第三十一章 ハイタッチ 〜人生は小説よりも奇なり〜
7月11日から4週連続で行われた4チーム対抗のリーグ戦。ここまで、7勝1敗1分で首位。最終節の今夜3戦中2勝すれば優勝という状況だった。
私は第1節は出場したが、今節、第4節が4週間ぶりの参加だった。その間、ろくに身体を動かしていなかったので、コンディション的には不安だった。
※ルール説明
・キーパーなしの5人制
・70代チームは6人
・オフサイドなし
・有効シュートは楕円形のペナルティエリア内
第1試合の対戦相手は、70代チームである。相手チームは、我々よりも1人多い6人。しかも今節は、そのチームに60代の県選抜の選手も助っ人で出場するというのだ。これは少々厄介な相手だな、と思いながらピッチに入った。
個人的な試合の入りは、意外にも第1節での試合よりもよかった。ボールコントロールもパスも良い感じだった。持病の股関節も痛くはなかった。今夜は納得できるプレイができそうな予感がした。
だが、世の中そんなに甘くはない。相手が70代チームという気の緩みから自陣ゴール前と敵陣ゴール前の2度もボールを同じ選手に取られてしまった。その選手が県選抜の選手だった。その選手が相手に助っ人として参加しているのは分かっていたが、試合中にそれが欠落していた。
敵陣ゴール前では、ゴールを背にして余裕をもってボールキープしていたのを、後ろから取られてしまった。相手を背にしていたので、誰が自分にチェックしてきたのか分からなかった。完全な気の緩みだった。
それではダメだ、と気を引き締め直した。その直後、ハーフライン付近で、味方がボールを奪った。そのボールが左サイドにいた選手にパスされた。チームの得点源の選手である。その選手は、ドリブルし、シュート可のペナルティエリアに入った。私は、ゴール前に少し遅れて入って行きながら、
「シュート、シュート!」
と声をかけた。
その瞬間、私にパスが来た。相手選手たちは、彼のシュートを警戒していたため、フリーになった私は、いわゆる「ごっつぁんシュート」でゴールできた。
ここで一句
罵声浴び 時を隔てて ハイタッチ
私にアシストし、ハイタッチを交わしたその選手こそ、50年前に、私に「負けたのは、お前のせいだ!」と罵声を浴びせた人物であった。
実は、彼が我がチームに加入したのは今シーズンからである。加入すると聞いたとき、私の中にあったのは、中高時代の彼に対する、あまり良くない印象だった。
ところが、今シーズン、一緒に試合をするようになってみると、彼の昔あったトゲトゲしさはすっかり影を潜め、丸くなっていた。試合を通じて交流するうちに、むしろ好感の持てるところも多くなってきた。そんなふうに、私の中で彼への印象が変わり始めていた矢先のハイタッチだった。彼も変わったが、私も若い時の傲慢さがなくなった。それが歳を取るということなのであろう。
半世紀前には「負けたのは、お前のせいだ!」と罵声を浴びせられた相手から、50年後の今、パスを受けてゴールを決め、ハイタッチを交わす。人生とは、なかなか粋なものである。




