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Rose Code ― 感情未定義都市 ―  作者: Laica
第4クール「選択の都市」

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第42話 消えない雨

挿絵(By みてみん)

地下搬入口の空気は、

張り詰めていた。


崩落音。


火花。


赤い警報灯。


その中央で。


ローズが銃を構えている。


シオンへ向けて。


シオンは動けなかった。


銀色の瞳。


冷たい表情。


でも。


ほんの僅かに、

その銃口は揺れていた。


アベルが静かに言う。


「排除命令を実行しろ」


ローズは無言。


銃口が、

ゆっくり上がる。


シオンの呼吸が浅くなる。


怖い。


身体が逃げろと言っている。


でも。


目を逸らしたくなかった。


ローズが、

ほんの少しだけ眉を寄せる。


ノイズ。


電子音。


頭痛みたいに、

彼女の視界へ記憶が流れ込む。


雨。


ジャズ。


工場の灯り。


冷たい手。


『踊る?』


ローズの指先が震える。


アベルの目が細くなる。


「……まだ残るか」


エヴァが低く呟く。


「ローズ」


その瞬間。


ローズが消えた。


高速移動。


次の瞬間には、

エヴァの目の前。


衝撃。


エヴァが吹き飛ぶ。


壁へ激突。


シオンが息を呑む。


速い。


以前より。


迷いを押し潰すみたいに、

ローズは動いていた。


グレンが発砲する。


ローズは振り向きもせず回避。


弾丸が壁へ刺さる。


「化け物が……!」


グレンが舌打ちする。


ローズは再びシオンを見る。


その目だけが、

揺れていた。


アベルが静かに命じる。


「終わらせろ」


ローズが一歩前へ出る。


シオンの足が震える。


怖い。


でも。


ここで逃げたら、

もう戻れない気がした。


シオンは震える声で言う。


「……ローズ」


反応はない。


でも。


ローズの動きが、

ほんの僅か止まる。


シオンは続けた。


「工場で、

一緒に踊った」


地下が静まり返る。


エヴァですら動かない。


ローズの瞳が揺れる。


ノイズ音。


頭の奥で、

何かが軋む。


『嫌じゃない』


『君がいると静かになる』


断片。


感情。


記憶。


ローズの呼吸が乱れる。


アベルの表情が、

初めて少しだけ変わった。


「……興味深い」


その言葉に、

シオンの中で何かが切れる。


「人みたいに言わないで」


地下が静まる。


シオンはアベルを睨んでいた。


震えている。


涙も滲んでいる。


でも目を逸らさない。


「あなた、

何も見てない」


グレンが目を見開く。


エヴァも動きを止めた。


シオンは叫ぶ。


「ローズは道具じゃない!」


空気が揺れる。


ローズの瞳が大きく揺れた。


アベルは静かにシオンを見る。


怒りはない。


ただ観察している。


「感情は錯覚だ」


「違う!!」


シオンの声が地下へ響く。


「痛いし、

怖いし、

苦しいし……!」


涙が落ちる。


「でも、

それでも誰かを好きになる!」


沈黙。


ローズの手が震えていた。


銃口が、

ゆっくり下がる。


アベルの目が細くなる。


「ローズ」


低い命令。


その瞬間。


ローズの身体が硬直した。


制御信号。


銀色の瞳が赤く明滅する。


ローズが苦しそうに息を乱す。


シオンが前へ出る。


「ローズ!」


エヴァが叫ぶ。


「行くな!!」


だがシオンは止まらない。


ローズの目の前まで行く。


銃口が胸へ当たる。


怖い。


今にも撃たれそう。


それでも。


シオンは、

ゆっくりその手へ触れた。


冷たい。


震えている。


シオンが小さく言う。


「……帰ろう」


その瞬間。


ローズの瞳から、

一筋だけ涙が落ちた。


地下が静まり返る。


アベルですら、

動かなかった。


そして。


ローズが、

かすれた声で呟く。


「……シ、オン……」


その直後。


地下全域へ、

非常警報が鳴り響いた。


中央区封鎖システム、

起動。


巨大鉄壁が、

ゆっくり降下を始める。


グレンの顔色が変わる。


「まずい……

閉じ込められるぞ!!」


だが。


アベルだけは静かだった。


まるで。


それすら、

想定内みたいに。


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