第三十二章 敗戦 〜試合に勝つことよりも嬉しいこともある〜
同級生との半世紀を超えたハイタッチが効いたのか、第1試合は完勝した。あと1勝で優勝である。
しかし、次の試合相手は、我々と優勝争いをしているライバルチームである。今回のこれまでの対戦成績も1勝1敗1分である。ここで、雌雄を決したいものである、とシューズの紐を締めた。
今回の試合の出場割り当ては、前試合同様、前半のみの出場である。 相手チームの第1試合を観戦していたが、速さと技術を備えた新加入の選手が、数名いるようであった。そういう相手には自然と気合が入る。
試合が始まり、結局、前半は2対2だった。先制点の奪われ方が良くなかった。ゴールキックを私が蹴ったのだが、自陣ペナルティエリア外でボールを受けた味方が、気を許したか、詰めた相手にやすやすとボールを奪われ、そのままシュートされ、失点してしまったのだ。普段の彼ならばしない凡ミスだったので、私もバックアップが遅れてしまった。やらずもがなの失点は後悔するが、そんな様子は毛ほども見せずに、ミスした味方選手を「ドンマイ」と励ました。
試合前に、彼から、遠く離れた一人暮らしの母親の介護でコンディション不調だ、と聞いていたのだ。そんな状況にも関わらず、試合に参加してくれたことに、連絡係としては有り難く思っていたのだ。
その後、オフサイドなしのルールをギリギリ利用したようなゴールで追いついた。明らかな「待ち伏せ」とは言えないプレイなので、心の中で、致し方なし、とした。
次の得点は、私が起点となった。ハーフライン付近で、相手の若手選手にパスが出ることを読んでいた私は、相手がコントロールする前に身体を寄せ、ボールを奪った。その時、相手も奪われないように身体を私にぶつけてきたが、後ろから勢いよく寄せてきた私の方に分があり、そのままボールをコントロールしてゴール右サイド付近にいた味方に、右足アウトサイドで、スライスさせた20mほどのパスを通した。味方ベンチから、
「おお!」
と声が上がった。我ながらイメージ通りのボール奪取からのパスができたことに満足した。サッカーを再開して3年半ほど経つが、これまで、このようなプレイはしたことがなかった。第1試合にゴール&ハイタッチした相乗効果なのかもしれない、と思った。
私のパスを受けた選手はシュートした。そのボールは、ゴールポストに当たり、跳ね返った所を詰めていた他の味方がゴールに流し込んだ。私としてもチームとしても非常に気分のよい得点だった。
自らの プレイに満足 負けてもよし
前半は2対2の同点で、最低限のノルマは果たし、あとは後半のメンバーに任せた。前半だけの選手は、私も含めて勝敗に関係なく、よいプレイをした余韻に浸りながら後半の試合の応援をベンチでした。
結局、試合はその後、相手に3点取られて負けてしまった。ライバルチームに負け越してしまった。それでもチームには悲観した雰囲気はなかったので、次の試合が楽しみだった。




