幕間・帰り道、出立までの準備
大人は年を取ると涙脆くなる
「打ち上げ」なんていうパーティは遠慮した。
それほど、家に帰りたかったから。
CMの出来上がりや、まだ撮影なんかを要する案件があるなら後日連絡が来るだろう。
俺は惜しまれながら各企業のコーディネーター及びスタッフたちに別れの挨拶をされ、お土産だと色々なものを押し付けられた。
それとは別に、ワガママを言って買い取った物がいくつかあった。
例えば、撮影に使ったバイク一式とか。
俺用にカスタマイズしてくれた、このメーカー自慢の車種。つけてくれているサイドバッグも渋くて好みだ。青い夜空が映ったヘルメットも気に入った。
支払いはカードで一括。購入明細や保険の証書なんかは、家に郵送してくれる約束をした。
撮影一日用だった保険も、コーディネーターがすぐさま手続きを教えてくれて、無事、長期使用用の俺の名義に切り替わった。
その他、陸運局とやらに提出しなきゃいけない諸々への署名をして、提出は明日の朝一番にでもコーディネーターが行ってくれると約束してくれた。
「社名に掛けまして、必ずや」
目を輝かせるバイク企業コーディネーターに。
「そんなに仰々しい使命感に燃えなくても、御社のバイクと同じように信用しているよ」
と言ったら泣かれた。
なんでだよ?
他には、今着ている撮影に使った服一式とか。
これは他にも、衣装担当とジーンズの企業と、いくつかのアパレルメーカーが関わっていた。
用意してくれていたいくつもの衣装の、袖を通していない物も含め、何着か自分の好みなものを買い取った。
今着ているヴィンテージジーンズの企業担当者は、昨日の親睦会後、帰ってしまっている。
そのためか、いつの間にか衣装担当は彼へ電話して話をしていた。
「社長が是非にと言っています!! プレゼントさせてください!!」
電話越しにそう叫んでくる。
だから、それは困ると答えた。
なんとなく、この髪を切ってくれた理髪店のシン店主のことを思い出した。
「貴方のところは、ジーンズ一本でやっていることに誇りを持った企業だろう? その自信と誇りの塊に、俺も金を出させてくれ。それと、息子にも買ってやりたいから、良かったら後日連絡をくれないか?」
電話の向こうで、明らかにコーディネーターじゃない別の誰かが泣く声が聞こえてきてぎょっとした。
コーディネーターの彼が大慌てで快諾してくれて、電話を衣装担当に返した。
そんなこんなしながら、俺は自分のものになったバイクにまたがり、もらったお土産で持てるものはサイドバッグに詰め込み、他のものは郵送してもらうように頼んだ。
バイクのエンジンを軽快に吹かす。
皆に別れを告げて、華々しい世界に別れを告げて、俺は待望の帰路についた。
ヴァルティ・ノーススター
各企業の面々




