表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rose Code ― 感情未定義都市 ―  作者: Laica
第3クール「白い中枢」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/48

第33話 再調整室

挿絵(By みてみん)

白かった。


壁も。


床も。


天井も。


音すら白い気がした。


ローズは椅子へ固定されている。


両腕。


首。


脊椎接続。


無数のケーブル。


視界奥で、

モニター光だけが静かに点滅していた。


『感情ノイズ測定開始』


機械音声。


『識別コード:ROSE』


『同期率低下を確認』


ローズは目を閉じていた。


夢を見ていた。


雨。


古い工場。


かすれたジャズ。


揺れる灯り。


そして。


笑うシオン。


『原因記録を検索』


電子音。


頭の奥へ、

無数の情報が流し込まれる。


戦闘。


逃走。


破壊。


排除。


その中で。


シオンだけが異物みたいに残っていた。


『対象:SHION』


『感情領域との異常結合を確認』


ノイズ。


画面が乱れる。


ローズの指先が僅かに動いた。


『除去を開始します』


瞬間。


ローズの呼吸が乱れる。


白い部屋へ、

微かな警告音が響いた。


扉が開く。


アベルだった。


黒いコート。


静かな足音。


感情の薄い瞳。


アベルはローズを見つめる。


「苦しいか」


ローズは答えない。


アベルはモニターを見る。


シオンの記録映像。


雨の工場。


ダンス。


手を握る記録。


アベルが低く言う。


「これが原因だ」


ローズの瞳が僅かに揺れる。


「君は本来、

もっと完成された存在だった」


静かな声。


責めるわけでもない。


ただ事実を告げるみたいに。


「迷いは不要だ」


『感情は判断精度を低下させる』


『執着は欠陥になる』


アベルはローズへ近づく。


「彼女と接触してから、

君は壊れ始めた」


ローズは目を閉じたまま、

小さく言う。


「……違う」


初めてだった。


ローズが、

アベルへ明確に否定を返した。


白い部屋が静まる。


アベルは少しだけ目を細める。


「何が違う」


数秒。


ローズは静かに言った。


「私は、

壊れていない」


ノイズ警告。


脳波乱高下。


研究員達がざわつく。


アベルは無表情だった。


だが。


その沈黙だけが少し長かった。


「ならなぜ迷う」


ローズは答えられない。


シオンを思い出す。


触れた手。


震えていた指。


『一人の方が、もっと嫌』


胸の奥が痛む。


演算が乱れる。


『異常発熱を確認』


『感情領域の再分離を推奨』


研究員が言う。


「このままでは固定できません」


アベルは静かにローズを見る。


「……まだ残っているのか」


ローズは呼吸を整えようとする。


だが無理だった。


シオンの名前が消えない。


忘れようとするほど、

強く残る。


アベルが端末を操作する。


モニターへ、

別映像が映る。


排水路。


拘束されるローズ。


泣いているシオン。


ローズの瞳が止まる。


アベルが言う。


「見ろ」


冷たい声。


「それが弱さだ」


映像の中のシオンは、

必死に手を伸ばしていた。


届かない。


泣いている。


アベルは続ける。


「感情は、

守れないものを増やす」


「君は彼女を苦しめた」


ローズの呼吸が止まりそうになる。


胸の奥へ、

静かな痛みが広がる。


アベルは最後に言った。


「君が彼女から離れれば、

彼女は生き残れる」


沈黙。


白い部屋。


機械音だけが響く。


ローズは目を閉じる。


その言葉は、

あまりにも痛かった。


なぜなら。


少しだけ、

正しいと思ってしまったから。


『再調整フェーズ移行』


『記憶分離処理を開始』


機械音声。


ケーブルが光る。


ローズの視界が白く染まる。


その瞬間。


どこか遠くで。


かすれたジャズが聞こえた気がした。


ダンスホール。


雨音。


薄暗い灯り。


シオンの笑い声。


ローズの指先が、

僅かに震える。


そして。


白い部屋のモニターへ、

小さなエラー表示が浮かんだ。


『削除不能領域を確認』


本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ