お風呂の順番
自動的に決定
カミユがホクホクした笑顔で風呂から上がってきた。
リビングのソファーに座っていた俺を見つけ、そのあとキッチンにいるみつきを見つけて、急ぎ足でそちらへ向かう。
「みつきサン、みつきサン、この玉子のスシのおもちゃ、もらっていい?」
「いいよ。いっぱいあるの」
「いっぱい?! なんで?!」
「そのバスボムの匂いが好きって話したら、箱でプレゼントしてくれた人がいて、あと二箱あるの。全種コンプリートできるよ。シークレットはまだ見てない」
「シークレット?!」
ときめき、喜び飛び上がるカミユを見て微笑みながら、みつきはさっき計量していたものとはまた別の材料を用意し終えて、冷蔵庫の中にしまった。
「そうだ。冷蔵庫の中のものも、パントリーの中のものも、食べたいものは好きに食べてください」
それを聞いて、カミユは風呂上がりの乾いた自分を思い出したようだった。
「ミネラルウォーター飲む」
遠慮なんてものを感じさせずに、カミユは冷蔵庫を開けて、夕食時にもみつきが用意してくれたのと同じ、冷えた水を取り出した。
浄水一体型のピッチャーに入っている水はよく冷えている。
「この国って、水道水そのまま飲めるんだったよね?」
「飲めますよ? でもしっかり冷えてはいないから。まだ暑いし、時々ジュースに使うから冷やしてるの。私は普段はお茶を飲みます」
「へー、俺も飲みたい」
「じゃあ、明日から出してみるね」
みつきの提案に、カミユは嬉しそうだ。手の中の玉子のスシのおもちゃを見つめている少年の笑顔に目を細めてから、こちらを見る。
「えっと、……お風呂に」
そのとき、聞き慣れた携帯のデフォルト着信音がポケットから鳴りはじめた。
みつきはピタリと言葉を止めて、俺もまたすぐに携帯のほうに気を取られた。
誰からの着信なのか確認して、電話に出る。
「Hello?」
電話口の向こうの相手は、数日後に控えた仕事の相手だ。
俺がいよいよこの国に渡ったと知らせてはあったから、おおかたスケジュールの最終調整だろう。
これは話が長引くな、と、一言目から察した。
本題に入る前の当たり障りのない相手の話を半ば聞き流しながら、ヒョイヒョイと手を振って、みつきとカミユに合図した。
そのまま立ち上がって、リビングからルーフバルコニーのほうへと向かう。
夜に沈んだバルコニーなら、仕事の話をするには十分な静けさだ。
「ルティ、仕事の電話だね。あれは時間かかるよ、ほっといたらいい。みつきサンが先に風呂入れば? 俺、ちゃんときれいに洗っといたしね」
カミユは上機嫌に、冷蔵庫にピッチャーを戻して部屋へ向かった。
「……洗っ…? えっ?」
みつきの疑問の声は、カミユに届かない。
そして風呂に入りに行ったみつきが、お湯が抜かれて、きちんと洗われている浴槽を見て、たいそう疑問に思ったことに俺たちが気づくのは、ずいぶん先の話になるのだった。
ヴァルティ
カミユ
みつき




