第3話 大国主の受難、国譲り、天孫降臨
今回は大国主の受難から国譲り、そして天孫降臨までです。
いじめられっ子が成り上がり、武神が交渉に来て、最後はアマテラスの孫が地上へ降ります。
神話なのに、だいぶ政治と相続の話です。
第八章 ~ 大国主の受難 ~ ラノベ主人公、ここに誕生 ~
時は流れ、スサノオの子孫に大国主神が生まれた。
この男、八十人の兄弟の中で一番の末っ子であり、一番のイジられキャラだった。
兄弟全員が因幡の八上比売に求婚しに行くことになった。
オオクニヌシは荷物持ちである。巨大な袋を背負わされ、兄たちの後ろをヨロヨロ歩いていた。
途中、毛をむしられて真っ赤になったウサギが泣いていた。
因幡の白兎である。
兄たちはウサギに言った。
「海水浴びて風に当たれば治るよ」
ウサギ、その通りにしたら激痛で転げ回った。
「ぎゃあああああ!! 塩水!! しみるぅぅぅ!!」
アドバイスが完全にイジメ。
そこにオオクニヌシが通りかかった。
「真水で洗って蒲の穂にくるまるといいよ」
ウサギは回復した。
「ありがとうございます……! あなた様にはきっと良いことがありますよ。ヤガミヒメはあなたを選ぶでしょう」
ウサギの予言通り、ヤガミヒメはオオクニヌシを選んだ。
兄たち、ブチギレ。
オオクニヌシ、殺された。(一回目)
焼けた岩を投げつけられて死亡。
しかし母親が天に泣きついて生き返った。
また殺された。(二回目)
木の裂け目に挟まれて圧死。
また生き返った。
「もう逃げて!」と母に言われ、スサノオのいる根の国へ逃げた。
第九章 ~ 根の国 ~ 義父の試練という名のパワハラ ~
根の国に着いたオオクニヌシは、スサノオの娘・須勢理毘売と出会った。
目が合った瞬間、恋に落ちた。
展開が早い。
スセリビメはオオクニヌシを父に紹介した。
スサノオはオオクニヌシをチラッと見て言った。
「蛇の部屋で寝ろ」
初手がこれ。
スセリビメがこっそり魔法のスカーフを渡してくれたおかげで蛇を追い払えた。
翌日。
「次、ムカデと蜂の部屋な」
またスカーフで切り抜けた。
その次。
「野原に矢を射ったから拾ってこい」
オオクニヌシが野原に入った瞬間、スサノオが火を放った。
殺す気満々。
ネズミが助けてくれて地面の穴に隠れ、矢も持ってきてくれた。
戻ってきたオオクニヌシを見て、スサノオは少しだけ感心した。
そしてオオクニヌシに自分の髪のシラミを取らせながら、うたた寝を始めた。
「(今だ……!)」
オオクニヌシはスサノオが寝ている隙に、スサノオの宝物(生太刀、生弓矢、天の詔琴)を盗み、スセリビメを背負って脱走した。
しかし琴が木に触れて「ベベーン!」と鳴った。
スサノオ、起床。
「こらァァァァ!!」
追いかけてきたが、もう追いつけない距離まで逃げていた。
スサノオは遠くから叫んだ。
「おーい! その太刀と弓で兄弟どもをブッ倒せ! そんでお前が大国主になれ! あとスセリビメを大事にしろよ! このバカ婿ーーー!!」
最終的に認めるんかい。
第十章 ~ 国譲り ~ 交渉のプロが来た ~
オオクニヌシは兄弟を倒し、出雲を中心に葦原中国(地上世界)を治めた。
が、天上のアマテラスがこれを見て言った。
「あの国、うちの子孫が治めるべきじゃない?」
突然の所有権主張。
まず使者として天菩比神を送った。
三年経っても帰ってこない。オオクニヌシに懐柔されていた。
次に天若日子を送った。
八年経っても帰ってこない。オオクニヌシの娘と結婚していた。
使者が全員寝返る。
「もういい、ガチのやつ送る」
建御雷之男神。雷の武神。ガチ中のガチ。
タケミカヅチは出雲の浜に降り立ち、剣を波の上に逆さに突き立て、その切っ先の上にあぐらをかいて座った。
「国を譲れ」
「……息子に聞いてくれ」
長男の事代主神は「はい、どうぞ」とあっさり承諾した。
だが次男の建御名方神が「力比べだ!」と掴みかかってきた。
タケミカヅチはタケミナカタの腕をつかみ、氷柱のように、そして若い葦のように握りつぶした。
「ひぎぃ!!」
タケミナカタは諏訪まで逃げ、「もう出ません! ここから出ません!」と降参した。
オオクニヌシは条件を出した。
「天まで届くでっかい神殿を建ててくれたら、譲るよ」
こうして出雲大社(の原型)が建てられ、国譲りは完了した。
オオクニヌシは幽界(見えない世界)の統治者となり、目に見える世界はアマテラスの子孫に委ねられた。
最終章 ~ 天孫降臨 ~ 孫を送り込むスタイル ~
アマテラスは自分の孫・邇邇芸命を地上に送ることにした。
自分で行けよ、という気もするが、偉い人はだいたいそういうものである。
ニニギには三種の神器が授けられた。
- 八咫鏡 ―― アマテラスを岩戸から出すのに使ったあの鏡
- 八尺瓊勾玉 ―― 誓約のときの玉
- 草薙剣 ―― オロチの尻尾から出たあの剣
「この鏡は私だと思って大事にしなさい」
おばあちゃんのセリフ。
ニニギが天から降りていくと、分かれ道に巨大な神が立っていた。
猿田毘古神。鼻がやたら長い国津神。
「道案内しに来ました」
「……不審者では?」
アメノウズメ(あの脱ぎ癖のある踊り子)が交渉に行き、なぜか意気投合。後に夫婦になる。
ニニギは無事に日向の高千穂に降り立った。
「ここ、めっちゃいい土地じゃん」
こうして天孫降臨は完了し、アマテラスの血筋が地上を治める体制が整った。
ちなみにニニギはこの後、美人の木花之佐久夜毘売に一目惚れして求婚するのだが、姉の石長比売を突き返したせいで「人間の寿命は短くなる」という呪いを受ける。
顔で選ぶから。
だがそれは中巻の話である。
エピローグ
こうして日本の神々の物語――その「上巻」は幕を閉じる。
まとめると:
出勤即退勤する神々がいて、ノリで国を作った夫婦が喧嘩別れし、風呂で生まれた子供たちがそれぞれの道を歩み、引きこもりの姉をストリップで救出し、追放された弟が酔っ払い大蛇を斬り、いじめられっ子がウサギを助けて成り上がり、最終的におばあちゃんが孫を送り込んだ。
……改めて見ると、めちゃくちゃである。
だがこれが、日本の始まりの物語なのだ。
――上巻・完――
中巻予告:ニニギの子孫たちの冒険が始まる! 海幸彦vs山幸彦の兄弟喧嘩、神武天皇の東征、そしてヤマトタケルの悲劇と爆笑(?)の旅路! 乞うご期待。




