第1話 午後三時の約束
とても広い公園の噴水の所で拾われた赤ちゃんは、拾い主のターリス夫妻の手によって、自分達の子供として大事に育てられていた。
あれから随分時が過ぎて、エルンは15歳になっていた。
エルンは好奇心旺盛で、とても明るく活発な女の子だった。
父親のオルンと母親のエリルには実の子供はいなかった為、二人はエルンに心からの愛情を注いで育てていた。
オルンとエリルが二人きりで、自宅のソファで寛いでいる。
二人は楽しそうに話している。
オルン「ねえエリル、もうすぐエルンの誕生日だけど、今年はどんな感じになると思う?」
エリル「そうねえ、去年は大変だったものね、エルンが自分で料理するって言って、オーブン焦がしちゃうし」
オルン「あの焦げ落とすの大変だったんだよ。なかなか落ちなくて、ヘラを持ってる手が痛くなるし」
エリル「ホントにあの子には困ったものよ。でもみんな、いい思い出よね」
すると二階から。
エルン「聞こえてるよー!」
オルンが大きな声で言う。
オルン「悪気は無いんだ!ごめんよ!」
すると二階から走る音がする。
ドタバタと階段を降りてくる。
親が寛いでいる部屋にエルンが勢い良く現れた。
オルン「どうした?」
エルンは心から笑顔で言う。
エルン「今度一人で公園に行ってもいいかな?公園で本が読みたいの!」
オルン「でも、あの公園には最近、不審者が現れるって言うし」
エリル「そうそう、よくは知らないけど、黒いタキシードを着た人で、何だか怪しい感じらしいのよ」
エルン「でもその人が危ない人かなんて分からないんでしょ?それに、見た目だけじゃどんな人かなんて分からないわよ」
少し間を置いてオルンが言った。
オルン「うん、もうすぐ16歳だし、そろそろいいか。じゃあこれからは何でも、自分で考えて行動するんだ。いいね」
エルンは父親に言った。
エルン「ありがとうお父さん!」
エリル「でも、やっぱり心配だから、少し条件があるわ」
エルン「え、何?」
エリルはソファから立ち上がり、近くの棚の小さな引き出しから懐中時計を取り出した。
そして、それをエルンの手に持たせる。
エリル「これは私がオルンと結婚する時におばあちゃんが持たせてくれた物なの」
エルン「え、それを私に?」
エリル「公園に行く時に持って行きなさい。それを見て午後の三時になったら戻って来るの。あとお昼は一度帰って来てもいいし、お弁当を持っていってもいいから、好きになさい」
エルンは母親に言った。
エルン「ありがとうお母さん!」
オルン「じゃあ今日はあまり時間が無いから、明日からにしなさい」
エルン「うん、ありがとう」
エリル「気をつけるのよ」




