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ここは世界で一番空に近い檻 ディストピア一歩手前のオメガバースの世界で運命の番が幸せになるまで  作者: 庭師K炎


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(幕間・食事注文風景) ワガママという感情

(物語の中なのであえて名前は伏せていましたが、ここは幕間として正式名称を使用しています)

幕間

 秋露が頼んだのは、ランチタイムでポテトとドリンクのLLサイズがお得になったビッグマックのセット。ドリンクはアイスコーヒーにしていた。

 それだけで足りるのか、と思いはする。秋露は細身で、肉体労働より頭脳を使う仕事内容だとしても、αであればそれなりの食事量であっても不思議じゃないからだ。


 カミユはテリヤキバーガーという名前を見つけて飛び上がって喜んでいた。もちろん、俺にはそれがなんでだか分からない。

 そして、期間限定の月見バーガーを見つけて、もう一つのスキヤキ月見バーガーとで凄まじく悩み始めた。


 最終的に、腹いっぱいになってしまったら俺に食べてもらうことまで考えて、スキヤキ月見バーガーのセット、LLサイズ。ドリンクはコーラ。単品の月見バーガー。単品のテリヤキバーガーを注文した。

 サイドメニューのアップルパイと三角チョコパイが頼みたい。と言ったすぐ後に限定のフルーリーを見つけて悶えていた。


 俺はサムライマックというこの国限定のメニューである炙り醤油風玉子ベーコン肉厚ビーフのLLセットと、見たことがないものだったので単品のエビフィレオを頼んでみた。それから堂々とアップルパイを選ぶ。カミユの視線が痛い。


 LLという表記がこの国で定着している理由はもしかしてこれかな? と思いながら、秋露が注文を済ませるのを見ていた。


〜幕間終了





 

 この国のファーストフードを食べての感想は、母国のものとは全く違うな、だった。

 この国限定のメニューに、カミユは終始感動しながらバーガーにかじりつき、「ルティも食べてみて!!」と大興奮で数口ずつ食べさせられたものだから、最終的にはカミユよりも俺のほうが腹が膨れた。


 大満足のファーストフード昼食を終える。

 カミユは余分に頼んだ三角チョコパイを、みつきのバーガーセットの袋の中になにも言わずに突っ込んでいた。

 それに気づいて、カミユに問いかける。


「お前の分じゃないのか?」

「そう思ったんだけど、あとで食べるとかも考えたけどさ。女の人って甘いもの好きだろ?」


 そう言って、なんでもない気遣いでみつきの食事に一品足す。


 感心してしまう。

 後ろで秋露が笑っている。


「そうだね、みつきはもう少し食事量を増やしたほうがいいから、その気遣いは担当医としてありがたいよ」


 カミユは少し得意げに笑った。


「じゃあ、オレがみつきサンにこれ届けようかな?」

「そうしてくれるかい?」

「うん。ルティも一緒に行くでしょ?」


 当然だろう、とばかりに振られたが、時計を見ると、そろそろ迎えが来る待ち合わせの時間が近かった。


「あー…、残念だが、そろそろ行かなきゃいけない時間だ」

「そうなの? しかたないね。みつきサンにはちゃんと伝えとくよ」

「……頼む」


 そうして秋露とまず別れ、彼から聞いたみつきのいるであろう場所を目指していくカミユとも、途中で別れた。


 しかたない。

 うん、しかたないことだ。


 たった数日、仕事に出るだけ。

 すぐ帰ってくる。


 ……出発の前にもう一度顔が見たかったな、と思ったのはワガママという感情なのだろうか?


 研究センターの裏口駐車場を目指して歩いていく。

 途中、まだ覚えきれていないセンター内の廊下をいくつかおかしな方向へ曲がったことに気づいた。


 人の気配が全くない。

 変な場所へ迷い込んできたのか?


 そして、眉間にシワを寄せながら、頭の中でセンターの地図を構築し直す羽目になる。


 ええっと、ここが病院へ続く中庭に向かう道の途中だから……。一区画向こうへ戻って……。


 そんなふうに考えて足を進め、行く先に、見惚れるような黒が、緩く編まれた長い三つ編みの黒髪が揺れるのを見つけた。


 小さな姿が、中庭の緑を映すガラス廊下の先へと歩いていく。



 自然と駆け出していた。

 追いかけて、走っていた。



 そのとき胸に込み上げていた感情は、確かに喜びだった。





ヴァルティ

カミユ

秋露

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