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第二章 懐かしい臭い 〜信ずる者は救われる?〜
試合前のロッカールームに、あの臭いが立ち込めた。鼻の奥をつんと刺す、あの懐かしい刺激臭である。
試合の日は、1時間前に集合し、競技場のロッカールームでユニフォームに着替える。そこでは、着替えるだけではなく、サポーターを付けたり、足首や膝にテーピングを巻いたりする。
誰もが既に60歳以上。身体のあちこちにガタが来ている者ばかり。どこにも故障がない者など皆無と言っていい。そのため、各自で痛めている個所の補強や傷める前の予防として、独自の儀式を行っている。
そんなある日、あまり広くはない部屋中に強烈だがとても懐かしい臭い(「匂い」や「香り」ではない)が立ち込めた。外用鎮痛消炎薬、いわゆる「サロメチール」である。
学生時代には、チームで必ずこの塗り薬を脚や膝、腰などに塗る者がいた。そのサリチル酸グリコール由来の独特な刺激臭が、遠い記憶を思い起こさせた。
ここで一句
刺激臭 加齢臭に 勝れけり
ちなみに、医者によるとサロメチールは、
「皮膚がヒリヒリするが、実際の効能はそのものは心許ない」
らしい。そのことをサロメチール信者に伝えても、
「いや、確かに効く」
と言って取り合ってくれなかった。
ここで一句
サロメ塗る 鰯の頭 枝に刺す




