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Rose Code ― 感情未定義都市 ―  作者: Laica
第2クール「未定義感情」

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第21話 強制同期

挿絵(By みてみん)

装甲車両の間を、

車が突き抜ける。


火花。


雨。


背後で銃声が響き続けていた。


シオンは割れた窓の向こうを見る。


高架の上。


白いコート。


エヴァはもう動かなかった。


ただ、

遠ざかっていく。


ローズがアクセルを踏み込む。


都市中央区画。


巨大な塔が近づいてくる。


空へ突き刺さるみたいな白い建造物。


制御塔。


グレンの声が通信から響く。


『正面は無理だ。地下搬入口を使え』


立体地図が表示される。


複雑な構造。


警備ルート。


シオンは画面を見るが、

半分も理解できない。


でもローズは一瞬で把握していた。


「搬入口まで七分」


『その後はエレベーターで中枢へ上がれ』


「監視は」


『切れるのは三十秒だけだ』


短い沈黙。


グレンが低く言った。


『失敗したら終わりだぞ』


ローズは静かに答える。


「分かってる」


通信が切れる。


車内が静かになる。


シオンは窓の外を見る。


避難を始める人々。


警報。


空を飛ぶ無人機。


街全体が不穏だった。


でも誰も、

本当に自分達が切り捨てられるとは思っていない。


シオンは小さく呟く。


「……止められるかな」


ローズは少し黙る。


「分からない」


それから続けた。


「でも行く」


シオンは少しだけ笑う。


前なら、

ローズは確率で答えていた。


今は違う。


結果じゃなく、

意志で動いている。


その時。


制御塔が目前へ現れる。


巨大だった。


白く。


冷たく。


まるで都市そのものみたいに。


ローズが車を地下搬入口へ滑り込ませる。


暗い通路。


無人搬送機。


薄い青色の照明。


車が止まる。


「降りて」


シオンは頷く。


二人は走り出す。


地下施設は静かすぎた。


それが逆に怖い。


ローズが端末へ接続する。


電子ロック解除。


扉が開く。


奥へ。


長い通路。


金属の床。


シオンの足音が響く。


突然。


照明が赤へ変わった。


警告音。


ローズの目が細くなる。


「早い」


天井スピーカーから声が響く。


『識別コード確認』


機械音声。


『執行官ローズ』


シオンの呼吸が止まる。


『反逆行為を確認』


ローズは止まらない。


『戦術権限を剥奪します』


その瞬間。


ローズの身体が僅かに揺れた。


シオンが振り向く。


「ローズ?」


ローズが壁へ手をつく。


左腕が震えている。


違う。


今度は全身。


ローズの瞳へノイズが走る。


赤い光。


シオンの背筋が凍る。


機械音声が続ける。


『強制同期を開始』


ローズが苦しそうに息を吐く。


初めて見る反応だった。


まるで、

身体の中から何かを書き換えられているみたいに。


シオンが駆け寄る。


「ローズ!」


ローズが低く言う。


「……下がって」


声が掠れている。


警告音。


ノイズ。


ローズの指が痙攣する。


シオンの顔が青くなる。


「なにこれ……!」


ローズは壁へ額を押しつけたまま言う。


「命令系統……接続されてる……」


シオンの呼吸が止まる。


組織は、

まだローズの中へ入れる。


強制的に。


ローズが震える声で言う。


「離れて」


シオンは首を振る。


「嫌」


「早く……!」


ローズが顔を上げる。


その瞳が、

一瞬だけ赤く染まった。


シオンの背筋が凍る。


知らない目だった。


感情が消えたみたいな。


ローズの口が動く。


『対象確認』


機械みたいな声。


『シオン』


シオンの呼吸が止まる。


ローズが一歩前へ出る。


動きが違う。


冷たい。


無駄がない。


兵器だった。


シオンが後退る。


「……ローズ?」


ローズの瞳が揺れる。


赤と青。


ノイズ。


感情。


命令。


ぶつかっている。


ローズが頭を押さえる。


『排除――』


言葉が止まる。


ローズの身体が震える。


苦しそうだった。


シオンは怖かった。


でも。


逃げなかった。


ゆっくりローズへ近づく。


「シオン!」


通信機からグレンが叫ぶ。


『近づくな!』


でもシオンは止まらない。


ローズの前へ立つ。


ローズの銃口が上がる。


真っ直ぐ、

シオンへ向く。


地下通路が静まり返る。


シオンの呼吸だけが響く。


怖い。


足が震える。


でもシオンは、

ローズから目を逸らさなかった。


「……ローズ」


銃口が微かに揺れる。


シオンは震える声で言う。


「自分で決めて」


その瞬間。


ローズの瞳が激しく揺れた。


本日分、ここまで読んでいただきありがとうございます。

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