第40話 追跡灯
警報音が地下へ響く。
赤い光。
金属音。
ドローン群が、
暗闇から一斉に現れた。
エヴァが即座に発砲する。
閃光。
先頭の一機が爆散した。
だが。
次が来る。
さらに次。
狭い地下通路へ、
無数の赤いセンサーが走った。
「下がれ!!」
エヴァの怒声。
シオンは反射的に、
アスターとルカを引き寄せる。
ルカの身体は小さく震えていた。
だが。
どこか反応が鈍い。
施設の薬物制御か。
感情抑制か。
シオンには分からない。
ただ。
怖がり方が不自然だった。
グレンが壁端末を叩く。
「シャッター閉じるぞ!」
古い搬送路が唸る。
重い鉄壁がゆっくり降下し始めた。
だがドローンが速い。
エヴァが二機撃ち落とす。
残骸が火花を散らした。
一機が側面から回り込む。
シオンの目が見開く。
「危な——」
銃声。
ドローンが空中で砕けた。
シオンが振り返る。
グレンだった。
片手撃ち。
肩から血が滲んでいる。
「突っ立ってんな!」
怒鳴り声。
その瞬間。
最後尾から、
大型機が現れる。
他より一回り大きい。
重装甲。
赤い単眼。
グレンの顔色が変わる。
「制圧型か……!」
大型機が砲口を開く。
エヴァが叫ぶ。
「伏せろ!!」
轟音。
地下通路が爆炎に飲まれる。
衝撃でシオンが吹き飛ぶ。
耳鳴り。
視界が揺れる。
アスターの悲鳴。
瓦礫。
煙。
シオンは咳き込みながら起き上がる。
「アスター!」
「ここ……!」
瓦礫の陰。
アスターは無事だった。
ルカもいる。
だが。
その時。
大型ドローンが煙の向こうから現れる。
ゆっくり。
圧倒的な質量感。
砲口がこちらを向く。
シオンの身体が凍る。
逃げられない。
その瞬間。
ルカがふらりと前へ出た。
アスターが叫ぶ。
「ルカ!!」
ルカはドローンを見る。
赤い単眼。
その光を見つめたまま、
小さく呟く。
「……停止コード、
L-17……」
空気が止まる。
次の瞬間。
大型ドローンの動きが止まった。
エヴァが目を見開く。
グレンも固まる。
ルカはぼんやりしたまま続ける。
「施設で……
教えられた……」
その瞬間。
大型機の単眼が再起動する。
警告音。
「っ、まだ動く!」
エヴァが銃を構える。
だが大型機が先に動いた。
砲口展開。
シオンの時間が止まる。
その時。
ルカがシオンの前へ立った。
アスターが息を呑む。
砲撃。
轟音。
だが。
砲弾は途中で軌道を逸れ、
天井へ激突した。
爆発。
崩落。
地下通路全体が揺れる。
エヴァが叫ぶ。
「走れ!!」
全員が崩れる通路を駆け出す。
背後でドローン群が迫る。
警報。
火花。
崩落。
その中で。
シオンは、
ルカの手を掴んでいた。
小さい。
震える手。
アスターが涙声で叫ぶ。
「離さないで!!」
地下の暗闇を、
全員が走る。
その時。
最前方の壁へ、
巨大な鉄扉が見えた。
グレンの目が変わる。
「中央区旧搬入口……!」
だが。
扉の前には、
ひとり立っていた。
白いコート。
長い黒髪。
冷たい瞳。
アベルだった。
静かな地下空間で、
アベルはゆっくりシオン達を見る。
その視線が、
ルカで止まる。
そして。
最後に。
シオンを見る。
「……やはり、
ここへ来たか」
静かな声だった。
だがその瞬間。
地下の空気そのものが、
凍ったみたいに冷えた。




