少女。さらに、普段の戦闘方法も遠距離主体であるからして、すでに勝負があったかに思える。


「ふむ。麗子から簡単な説明は受けていたけど、確かにこれは重症だね。魔力の無駄使いはいつもの事だから置いておくとして。少年の美点である戦いを前にした集中力が、すっかり結界に向いてしまっている」


「んなこと言ったって......人間様の意識は、そう簡単に変わらねぇんだよ......!」


 しかし、余裕の表情で軽い分析を行うダンタリアは、結界に向かって苛烈な攻撃を繰り返していた。結界外に配置された大小様々な光のオーブを模した使い魔。それらが自己判断で多様な魔法を発動し、結界の各所から悲鳴を上げさせていたのだ。


「元々少年は器用な性格じゃ無いんだ。頭で優先順位を定めておかないと、余計な迷いや力みに繋がる。ほら、今だって使い魔の主は私なんだ。結界を気にするよりも、私を無力化する方が何倍も簡単な筈だよ」


「分かってるっての......! けど、それが出来れば苦労はしねぇんだよ......!」


 麗子との訓練では、結界の特性が機能しない状態を作り出された。そして、ダンタリアとの訓練では、結界の特性を真正面から突破されてしまう所から始まった。


______________________


「まずは結界を打ち破る準備からだね」


 そう言って、結界内でダンタリアが始めたのは使い魔の生成。


 体外に放出した時点で霧散する筈の魔力を維持出来ている点や、魔力のみで肉体を構成している使い魔が存在を維持出来ている点。そのたった一つのアクションだけでも、翔の中では様々なツッコミが生まれる事となった。


「ん? あぁ。まず体外に魔力を放出しているんじゃなくて、体内で使い魔を作り出して切り離していると言った方が正しいね。そして、魔力のみで構成するから霧散するんだ。ならば、多少手間でも仮初の肉を用意してしまえば、少年の結界は魔力を排除出来なくなる」


 そして、翔のツッコミに対するダンタリアの返答は、まさに結界の穴を突いた対応。


 緩やかな同盟関係を結び、翔の魔法には様々なアドバイスを送ってきたダンタリアだ。その特性は十二分に理解しているし、理解してしまえば対応など容易い話だ。


 知識の魔王の名は伊達じゃない。相手の繰り出す手が分かっていれば、必ず対策となる魔法を用意出来る。その究極と言うべき後出し性能によって、翔の結界は無力化されてしまったのだ。


 これまで擬井制圧 曼殊沙華を真正面から突破してくる悪魔がいなかった。故に翔は、この魔法が多くの悪魔への絶対的な対抗手段に成り得ると勘違いしていた節もあった。


 しかし、それらはあくまでも、運良く相性差で勝っていただけ。相手の持ち得る手札の中に、結界の対抗手段が存在しなかっただけなのだ。


____________________________


 ダンタリアの鮮やかな対策は、翔の危機感を煽るためでもあるのだろう。一つの魔法を過信しすぎれば、必ず足元を掬われる事になると。だが、その事実を反省する余裕は、翔には無かった。なぜなら、オーブが結界外に脱すると同時に、これでもかと魔法を連発してきたからだ。


「こっちの強度が......あっちもヒビ割れがやべぇ......!」


 無機質な発光球体であるオーブには、表情も無ければ魔法の予備動作も無い。ただ準備が整えば魔法が発動し、次の発動まで静かに準備を整え始めるだけ。これでは結界のどの部分が危険なのかが、物理的に崩壊が始まるまで分からない。


「それに......! お前、そんな動けたのかよ......!?」


「見た目に騙されたかい? でも、終始私は知識の魔王であると名乗っていた筈だよ? 内向きの変化魔法はもちろん、武道の心得だって持ち得ているのが当然じゃないかい?」


 加えて、自身を狙う様に挑発したダンタリアが、これまた曲者だった。


 翔の木刀による攻撃を、ダンタリアは綺麗に躱して衣服にすら届かせない。そして、少しでも彼の攻撃が大振りなると、攻撃の合間を縫って至近距離まで近付いて来るのだ。


「なっ!?」


 いくら近距離戦を得意とする翔と言えど、木刀のさらに内側に潜り込まれてしまってはまともな攻撃が行えない。どうにか距離を取ろうとする翔だが、彼が下がる分だけダンタリアは微笑みながら距離を詰めてくる。


「ほら、まさに今の私は、少年が相手取る事になるだろう変化魔法使いだよ? たった一体の悪魔に、これだけ時間をかけていいのかい? その分だけ、残る悪魔達は結界の破壊に集中出来るんだよ?」


「くっ......! ならっ!」


 次の瞬間に翔の背部から、無機質な翼が姿を現した。そして、一瞬の内に魔力を充填すると、その噴出口から大量の魔力を放出させる。


「おっと」


 さしものダンタリアとて、至近距離からの魔力放出は危険と判断したのだろう。大きく後ろへステップを踏むと、翔から一気に距離を取る。


「よし! これで......!」


 翔としては、これで戦いの仕切り直しが出来ると考えていた。けれども、ダンタリアが言う通り、彼は決して器用な人間ではない。


「目の前へ集中出来るようになったのは喜ばしい事だけど、さっきまで注意を割いていた問題を放り投げてしまっていていいのかい?」


 ダンタリアが自身に目を向けさせた理由、これまで翔が戦いに集中出来なかった理由を考えれば、彼女に下がられた時点で敗北は決定していたのだ。


「えっ? あっ......」


 翔が周囲を見渡すと、結界の外側に設置されたオーブの輝きが何倍にも増していた。そして、ダンタリアは気が付いてからの対応を許すほど優しくない。次の瞬間には各所のオーブから、これまでの比にならない火力の魔法が発動する。


「まぁ、取り返しの付く失敗さ。休憩を挟んだ後、反省会に移ろうじゃないか」


 弱った部分をどうにか補強して守っていた結界が、想定を超える火力に耐えられる筈が無い。オーブから放射された魔法は結界を粉々に打ち砕き、形すら残らないほどに崩壊させてしまった。


 後に残されたのは、地面から伸びる僅かな基礎部分だけ。こんなものが悪魔を押し込める牢獄になる筈が無い。こんなものでは悪魔の侵攻を押し留められない。


「......クソッ!」


 翔が怒りを紛らわせるように、木刀を地面へ叩きつけた。その光景は敗北の証明であり、日本が夢の国に飲み込まれる事への決定事項に他ならなかったのだから。

次回更新は6/8の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。