第11話 名前の無いお姉ちゃん
ノクシアがステージの上からエルン達に言った。
ノクシア「いらっしゃい。よく来たね。上がってくんだろ?何も用意してないけど。早く上がりな」
そう言ってノクシアは、ちゃぶ台の上の物を片付け始めた。
タールがノクシアに少しだけ小さな声で聞く。
タール「あの人たち誰?」
ノクシア「タールのお姉ちゃんと付き添いだろ」
タールは驚きもせず、淡々と聞く。
タール「名前は?」
ノクシア「お姉ちゃんに名前は付けて無いよ。付き添いの方はルドアードだよ、前に何回か来た事あるんだよ」
エルンとルドアードはステージの階段を上がって来る。
そのままステージに入ろうとすると。
ノクシア「ああ、待ちな!靴脱ぐんだよ!此処は土足はダメだよ!」
エルン「あ、はいはい」
エルン達は靴を脱いでステージに上がった。
ノクシアがエルンの傍で小声で聞いてきた。
ノクシア「名前なんていうの?」
エルン「エルン」
ノクシアがタールに伝える
ノクシア「お姉ちゃん、エルンって言うんだって。いい名前だね」
タール「ま、座りなよ。お母さん、座布団」
ノクシア「あいよ。座りな」
ノクシアがエルン達の前に座布団を敷いた。
エルンとルドアードは座布団の上に座る。
四人は丸いちゃぶ台を囲んで座っている。
ノクシアが急須でお茶を淹れる。
エルンが初めての日本茶を、不思議そうに見た。
ノクシア「熱いからね!」
エルンにそう言うと、エルンはビクッと驚いた。
その時、タールがエルンに話しかけた。
タール「エルン」
エルン「何?」
タール「俺はインセイン家の長男なんだ、だからうちの大事な跡取り息子なんだ」
エルン「だから?」
タール「あ、いや。それだけだけど」
ノクシア「タールはうちの跡取りだから、この家を継いでくれるんだよね?それにお母さんが死んじゃったら家のお墓の面倒も見てくれるんだもんね?」
タール「う、うん。まあね」
その後会話が途切れたのでノクシアがお茶を勧めてきた。
エルンはノクシアの真似をして湯呑みを持つ。
そのまま熱いお茶を少し啜る。
エルン「美味しい」
ノクシア「そうでしょ?お茶は良いの買ってるから、美味しいんだよ」
また少し無言が続いて。
ノクシア「で、今日は二人で何の用だい?何か用事があって来たんでしょ?」
エルンはストレートに言う。
エルン「宝珠を返してほしいの」
ノクシア「だと思った。でもダメだよ、あれは家の宝なんだから」
タール「宝珠って何?」
ノクシア「タールには関係無い話だからいいんだよ。カードで遊んでな」
タール「あ、うん」
ノクシア「とにかくダメだよ。あれは家のだから」
エルン「それって私のなんでしょ?なんで勝手に持っていくの?それに私を捨てた理由は何?それも教えてほしいんだけど!」
ノクシアは少し太々しくなる。
ノクシア「エルンには分からないよ、私の気持ちなんて」
ゆらゆらと湯呑みの湯気が、静かに揺れていた。




