ケモ耳メイドは決意する
お嬢様にようやく解放して頂けました……。
お嬢様との癒しの時間が、私をここまで疲労困憊させるとは……!
許すまじっ 一樹! あと、王太子殿下!!
私が公爵家でお世話になる様になってからは、殆どのお時間をお嬢様と過ごしておりました。
『その前のお知り合いではないの?』
とか、
『オルト卿達と一緒に行った盗賊退治しながら遠征した時に、たまたま出会ったルカス卿と一緒に闘ったとか?』
なんて、どこからその様な妄想が?!と、いう様な事を質問され続けました……。
あぁ……バイブルでしたね。
そういえば、お嬢様が読書した後、感想をお聞きしてきた中に似た様なお話しがありましたねぇ……。
明日は学園がお休みだからと日頃より遅くまで起きて私への追及の手をゆるめないお嬢様を、何とか就寝へと導き終えた私は、自室に戻ると侍女服のまま椅子に、お行儀悪いですけどもたれ掛かってしまいました。
「はあぁぁぁ………」
上を見上げて長い溜息を吐きます。
……お嬢様、まだまだ納得はされていない様子でしたが、これ以上私に言える事はないのです。
……こんな事なら、少しでもバーンズ卿と話の擦り合わせをしとくべきでした……!!
いや、でも、日頃でも人目を集める団体様の中にいて、どうやって二人で話をせよと?
話は聞かれて困る内容だし、何よりも周囲の視線が私は恐ろしい。
これが暗殺者とかの放つ視線ならば、こきっと一瞬で終わらせてみせるのに、お相手はか弱いご令嬢達です。出来る筈がございません。
それに下手したら私に対する変な嫉妬や疑念が、お嬢様に、ひいては雇い主の公爵家に向かう可能性もある。
『お宅の使用人教育は一体どうなっているんでしょうね?』とか、ね。あ〜、面倒くさい!!
あ! いっそバーンズ卿の寮の部屋に忍び込む?!
男子寮は女子寮と学園を挟んで反対側にあるから時間もそんなにかからない筈!
2km位なら5分かからないで行けますね。
………あ、いや、でも……夕方に無言を貫き『一切私達は関係ございません』という態度をしていた私が、夜も深い時間に急に訪問するとか……ないわ。
あと、散々『身分が』とか、『知り合いではありません』とか言ってきました。
私は10歳の時に今世でノワールとして生きることを決意してきました。
前世はあくまで記憶の一部。
お嬢様をお救いする為の攻略本でしかないのです。
バーンズ卿とノワールは入学式で初めてお会いしたという関係で『知り合い』ではないのです。
だからこのままの関係でいけば大丈夫だけど、きっと王太子殿下が介入してくる予感です。
だって、王太子殿下の大事な側近候補を平民が悩ませてるんですもの……。
「あぁぁぁーーーっっ もぅ! 何で一樹まで転生してるのよ!?」
面倒だから、バーンズ卿が卒業するのを待つかな……って、王太子殿下と常にいるから勘違いしそうだけどお嬢様と同学年だった!!
しかも最後の一年は王太子殿下は卒業しているから、未来の王太子妃であるお嬢様の護衛をされるっていうんだから逃げ場がないです。
ゲームでは約一年のストーリーだったので、この一年間なんとか悪役令嬢の魔の手から逃れつつ、いろんな悪意を排除していけば、お嬢様を悲しませなくて済む!と入学前は考えていました。
お嬢様が幸せになる為にこれまで頑張ってきましたし、これからも頑張るつもりでおります。
ただ、そこに自分のプライベートな事は一切含まれていなかったから、この場合どうしたらいいのか分からなくなってしまいました……。
そのまま小一時間悶々と悩み、疲れた脳は考える事を放棄しました!
「よし!! 一樹のトコに行こうっ」
そうよ。
私って、王家の影も掌の上で転がすケモ耳侍女じゃない!
ささっと行って、いろいろお願いして戻ってこよう。
このまま二年以上も悩むのは精神的に良くないから!
今から突撃訪問かますわ!
読んでいただきありがとうございます。




