ケモ耳メイドは今世の幼馴染との過去を邂逅する④
「剣! とりあえず剣は仕舞って!!」
……短剣くらいでそんなに慌てなくてもいいのに……。
「だっ、だからぁ! お嬢様とノワールって常に一緒に登城するでしょ! お嬢様の教育中は俺達と一緒に訓練してるけど、お嬢様はお妃教育の後に王子殿下とお茶会で交流してるじゃん。どうやらその間、ノワールの事が心配で王子殿下との話も上の空らしくってぇ」
え?! 訓練後は、字の如くお嬢様の元に飛んで行ってますけど、いつもとっても和やかそうにお二人でお茶してますよ?
「だからぁ、それはノワールの姿を見たお嬢様が安心して普段通りに戻ってるからだよぉ。王子殿下も、そんなお嬢様を見たらその様に振る舞うしかないでしょ〜が。それにぃ、あのお二人は将来国を背負う為の教育をしてるんだからぁ。あのお年でも感情コントロールは出来るようになってて当たり前じゃんかぁ?」
いや? 今の話だとお嬢様できてませんが??
「でもさぁ、王子殿下としたら面白くないよねぇ。折角のお嬢様との交流もノワールが側にいないと満足に出来ないなんてさぁ」
ぐっ……それ確かに……。
「だからぁ、ノワールの『お嬢様の護衛』っていう役が無くなれば、王家が出してくれてる第四師団との訓練の許可も取り下げれるんじゃないっかって……。多分だけどぉ………この件で旦那様にノワールに護衛役を降ろさせて、ただの側付きのメイドにするよう交渉しようとしたのかなぁ〜って………」
―――はぁあああ?! 何ですか、その推測!? ……いや、あの王子ならあり得そうだし、その通りの気がする……。
「……あんの、クソおお……っっ」
―――っと! ぎりぎりせーふ!? 不敬罪で捕まっちゃうとこだったわっ!
咳払いしながらも聞こえていない振りをしてくれるモーレヴィ卿、セッツ様に突然話しかけ出し誤魔化そうとするシップス卿とレンさんの対応に苦笑しているオルト団長、バツが悪そうなアクスさん。
そして、王家の我儘に振り回されることになった当事者達は深い溜息をついたのでした。
「まぁ、これもあくまで推測だからね。事情を知ってらっしゃるであろう閣下にこの件を報告しに行きましょうか。ね、お嬢様方?」
公爵家おすすめ黒上下のパジャマ姿のオルト団長に促され、全員で旦那様の執務室に向かう事になりまして。
七人がぞろぞろと、しかも皆がばらばらの出立で、騎士様は剣まで帯刀してるし、うち一名は外部者っぽいしで、本当なら気になるだろうに流石公爵家に仕える方々です。
夜勤勤務の皆様方は一切表情に見せずにお仕事継続されておられます!
先輩方、流石です!
「夜分遅くに申し訳ございません」
代表してオルト団長が旦那様にお詫びの言葉を伝え、五人も一斉に片膝を付き頭を下げて旦那様に許しを乞います。
セッツ様は一人おろおろされてますが、すみませんね。公爵家の使用人は旦那様が大好きなので、ちょっと過剰な態度を取ってしまうのです。
若干一名はちょっと違いますけどね!
「―――で? とりあえず今回の試験は合格って事で宜しいですか? 旦那様?」
パジャマ姿で腕組みして背後から黒い何かが『ずももももぉぉ』と湧き出ているオルト団長が旦那様に問いかけました。
「あ〜、うん、そうですね。―――今回も見事な対応でしたよ。お疲れ様でした」
お嬢様とそっくりな優しい微笑みに思わず『いえ! 旦那様のご期待に応えれた様で嬉しいです!!』と最敬礼で答えようとしたのですが、その前に地獄の底から響く様な声が室内に響いたのです。
「カナン様? 『そうですね』じゃないですよね? ランベール陛下とアスラン殿下に乗せられて、何やってんですか?!」
「だ、だって! あいつら、うちのノワの実力知っていながら疑う様な口振りで言うから!」
「『言うから!』じゃないでしょうが!! 全くっ あの方達もカナン様の親馬鹿っぷりを知ってての揶揄いでしょうけど……」
「あ、いや。アスラン殿下はマジだったと思うよ? 『カルディナがメイドの事を心配するあまりに一緒にいても上の空で……』ってマジトーンで言われてたからね! 全く! そんな事も許容出来ないなんて狭心な―――ねぇ、うちの子、あげるの勿体無くない? ………ぁ、そうだよね! この話無かった事にしようか!!」
あぁぁぁーーっっ 大変ですっ 旦那様の家族愛が暴走してしまってます!!
「出来るか!!! こんの馬鹿ナンっっ」
オルト団長の雷が執務室に轟いたのは言うまでもなく。
私達五人と執事長は『あぁ、旦那様、またですか………』とそっと息を吐き、セッツ様は展開の速さについていけない&急な怒号に固まってしまいました。
すみません、セッツ様。これ割と公爵家の日常なんですよ……。
読んでいただきありがとうございます。




