表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rose Code ― 感情未定義都市 ―  作者: Laica
第2クール「未定義感情」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/48

第23話 中枢階層

挿絵(By みてみん)

地下通路へ銃声が反響する。


火花。


赤い警告灯。


倒れる兵士。


エヴァは迷いなく引き金を引いていた。


白いコートが硝煙で揺れる。


シオンは息を呑む。


ローズもまだ動けない。


強制同期のノイズが残っている。


エヴァが撃ちながら叫ぶ。


「ローズ、立って!」


ローズの瞳が揺れる。


赤いノイズ。


でも。


少しずつ消えていく。


兵士達が隊列を組み直す。


『執行官エヴァを反逆者認定』


機械音声。


『排除を許可』


エヴァが小さく笑う。


「仕事が早い」


次の瞬間。


重火器が火を吹いた。


地下通路が爆発する。


シオンがローズへ飛びつく。


衝撃。


熱風。


コンクリート片が降り注ぐ。


エヴァが遮蔽物へ滑り込む。


「シオン!」


ローズの声。


戻っていた。


シオンが顔を上げる。


ローズはまだ苦しそうだった。


でも、

ちゃんと自分の目をしている。


シオンの胸が熱くなる。


ローズが立ち上がる。


左腕が震える。


完全には回復していない。


それでも銃を構えた。


エヴァが低く言う。


「中枢まで行って」


ローズが見る。


「一人で抑える気?」


「時間稼ぎくらいはできる」


ローズの目が細くなる。


「無理」


「知ってる」


エヴァは静かだった。


でもその横顔は、

どこか吹っ切れていた。


シオンが言う。


「一緒に行こう」


エヴァが少し止まる。


その表情が、

ほんの僅かに崩れた。


まるで、

そんな言葉を向けられると思っていなかったみたいに。


後方で爆発音。


兵士達が迫ってくる。


時間がない。


ローズがエヴァへ手を伸ばす。


「エヴァ」


エヴァはその手を見る。


数秒。


本当に短い沈黙。


それから。


エヴァは小さく息を吐いて、

その手を取った。


三人が走り出す。


警報が鳴り響く地下施設。


長い通路。


閉鎖シャッター。


グレンが通信で怒鳴る。


『上層エレベーター開けた! 三十秒だ!』


ローズが先頭を走る。


エヴァが後方を撃つ。


シオンも走る。


三人の足音が重なる。


シャッターが降り始める。


「急げ!」


エヴァが叫ぶ。


シオンが滑り込む。


ローズ。


エヴァ。


ギリギリで通過。


直後。


巨大なシャッターが閉じた。


轟音。


静寂。


全員が息を切らす。


エレベーター空間。


白い光。


密閉された静かな箱。


やっと、

少しだけ銃声が遠くなる。


シオンは壁へ背中を預けた。


呼吸が乱れる。


ローズも壁へ寄りかかる。


エヴァは少し離れて立っていた。


沈黙。


妙な空気だった。


ついさっきまで敵だった。


なのに今、

同じ空間にいる。


シオンは思わず小さく笑ってしまう。


エヴァが見る。


「なに」


「いや……」


シオンは息を整えながら言う。


「変な感じ」


エヴァは数秒黙る。


それから。


本当に僅かに笑った。


「同感」


ローズが二人を見る。


その視線が少し不思議そうで、

シオンはまた少し笑いそうになる。


エレベーターが上昇していく。


数字が変わる。


中枢階層。


都市の心臓部。


その時。


突然、

照明が落ちた。


真っ暗。


シオンの呼吸が止まる。


次の瞬間。


低い電子音が響く。


『認証完了』


知らない声。


冷たい。


感情のない声だった。


エヴァの表情が変わる。


ローズの目も細くなる。


暗闇の中、

赤い光だけが点灯する。


そして。


天井モニターへ、

一人の男が映し出された。


黒いスーツ。


銀色の瞳。


整いすぎた顔。


年齢が分からない。


男は静かに微笑む。


『初めまして』


シオンの背筋が凍る。


男の目は、

人を見る目じゃなかった。


標本を見るみたいな目。


男が静かに続ける。


『ローズ』


エヴァの声が低くなる。


「……アベル」


男――アベルは微笑んだまま、

ローズを見つめていた。


『君は私の最高傑作だ』


本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ