第3話 その瞬間、世界は変わった
男性「失礼致します」
男性はそう言ってエルンの隣に、品良く静かに座った。
男性は姿勢正しく、両手を膝の上に乗せて前を向いて座っている。
エルンはそんな男性はお構い無しに読書を続ける。
そこには暫く無言が続いた。
無駄な身動きをしない男性の頭に、蝶々が三匹止まっている。
その内の一匹が男性の鼻の頭に移動した時だった。
エルンがポケットから懐中時計を取り出し、時間を確認した。
そろそろ昼近い時間だった。
エルンはバスケットの蓋を開けて中から紙に包まれたサンドイッチを取り出した。
それを自分と男性の座っているベンチの間に置いた。
エルンは隣に居る男性に話しかけた。
エルン「もし良ければご一緒にいかがですか?」
男性「ご配慮いただきありがとうございます。ですが私には必要ございませんので、お構いなく」
エルン「分かりました」
エルンはサンドイッチの包み紙を広げて、ゆっくり食べ始める。
離れた所にある丸い花壇の花を眺めたりしながらエルンは昼食の時間を楽しんでいる。
今の時間を楽しんでいるエルンに対し、唐突に男性から話しかけてきた。
男性「少し、お話させていただきたいのですが、宜しいでしょうか?」
エルンはサンドイッチを食べながら返事をする。
エルン「いいですよ」
男性「自己紹介からさせていただきます」
男性は軽く咳払いをした。
男性「私は、ルドアード・マントール四世と申します」
エルン「四世というと、二世とか三世とかは…」
ルドアード「祖父と父ですが私が幼いころに他界致しました。あまり記憶にございませんが」
エルン「す、すみません」
少しの沈黙があった。
気まずくなり今度はエルンから話を切り出した。
エルン「私はエルン・ターリス。もうすぐ十六歳なの。家は近くと言えば近い方かもしれないわ。貴方は何処から来たの?」
ルドアードは遠くを見つめて話す。
ルドアード「私の世界も近くと言えば近くでございます。この世界にとても似ていて、それは美しいところでございます。ですがある時から私の世界は変わり果ててしまいました。水や空気は淀み、空は黒い雲で覆われ、草木は全て枯れ果ててしまいました。私はその原因を究明し、元の状態に戻す方法を探していたのです。そして、偶然たどり着いたのがこの世界なのです」
エルン「じゃあ貴方は違う世界から来たの?」
ルドアード「左様でございます」
エルンは一瞬の出来事に驚いた。
エルン「えっ!?」
その瞬間周りの世界が変わった。
今まで綺麗に整備された公園に居たが、空は薄暗く、木は枯れ果て、花壇や噴水なども割れて、無残な状態の世界になっていた。




