ケモ耳メイドは今世の幼馴染との過去を邂逅する③
「―――それは旦那様も乗せられましたね」
突然の背後からの声に二人揃って跳び上がりそうになるのを耐えて後ろを振り向く。
「―――あ! 団長……」
建物の陰から顔をひょこっと出しながらこっちに向かって手を振っていたのは焦茶色した短髪と黒眼のオルト団長だった。
「流石に、今回は旦那様も陛下の悪戯に巻き込まれたっすかぁ」
「今回は王子殿下も加わってたからあっちも強気に出てたみたいだしね! 付き合わされる旦那様も大変だねっっ」
次から次へと、公爵家私設騎士団の騎士も顔を覗かせてきた。
「皆様も気づかれてたんですね」
合計五人の顔見知りの方々がぞろぞろと出てきた。
三人は就寝前か就寝中だったのかラフな格好で腰には愛用の剣を下げていた。二人は騎士服なので、夜間の巡回中だったのかな?
「勿論です。私達は公爵家の護りとしてこれまでも数多くの経験をしてきておりますからね」
「そうそう! 大事な公爵家の皆様の安心安全の為ならば!と、過酷な修行をしてきた僕達に死角はないのです!!ってね」
すっごくいい笑顔で答えてくれた皆様に、『やっぱり公爵家の騎士様は実力者揃いです!』と自慢したい気分になった。
そんな私とは正反対の表情で立ち尽くし「………え……これって…私、落ちた……?」と、セッツ様が顔面蒼白で呟いています。
後日知った事なのですが、せっちゃんはこの頃見習いでしたが、いつでも王家の影として任務に着く事が出来るくらいの実力者だったんだとか。
この内容なら片手間で出来ると思っていたそうなので、かなりのショックだった様です。
「陛下も上手いっすよね〜。お嬢様同様可愛がってるノワールをそんな風に持ち出されたら、ねぇ〜」
とっても軽いノリのシップス卿は紫紺色の髪に黒眼。二十代後半だけど見た目は十代のやんちゃなわんこ系。
―――ちょっとさっきから王家に対しての発言が気になるとこですが!? ……セッツ様、影の一員ですが大丈夫でしょうか?!
「王子殿下もいい機会だとばかりに、ノワールとお嬢様を引き離しにかかったって事でしょうかねぇ?」
―――ん? 今、聞きづてならぬ言葉を耳にしましたが?!
「どういう事でしょう?!」
口を滑らせてしまったと慌てて手で口を塞ぐのは、一昨年、平民出身の若干14歳という若さでギルド主催の武闘会にて準決勝まで進み、旦那様の目に留まってこの公爵家の騎士になったアクスさん。
「馬鹿アクス! 本当にお前は……!!」
「すみませぇん、レンさん」
同じく傭兵ギルドから実力を買われて引き抜かれたレンさんとアクスさんは3歳差と年齢も近く同じ平民出身という事もあって兄弟の様に仲が良いのです。
「謝っても遅いですよ、アクス君。ノワールは一度気になった事は納得するまで追求しますからね」
優しげな笑顔なのに深海の様な深い蒼の瞳は冷たく、腰まである蒼みがかった銀髪を軽く一つに結んでいるのは騎士団副団長のモーレヴィ卿。
私は蛇に睨まれた蛙の様にモーレヴィ卿の視線の先で固まっているアクス様に詰め寄った。
「流石、モーレヴィ様!! 良く分かってらっしゃいますよねっ さぁ! そういう事ですから、アクス様っっ 先程の引き離しについて、さっさと吐いちゃいましょうねぇ〜」
じりじりと片手に短剣を持ってにじり寄ります。
「え?! 待って待って! ノワール、武器は禁止っっ 言うからぁ〜! やめてぇ〜!」
話が早くて助かります。
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