第二十四章 アシスト 〜アシストパスはサッカーだけにあらず〜
県リーグ第4節。前半戦最終節である。この試合以降は熱中症予防のため中断され、9月に再開されるのだ。第3節終了時現在、全勝で勝ち点9である。
今節の相手は、兄弟チームである。数年前までひとつのチームだったが、人数が増えたため、2チームに分離したのだ。つまり、『走れコータロー』よろしく、「♪今日は、ダービーめでたいな。」なのである。前半最終戦に骨肉の争いを制して、気持ちよく中断を迎えたいものである。
今節の会場は、人工芝ピッチである。新しいピッチなので、人工芝の毛足、いや芝足が長く、スパイク底のポイントに絡んで、動きづらい。練習中は、スパイクを履いていたが、走るにも蹴るにもどうも体力が余分に消耗しそうなので、ポイントの短いトレーニングシューズに履き替えた。年寄りは繊細なのである。
今日は、当番ではないので、ポジション「本部」はないが、18人も出場者がいるため、今日も後半30分のみの右サイドバックである。
前半は、味方FWの技ありのプレイでゴールを決め、1対0で折り返した。前節は、試合終了間際にPKで得た1点で辛勝したので、少々安堵して後半に臨もうとしていた。
その時、
「あれ、またビブスを着て試合に出ようとしちゃった。」
と、前節でローテーションを複雑化して自分がこんがらがってしまった御仁が素っ頓狂な声で叫びながらビブスを脱いでいた。私はその様子を、またか、と思いながらニヤニヤしながら見ていた。
ここで一句
ビブスあり 嗤った顔に 眼鏡あり
私は、眼鏡を掛けながら試合に出ようとしていたのである。まさに「人のふり見て我がふり直せ」である。バツが悪いので、誰にもわからず黙って眼鏡を外し、ベンチに置いてあるバックにしまった。
監督兼任の選手が前半で退いたので、仕方なく、キャプテンマークを左腕に巻いた。どうも左上腕の付け心地が悪い。後半が始まる前に、ピッチの中央付近で円陣を組んで声を出そうと、立場上みなに声をかけた。その際、
「円陣、円陣、宇宙猿人ゴリ。」
と親父ギャグをいうと、誰も反応しない。ヤバい、スベッた、気まずい、オウンゴールか、と思ったら、
「それは、古いギャグだなあー。」
と苦笑しながら笑ってくれたのが、例の複雑化の御仁だったのだ。その一言で数名が笑ってくれた。
「○○さん、ナイス・アシスト!あんたはいい人!」
と心の中で手を合わせた。
ここで一句
笑われて 嗤った人に 助けられ
良い後半の戦いができそうな予感がした。
実はこの御仁とはプレイの相性が良く、数少ない私の得点のアシストパスを2本出しているのであった。




