ケモ耳メイドは悪役令嬢の葛藤を知らない
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何故ですの?!
私の計画では入学してから一月もあれば私の周囲には友人という名の取り巻きが出来ていた筈!!
そして、その取り巻き達が手となり足となり、私の想いを実現させる為に勝手に動いてくれて、いずれこの私が学園の女王になっているという予定だったのに……!
現実はあの女の周りに人が集まっている……!
アスラン殿下の横に常に立ち、笑顔で語る姿をこの五ヶ月間見続けて気が狂いそうだったわ!
幼い頃からアスラン殿下を見つめ続け、侍女達から殿下の素晴らしさを聞く度に、相応しくあろうと淑女教育に励んできたのに……。
そういえば、貴族派と言われている子爵家の子に声を掛けたら、とても嬉しそうに私の側でいろいろな話を聞かせてくれたのに一週間もしない内に余所余所しい態度になって、
『公爵家のご令嬢であられるキンディラン様のお側に、子爵家の私が居ては……』
と言って去って行った。
貴族派の侯爵家のあの娘や伯爵家の子息、それに他の子達にも同じ様な事を言われたわ……。
どうしてなの?!
―――カルディナ様と私は同じ公爵家の令嬢。バルク公爵家は確かに格式ある家柄で、キンディラン家よりも圧倒的に格上よ。
それでも、私は現国王の妹の娘。血筋でいえば、私の方が貴いのよ!!
少しでも私の方がアスラン殿下に相応しいと、そう認める者が多いのだと分かって頂けるように、私の賛同者達と会いに行きたくてこの私が自ら動いているのに!
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持っている扇をぎしぎしと鳴らし、仄暗い焔を瞳に宿して遠く離れた木陰からお嬢様を睨みつけるサリア・キンディラン公爵令嬢を認識しながらお嬢様の後方を歩むノワールです。
お嬢様のお隣にはアスラン王太子殿下がいらっしゃいますから、私は後ろで大人しくしていますとも。
ちなみに私の横には満面の笑顔のバーンズ卿が居ますがね……。
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―――突撃訪問をした私を目にした途端、奇声を上げそうになったバーンズ卿の口を手で押さえ低音で「叫ばない」と威圧します。
こくこくっと頭を縦に振ったのでゆっくりと手を離しました。
バーンズ卿の部屋は王太子殿下の隣室なので、異変を感じた影が動くかもしれないのです。奇声なんか上げさせてたまるか!
「………えっと、どうかしたんですか? 俺のところに来る…とか、何かあったのかなって?」
そうですよね。夕方の態度だとそう思いますよね。
「ええ。用事が無ければこんな夜遅くに訪ねたりしません」
「あ……そうですよね。すみません」
―――空気が重いわ……。
駄目です、この空間の感じは月華の頃から苦手だったから早く済ませましょう。
「……バーンズ卿が思い悩んでいたとお嬢様からお聞きしました。私の態度は確かに失礼だったと思います。申し訳ございません」
「! え?! それ、何で知って!? ……あ! アスラン殿下?!?! ―――うわぁっ」
!! だから、影に気付かれるってばっっ
大急ぎでまた口を塞ぎます。お願いだから……落ち着いてぇ〜っ
「落ち着いてください。―――よろしいですか?」
確認すると、顔を真っ赤にしながら頭を勢いよく縦に振っています。
「気持ちはわかります。ですが、王太子殿下はバーンズ卿を心配されていたそうですから」
えぇ、気持ちは分かりますよ! お陰でお嬢様も巻き込んだ挙句、あんな事になったんですから。
「貴方が私に何か聞きたい事があると分かっておりましたが、人目や他の耳がある場所では互いに困る事になると思い、今まで避けていました。申し訳ございません」
「あ……いえ、自分こそ思い至らずに、貴女に迷惑をかけてしまいました」
互いに頭を下げ(本当は貴方は下げてはいけないと思いますがね?)沈黙が暫く続きましたが、バーンズ卿がそっと頭を上げました。
「あの、えぇと、すみません。確認なんですが、今、こうして来ていただけてるって事は、俺の聞きたい事を答えていただける、と?」
「―――はい。その為に、失礼とは思いましたがこうして参った次第です」
覚悟は決めました。
さぁ、腹を割って話しましょう。
読んでいただきありがとうございます。




