暴かれた秘密
それからの数日間、エナはまるで魂が抜けたかのように過ごした。
セシルからは、翌日に「無事に彼と会えたわ! 本当にありがとう、エナは私の命の恩人よ!」という、喜びの弾んだ手紙が届いたが、エナはそれに短い祝辞を返すのが精一杯だった。
ガイヤが愛しているのは、三年前の自分。
けれど、彼が求婚しているのは、侯爵令嬢のセシル。
この歪んだ三角関係の中で、エナはただ一人、秘密の重さに押し潰されそうになっていた。
一週間後。事態は急展開を迎える。
ヴィルロワ子爵邸の応接室に、青ざめた顔のセシルが飛び込んできたのだ。
「エナ! 大変なことになってしまったわ!」
セシルは部屋に入るなり、エナの手を握りしめてガタガタと震えた。
「どうしたの、セシル? 落ち着いて」
「落ち着いてなんていられないわ! レオンハルト公爵家からの縁談の件よ。お父様がね、先方から『セシル嬢の体調はいかがか。あの雨の日以来、心配している』というお手紙をいただいたの。でも、私はあの日に風邪なんて引いていなかったし、お父様には『その日は会えなかった』と言い訳していたから……お父様、不審に思って私を問い詰めたのよ!」
エナは心臓が止まるかと思った。
「それで……どうなったの?」
「私、怖くなって、つい白状してしまったの……。あの日はエナに身代わりになってもらったって。お父様は激怒して、今、レオンハルト公爵邸に謝罪に向かっているわ。身代わりを立てて騙すような真似をしたのだから、この縁談は破談よ。それはいいの、私は嬉しいけれど……でも、エナ、貴女にまで迷惑が及ぶかもしれないと思って……!」
セシルは涙を流してエナに謝罪した。
エナは、セシルを責める気にはなれなかった。いつかは露見する嘘だったのだ。ただ、ガイヤがどれほど傷つくだろうかと思うと、胸が張り裂けそうだった。彼は三年間、あのハンカチの少女を想い続け、ようやくその相手と結ばれると思った矢先に、すべてが嘘だったと知らされるのだ。
「……セシル、貴女は悪くないわ。元々は私が身代わりを引き受けたのが原因だもの」
「エナ……」
その時、応接室の扉が激しく叩かれた。
家令が血相を変えて入ってくる。
「エナお嬢様! 大変です、レオンハルト公爵家の……ガイヤ様が、当家に直接お見えになりました! もの凄いご様子で、お嬢様への面会を求めておられます!」
「えっ……!」
セシルが悲鳴を上げる。
エナは、ついに覚悟を決めた。彼が怒るのも当然だ。騙した罪を、自分がすべて被ろう。
「セシル、貴女は奥の部屋に隠れていて。私が、すべてをお話しするわ」
「でも、エナ……!」
「大丈夫よ。行って」
セシルを隣室へ避難させると、エナは深く息を吸い、背筋を伸ばした。
「ガイヤ様を、ここへ通して頂戴」




