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第三回「どっちが幸せ?」
第三回「どっちが幸せ?」
とある牧場で、美しい女は美味しそうに搾りたてのミルクを飲みました。
「やはり搾りたてに限ります。これを飲んだら他は飲めません。あなたもどうですか?」
「いや。僕はそんな哀れな牛から搾ったミルクは飲みたくない」
青年の憎悪を含んだ言葉に、女は首を傾げました。
「哀れ・・・可哀そうって事ですか?」
「そうさ! この乳牛は調合した餌を与えられ、常に妊娠状態を保つようにされているんだ。お陰でミルクは沢山出るけど・・・」
そこで青年は言葉に詰まり、女は優しく先を促しました。
「・・・そのせいで、この乳牛は十年しか生きられない」
「まぁ。そうだったの」
飲みかけのミルクを見下ろしながら、女は問いました。
「では、どうしたら可哀想でなくなるの?」
「もちろん普通に生きるのがいい」
青年は即座に答えました。
「普通って、どんな風に?」
「調合された餌を与えられずに、無理やり妊娠なんかさせられない。そうすれば、乳牛は二十年も生きるんだよ」
女は青年の言葉を考えながら、しばし沈黙した後に、もう一度問いました。
「乳牛って、最後はどうなるんですか?」
「もちろん食肉になるんだよ」




