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ep10 その龍、起こすべからず前編

マリアの「限定モデル水晶」を代用した強引な転送は、一行を雲海の上空へと放り出した。


「ひゃうああああっ!? アキラ様ぁ、落ちる、落ちますぅぅ!」


リリィの悲鳴が空に溶ける。だが、落下する彼らを受け止めたのは、島ほどもある巨大な、虹色の鱗を持つ背中だった。


(……騒がしい。陸の羽虫どもが、空を汚すな……)


地鳴りのような思念が脳内に響く。天空の支配者、『天空龍』だ。


「天空龍! 警告しに来た。お前を狙う『鉄の筒』を持った男が紛れ込んでいる!」


アキラが叫ぶと、龍は不敵に目を細めた。


「(……私を殺せるわけがなかろう。私が死ねば、この浮遊島すべてが地に落ちる。誰も助からぬゆえ、私に手を出す愚か者などおらぬ……)」


「それはこの世界の理屈だ! あいつは別だ、道理の通じない場所から来た密猟者なんだよ!」


その時、アキラの頭上で女神の通信が弾けた。


『アキラ君、緊急指令! その龍、今から「千年周期の脱皮」に入るわ! 無防備になる上に、魔力のバランスが崩れて島が揺れる。龍を刺激せず、人間の住む居住区まで降ろさせて。眠りと命を守るのよ!』


(……ほう、女神がそう申すか。よかろう。少しの間、私は眠りにつく。……貴様ら人間を、居住区の島へ降ろしてやろう。だが、私の眠りを妨げるな。……騒ぎを起こせば、この島ごと、すべてを振り落とすぞ)


天空龍がゆっくりと高度を下げ、居住区の霊峰へとその巨体を横たえた。龍の深い呼吸に合わせて、島全体がゆっくりと波打つように揺れる。


「いいか、全員。これからは『静寂』が絶対条件だ。……レオ、聖剣は抜くな。マリア、派手な光の魔法は禁止。セレーナ、お前の耳と鼻で周囲を警戒しろ。音を出す奴は俺が叩き出す」


「……わ、分かったわよ。息をするのも緊張するわね」

マリアが声を潜めて頷く。


だが、静寂に包まれた霊峰の麓。


岩陰でライフルを組み立てる「あの男」が、ニヤリと笑った。


「……ハッ。眠りについたか。無防備な『最強』ほど、美味い獲物はない。……島が落ちる? その前に俺が『逆鱗』を剥ぎ取って、転送陣で高跳びすればいいだけだ」


男はサプレッサー(消音器)を銃口に装着した。魔法の爆発音はない。だが、空気を切り裂く「死の弾丸」が、静かに龍の眉間を狙っている。


「……アキラ様! あっちの岩陰に、光の反射が見えましたぁ!」


リリィが、自分の胸を抱えてしゃがみ込みながら、必死に指を指した。


「……見つけた。セレーナ、先行しろ! 矢を放つな、気配で追い詰めるんだ。レオ、肉弾戦で行くぞ!」


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