第四十一章 戦術 長谷川唯 (前半) 〜イメトレだけでなんとかなるほどサッカーは甘くはない〜
県リーグ第7節。対戦相手は昨年我がチームとともに県リーグ1部から降格したライバルチーム。しかし、今節の我がチームには、GKと現在チーム得点王のFWが不在という苦しい台所事情である。
そのため、私は前半を右SB、後半はGKを任された。厳しい試合になりそうだった。
この日は、快晴で10月にしては暑かった。湿度が低いので、真夏よりも陽光も眩しく感じた。ピッチ周りでアップしてから、5分間のみのピッチ練習をした。ピッチ状態は富士川河川敷と大して変わらない荒れた状態だった。
前半の右SB。パスの受け方をYouTubeで何回か見た「寄せてくる相手に身体を半身にして相手から遠い脚でボールをコントロールする」という長谷川唯選手の受け方をイメージしてやってみた。右SBなので右肩を相手に向け、左脚でコントロールした。何度か良い感じで受けられた。右肩で相手をブロックして相手を弾き飛ばしもした。勿論、ファールではない。が、その相手には「大丈夫?」と声をかけた。相手も大丈夫と軽く手を振ってきた。
給水タイム後、自チーム左サイドからの攻撃が展開された。逆サイドの私も相手陣内の空いたスペースに入り込んだ。ペナルティエリア左付近でパス交換後、ペナルティエリア右角にいた私にパスが出た。
「この距離ならばシュートを打ってみよう」と珍しく意を決して右脚を強く振った。
ここで一句
思い切り 蹴ったボールは 明後日に
外れるにもほどがあるほど酷い方向に、螺旋を描きながらボールは飛んでいった。あまりにへなちょこシュートなので、ピッチ内が白けてしまった。恥ずかしくて顔も上げられずに、
「ごめんなさい…スミマセン…」
と言っても、
「ドンマイ。」
の声すら聞こえて来なかった。足がボールの下を擦るような、まるでサンドウェッジでのバンカーショットのようなキックになったのは、
「きっとピッチの凸凹のせいだろう……」
と自分に言い聞かせるのが精一杯だった。
その後も相手との1対1でも脚がもつれてボールをコントロールできず、易々と相手にボールを奪われたり、クリアーをまたもや螺旋を描くようなミスキックをしたりと散々な前半だった。試合は1対0で折り返したのだが、
「空は晴れても、心は闇だ…」
と眩しい秋の陽光に顔を顰めながら、GKのユニフォームに着替えた。
いまこれを書いていて思い出したのだが、シュートする時、「戦術 長谷川唯」が全く頭になかった。
「彼女のプレイのイメージが少しでも頭にあれば、もう少しまともなシュートになったのかも。」
と悔やんでいる。
「もっとキックの練習をしなくては……。」
とも心に誓った。
いつ、どこで練習するのかは、知らんけど……。




