第5話 神武東征と、薄すぎる天皇たち
今回は神武東征です。
九州から大和へ進み、鳥に案内され、豪族を倒し、初代天皇が誕生します。
その後しばらくは記述が急に薄くなります。古事記編集部、たぶん資料不足です。
第六章 ~ 神武東征 ~ 初代天皇のロードムービー ~
カムヤマトイワレビコ(以下、神武)は日向(宮崎)にいた。
ある日、兄の五瀬命と相談した。
「この国の中心はもっと東にあるはずだ。東に行こう」
「いいね、行こう」
ノリが軽い。
こうして神武の東征が始まった。軍を率いて九州から東へ。
途中、各地の豪族に歓迎されたり戦ったりしながら進む。
問題が起きたのは浪速(大阪)に着いたとき。
待ち構えていたのは登美能那賀須泥毘古。名前が長い。地元の有力者である。
激戦になった。兄のイツセが矢を受けて負傷。
「くそ……太陽の子孫なのに、太陽に向かって(東に向かって)攻めたのがまずかった……」
冷静な分析をしながら、イツセは傷がもとで死亡。
神武は方針を変えた。
「回り込んで、東から西に攻めよう。太陽を背にして」
紀伊半島をぐるっと迂回。熊野から攻め上がるルートを取った。
第七章 ~ 熊野の森 ~ 毒気で全滅しかけて鳥に救われる ~
熊野の山中は過酷だった。
巨大な熊(実は神)が現れ、神武軍は全員意識を失った。
そこに一人の男が駆けつけ、一振りの太刀を神武に差し出した。
「高倉下と申します。夢でアマテラスとタケミカヅチから『この剣を届けろ』と言われまして」
物流が夢経由。
太刀の力で全員が目覚めた。この剣が布都御魂である。
だが熊野の山道は複雑で、進めない。
するとアマテラスが遣わした八咫烏が現れた。三本足のカラス。
「こっちだよ」
ナビゲーション開始。
八咫烏の案内で山を越え、吉野を通り、ついに大和の地へたどり着いた。
余談だが、この八咫烏は後の世でサッカー日本代表のエンブレムになる。カラスも出世したものである。
第八章 ~ 大和平定 ~ 策略と歌と、ちょっとした虐殺 ~
大和に入った神武だが、敵はまだ多い。
まず兄師木・弟師木を倒した。
次に兄猾・弟猾兄弟が待ち受けていた。
兄の方は罠を仕掛けて神武を殺そうとしたが、弟が裏切って密告。兄は自分の罠にかかって死亡。
自爆。
そして最大の敵、再びナガスネビコ。
ナガスネビコは自分が仕えている神・饒速日命もまた天津神の子孫だと主張した。
「俺の主君も天から来たんだが? お前だけが正統じゃないだろ」
なかなかの正論である。
しかしニギハヤヒ本人が「この人が本物っぽい」と神武側に寝返り、ナガスネビコを殺した。
主君に裏切られて死亡。 一番かわいそうなやつである。
こうして神武は大和を平定し、橿原宮で即位した。
初代天皇、誕生。
即位後、美人の伊須気余理比売を皇后にした。
出会いのきっかけは「川で見かけて可愛かった」。
この一族の嫁の選び方、初代から一貫してブレない。
第九章 ~ 中間の天皇たち ~ 暗黒のダイジェストゾーン ~
ここから数代の天皇が続くのだが、古事記の記述がびっくりするほど薄い。
第二代・綏靖天皇:兄を殺して即位。以上。
第三代・安寧天皇:即位した。以上。
第四代・懿徳天皇:即位した。以上。
第五代・孝昭天皇:即位した。以上。
第六代・孝安天皇:即位した。以上。
第七代・孝霊天皇:即位した。以上。
第八代・孝元天皇:即位した。以上。
第九代・開化天皇:即位した。以上。
手抜きか?
これを「欠史八代」という。歴史学者の間では「実在しなかったのでは」と言われている。
古事記編纂者も書くことがなくて困ったのだろう。気持ちはわかる。
第十章 ~ 崇神天皇と垂仁天皇 ~ やっと仕事する天皇が出てきた ~
第十代・崇神天皇。ようやくまともにエピソードがある天皇。
在位中に疫病が流行り、人口が半分になるという大惨事が起きた。
原因を占うと、大物主神が怒っていた。
「俺を祀る子孫が冷遇されてるんだが?」
大物主の子孫・意富多多泥古を探し出して神主にしたところ、疫病がぴたりと止んだ。
神、わりと自己主張が激しい。
続く第十一代・垂仁天皇の時代には、面白い話がある。
皇后・沙本毘売命の兄・沙本毘古命が反乱を起こした。
サホビコは妹に短刀を渡して言った。
「天皇が寝ているときに刺せ」
サホビメは短刀を持って天皇の寝所に行った。天皇は膝枕で寝ている。
三回、短刀を振り上げた。
三回とも、泣いて刺せなかった。
涙が天皇の顔に落ちて、天皇が目覚めた。
「なんか顔が濡れてる……雨? あと夢で小さい蛇が首に巻きついてた」
サホビメは全部白状した。
天皇は軍を出して兄を討ちに行ったが、サホビメは兄のもとへ走り、火の中で兄と共に死んだ。
古事記、ここだけ急にシリアス。
さらに垂仁天皇の時代、田道間守が「常世の国から不老不死の実を持ってこい」と命じられて旅立った。十年かけて持ち帰ったが、天皇はすでに崩御していた。田道間守は墓の前で泣き死にした。
ギャグ路線なのに泣かせにくるな。




