第二十三章 どの口が言う ~げに恐ろしやブーメランの呪い~
年を取ると、動きが悪くなるのと比例して、口も悪くなる。そんなお話である。
自分たちの試合が終わり、本部席に座った。そこで、メンバー表を確認し、試合中は交替選手の確認、ユニフォームの確認などを行うのだ。シニアサッカーは、「交代」ではなく、「交替」である。チームで何人も、1人で何回も交替してよいのだ。そのため、試合中、本部は忙しい。特に前後半ともに途中で給水タイムが設けられているが、そのタイミングで交替する選手が多いため、給水前は大忙しになる。
そんな時、各チーム、1人は必ずと言っていいほどユニフォームに不備がある。すね当てを付けないのは序の口で、ユニフォームを着てこないお間抜けな御仁もいるのだ。(かくいう私も前科があるが……)実際にこの日もあった。ビブスを着ながら本部前に来て、ビブスの前をめくってユニフォームの前番号を見せたつもりだろうが、着ていたのはGAPと大きくプリントされたTシャツなのだ。こちらが指摘して初めて「アッ」と気づく始末。本部席もその周りにいた者もみな大笑いだった。
試合が始まるとこれまたお笑いの宝庫である。ドリブルしていて足がもつれてコケる者。タッチラインからボールが出る直前にボールを止めるが、次のプレイで蹴る軸足の方にボールが当たり、自分から外に出してしまう者。相手のスローイング反則で得たスローイングを、また同じ反則をして相手に返してしまう者、など挙げたらキリがない。
そんな様子を本部近くで、次の試合のためにアップをしながら見ていた選手の中に、ことさらその様子を笑っている御仁がいた。指をさしながら大笑いし、時折、知り合いの選手に向かって大きな声でヤジを飛ばしているのだ。そういうことは、本部付近でやらずにもっと遠くの方でやってもらいたいものである。だが、ある意味和やかな雰囲気にもなるので、特には注意をしなかった。
そして、第2試合が終わり、かの御仁のチームの試合が始まった。試合内容は、両者ともにミスとミスの応酬で、お互いになかなかシュートまでボールが運ばれない展開だった。選手交替の対応で追われていたが、ふと気づくと、例の御仁のチームがコーナーキックを得ていた。よく見るとその御仁がコーナーキックを蹴ろうとして、フラッグのそばにボールをセットし、助走を取るため素早く後ずさりしていた。
その瞬間、その御仁は後ろに転び、尻だけでなく、後頭部も地面に強く打ってしまった。後ろを見ずに後ずさりして、トラックとフィールドを隔てる5cmほどの高さの木枠(トラックの第1コースの内側をぐるりと1周囲んでいる)につまずいてしまったのだ。本人は、痛そうにしていたが、本部や試合をしていない他チームの選手たちはもちろん、仲間のベンチさえ全員手をたたいて爆笑していた。
ここで一句
いじられる 主客転倒 ブーメラン
転んだ御仁は、脳震盪を起こすまでは行かなかったが、大事を取って他の選手と交替し、ベンチで小さくなっていた。
実は我がチームでも試合中に、爆笑事案があった。ユニフォームの上にビブスを着たまま試合に出ようとした御仁がいたのだ。誰とは言わないが…




