一の出
謎作2話目
フラッシュトイレ第一試合開始は大きなコングの音と同時だった。
それと同時に六人それぞれの流れでトイレに入る。
トイレの中の映像は個室トイレの天井に設置してあるカメラで全て見えており会場の天井から吊るされた大きなモニターで見る事が出来る。
驚いた、竜飛選手はいつの間にか二回転目を習得していたとは。
彼は今まで一回転でトイレに入るとその後はただ素早く鍵を閉めてて座ると言う戦法だった。
しかし今回は一回転目でトイレに入ると即座にもう片方の足を軸として二回転目、その二回転目で鍵を閉めて勢いを殺さずに既に蓋の上がっている便座に見事着席して見せたのだ。
二回転は公式の大会で使うトイレでは広さが足りずに使えないなどと言われていたがまさか習得しているとは。
恐るべし、竜飛小次郎だ。
公園などでフラッシュトイレの練習をするアマチュアでは度々目にする技だがあれは公園のある程度広さがあるトイレを使っているからだ。
フラッシュトイレの大会では技術点と言うものが存在しており、高難易度の技を完璧に成功させるとそれに応じた得点が入る。
故にフラッシュトイレの選手は三つに分かれる。
技などは使わずに純粋なタイムを求める選手と、高難易度の技を成功させ得点を得る事で好成績を目指す選手と、その両立を目指す選手である。
今の竜飛選手の今のフラッシュトイレは両立を目指す選手としての最も理想的な形と言っても過言ではない、それほど理想的なフラッシュトイレだった。
これなら0.5秒ほどタイマーが止まっただろう。
僕が注目していたもう1人の選手、ロシア代表のレオニード選手は1回目の入りは竜飛選手と比べると半秒遅れるが、それでもとてもレベルの高い入りで竜飛選手に続いて6人中2位の成績だった。
しかし本人は何処か不服な様子で少し表情が暗い。
他の選手は確かにタイムは良いがこのレベルの選手ならばプロの世界には吐いて捨てるほど落ちている。
恐らく代表選手が国に賄賂でも渡したか。
確かにフラッシュトイレは出来て間もない競技だが、この様な行為は真剣に競技に挑む選手に対する侮辱に他ならない。
フラッシュトイレ協会には今後この様な事が繰り返されぬように、注意を怠るなと口が酸っぱくなるほど言い聞かせておこう。
今から、15分の休憩が始まる。
フラッシュトイレは極僅かな時間を競う競技だが、それでもその一瞬の選手のプレッシャーは計り知れない程に重く、真剣に取り込む選手は皆便座に座った瞬間には肩を上下させながら息を切らし大量の汗をかいていた。
今から15分の休憩が始まる、その後の一の出が今から楽しみだ
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フラッシュトイレは一回の測定に入りと出が存在しており、それぞれ測定の回数毎に一の入り一の出、ニの入りニの出、三の入り三の出と呼ばれている。
入りと出の間には毎回15分の休憩がありその休憩時間では毎回スポンサー企業のCMやら選手の紹介や今までの記録、今回の名プレイなどの動画が天井から吊るされた大きなモニターで流れている為暇する事は決してない。
観客は皆その動画を見て時間を潰したり休憩前の選手のプレイの感想を言い合ったりなどで大変賑やかだ。
僕も例に漏れずモニターで動画を見ていると一の出の開始を知らせる大きなブザーが鳴り響く。
するとさっきまでの賑やかさが嘘の様に空間が静まる。
フラッシュトイレはやってる事自体は体を動かすスポーツだが、空間の雰囲気的には将棋などに近い。
視聴者が棋士の次の一手を静かに見守る様に、今大会の会場の席を埋め尽くす約八万人は口を閉じ、選手の出の開始を待ち侘びる。
約八万人が居るこの空間で聞こえるのは風の音と己の心音のみ、それは選手も観客も同じだろう。
選手の出の開始前の姿勢は便座に座り両の手を足の上に乗せた状態だ。
排泄をする訳ではないのでパンツを下ろしはしない。
静かな空間にレフェリーのカウントダウンの声が鳴り響く、5、4、3、2、1、カウントが終わると同時にレフェリーは力強くコングを叩く、その瞬間選手達は足に行儀良く乗せていた左腕を後ろへと回し素早くトイレの水を流す。
即座に便座から立ち上がり蓋を閉めて戸を解鍵、外開きの戸を開けて外へと飛び出す。
外に出たら後は戸を閉めてその時のタイム次第で選手の得点となる。
さて、得点はどうだろうか。
この作品、この世界観でまあまあ世界観凝ってる、何故




