待望の帰宅
そして衝撃的
研究センターに到着。
夜も更けたなんて言うには早いが、しっかり夜だ。
前もって秋露と話していた駐車場にバイクを停める。
取り出した携帯をいじって、秋露とカミユにメッセージを送った。
『帰ってきた』
短く、そんな言葉で。
少しだけ考えて、みつきにもメッセージを送ろうとアプリ内の彼女の箇所を開いたのだが、以前送った、みつきオススメランチ紹介に対して短く礼を書いた言葉にすら、既読のチェックがついていない。
自分の中に込み上げる落胆の気配を、今は振り払う。
みつき宛にメッセージを書こうとしているさなかに、カミユから連投でメッセージが返ってきた。
同じタイミングで秋露からの返事も混ざっていたので、ヘルメットを片手に歩き出しながらそれを読んだ。
どうやら秋露は、そう遠くない場所で開催されている学会みたいなものに参加していて、留守にしているそうだ。
おかえりのすぐ後に、体調と抑制剤の残りの数と効果を心配している言葉が続いた。
『明日の昼までには必ず帰るから、その後すぐに抑制剤の調整をするよ。きっと変化があるはずだ。大きな感情の起伏には気をつけて』
『了解』
短く返事を書き込むと、すぐに既読のチェックに色がついた。
メッセージアプリが正常であることをこんなところで確認できてしまう。
ならば、みつきは俺のメッセージをわざと読んでいないと?
ため息を吐きかける気持ちを抑えた。
カミユのメッセージを読み始める。
『遅かったね』
『おかえり』
『仕事上手くいった?』
『なんか面白いことあった?』
『お土産ある?』
『夕飯は食ったの?』
前から言っているけど、頼むからいっぺんに質問を大量に送るのはやめてくれ。
お土産はなにかよく分からんものがいっぱいある、飯はまだ食ってない、っと。
カミユにメッセージを返して、エレベーターに乗り込んだ。
抑制剤は、帰り途中の休憩時にもう飲んだ。
でないと、家のドアを開けてみつきを見た途端、どうにかなってしまうとか、目も当てられない。
比較的落ち着いた精神状態で自分を俯瞰できているから、大丈夫だと思う。
……大丈夫だと思いたい。
それから、大人の対応を心がけて、別れ際の大人げなかった自分の行動を謝って、誤解を生んでたならそれも謝って、もっとお互い歩み寄りたいと話し合って……。
「タダイマ」
これからのことを考え、期待を胸に抱く。
「あ、ルティ、おかえりー!!」
靴を脱いで廊下を歩いていく俺に、リビングにいるカミユからの元気な声が届いた。
リビングのドアを開ける。
なにか、みつきの作る食事の、いい匂いがしている。
「おかえりなさい」
控えめな、遠慮もある、それでもどこか嬉しそうな声が俺の帰りを労ってくれた。
だから、その声の方へと振り返った。
「タダイマ、みつ……、……?」
違和感に、すぐに気がついた。
いつも長い髪を緩く三つ編みに束ねていることが多かったみつきの髪型。
そうだったはずの髪が、肩につくかつかないかという長さで、元気に外ハネしている。
女性タイプのウルフカット。もしも今このときにそのスタイルの名前を教えてもらっていても、きっと覚えていなかったと思う。
手に持っていた大量のお土産が入った袋がドサァッ、と音を立てて床に落ちた。
みつきが驚いた顔をして、カミユはなぜかニヤニヤと笑っている。
バッサリと切られたみつきの髪。
……え、なんで?
俺はなにも言えずに、ただただ驚いてしまっていた。
ヴァルティ
カミユ
みつき




