第二十一章 余剰労働 ~備えあれば患いなし、からの時間外労働ならぬ、ピッチ外労働~
前節の目眩騒ぎの教訓から、私はベンチにあるものを持ち込んだ。
県リーグ第3節。前節は低血圧による目眩で、試合出場は断念し、応援に徹した。今日は試合に出るつもりで、会場に来た。着替えを済ませ、アップを開始した。最初はストレッチから始め、身体と相談しながら、まずは20mジョグを数本。その後、脚上げやサイドステップ、バックステップを行い、7割程度のダッシュを数本行った。幸い目眩が起こらず、胸も苦しくなかった。それでも試合に出るまでは心配だった。
ここで一句
血圧計 ベンチに持ち込み ピッチ踏む
血圧は、上が136だった。とりあえず安心して後半から試合に出た。昨年の1部チームとは違い、2部チームは、スキルもフィジカルも劣るので、余裕をもってプレイができ、スピードもないので、守備に追われることも少ない。そのため、今日も呼吸が乱れることも少なく、股関節痛も出ずにプレイを続行することができた。
それだけではなく、ポジションは、右サイドバックだったが、攻撃にも参加できた。一度はスルーパスに合わせてペナルティエリアに入り込み、シュート直前までいった。その時は相手選手に切り返したボールが当たってしまい、ボールをペナルティエリア外に戻さざるを得なかった。もっと強引に行けばよかった、エゴイストになればよかったと後悔した。
しかし、たいへんなことがひとつだけあった。それは、「球拾い」である。会場は、陸上競技場内なので、ボールがピッチ外に出ると、トラックを越えてスタンド下まで取りに行かなければならなかった。
ここで一句
球拾い 6回目には 顎を出し
私が守った右サイドは、バックスタンド側だった。ホームスタンド側ならば、チームベンチがあるので、ベンチにいる選手がボールを取ってくれる。だが、バックスタンド側には、だれもいない。ひたすら遠くまで転がって行ったボールを、タッチラインに一番近い選手、つまり私が、「またかよ」というため息まじりに追いかけなければならないのだ。
ちなみに、試合は、試合終了1分前に得たPKをFWの選手が 冷静にゴール左隅に蹴り込んで、1対0で辛勝した。
川柳「球拾い……」は、本歌取りではないが、江戸川柳「居候 三杯目には そっと出し」を下敷きにさせてもらった。




